JICE 一般財団法人国土技術研究センター

国土を知る / 意外と知らない日本の国土

地震の多い国、日本

私(わたし)たちは、日本で地震(じしん)が起こるのは当たり前だと思っています。でも地震(じしん)が起きない国もあります。

どれくらいの地震(じしん)が日本で起こっているのでしょうか。私(わたし)たちは、地震(じしん)や津波(つなみ)が起こることに備えて、地震(じしん)が起こらない国に住んでいる人と比べて、どんなことをしているのでしょうか。

地震(じしん)や津波(つなみ)によって、どれくらいの被害(ひがい)を受けてきたのでしょうか。

起こって当たり前と思っている地震(じしん)のことを考えてみましょう。

日本付近でマグニチュード6の地震(じしん)が全世界の17.9%も発生する

下の図は、2016年〜2022年3月16日までで日本付近で発生した主な被害(ひがい)地震(じしん)(マグニチュード5.0以上)の震央分布(しんおうぶんぷ)を示しています。2011年〜2020年でみるとマグニチュード6.0以上の地震(じしん)は、全世界の17.9%が日本周辺で発生しています。

図 日本付近で発生した地震の分布図

¶豆知識 − マグニチュードとは地震(じしん)のエネルギーの単位

地震(じしん)が起きたときに発表されるマグニチュードとは何でしょうか。マグニチュードとは、地震(じしん)が出すエネルギーの大きさを示す単位です。アルファベットの「M」で表します。アメリカの地震(じしん)学者(がくしゃ)チャールズ・リヒターが考案したので、専門家(せんもんか)は「リヒター・マグニチュード」と言うことがあります。このほか、地震学(じしんがく)では「モーメント・マグニチュード」、日本では「気象庁(きしょうちょう)マグニチュード」など、計算方法によってマグニチュードの種類がいくつかありますが、小学生・中学生には難(むずか)しいのでここではお話ししません。

マグニチュードが0.2大きくなるとエネルギーは約2倍、1大きくなるとエネルギーは約32倍、2大きくなると約1000倍になります。マグニチュード2.0とマグニチュード4.0とでは地震(じしん)のエネルギーは2倍ではなく1000倍ちがうのです。

マグニチュード

¶豆知識 − マグニチュードと震度(しんど)

マグニチュードと震度(しんど)の関係は、電球の明るさと部屋の明るさに似ています。

明るい電球は遠くまで照らすことができます。電球の真下では明るいですが真下から離れると少し暗くなります。暗い電球は遠くまで照らすことができません。でも、電球を近くまで寄(よ)せれば、真下ならば明るいです。

図 電球と明るさの関係

地震(じしん)も同じです。マニグチュードが大きい地震(じしん)は遠くまで伝わります。震源地(しんげんち)に近いと強くゆれます。マニグチュードが小さい地震(じしん)は遠くまで伝わりません。震源地(しんげんち)に近くとも強くゆれません。しかし、地震(じしん)が浅い地下で起きたならば、地面までの距離(きょり)が近い分だけ地震(じしん)は強くなります。

図 マグニチュードと地震の関係

それでは、震度(しんど)の数字によって、どれくらいの地震(じしん)の強さがちがうのでしょうか。震度(しんど)は、震度計(しんどけい)という機械で測ります。震度計(しんどけい)が地震(じしん)のゆれを感知して、計算式をつかって震度(しんど)の数字をもとめます。 「震度(しんど)0」「震度(しんど)1」「震度(しんど)2」「震度(しんど)3」「震度(しんど)4」「震度(しんど)5弱」「震度(しんど)5強」「震度(しんど)6弱」「震度(しんど)6強」「震度(しんど)7」の10段階(だんかい)があります。

図 震度とゆれの大きさ

日本は、地球上で地震(じしん)が起きやすい場所にある

地球は主に岩石でできていますが、地中深くにいくほど温度が高くなっているため、「マントル」という物質(ぶっしつ)が地球の内部で対流しています。地球の表面近くでは、「プレート」という厚さ数10kmから100kmの板のようなかたまりになっていて、1年間に数cmという速さで移動しています。地球の表面には、こうしたプレートが大きく14〜15枚あり、マントルが地球内部で対流する動きに乗ってそれぞれの方向に移動しています。

プレートがぶつかる境目(さかいめ)では、一方のプレートがもう一方のプレートの下に沈みこんだりしています。その結果、地面が盛(も)り上がって高い山脈ができたり、沈みこむところが海だと、そこは深い「海溝(かいこう)」になります。

地震(じしん)は、プレートどうしがぶつかる摩擦(まさつ)が原因で起こります。世界で地震(じしん)が発生する場所は、プレートどうしがぶつかる地点のまわりです。

図 火山噴火の仕組み

●日本は世界でもめずらしい4つものプレートが集まる地点にある

日本列島は「ユーラシアプレート」と「北米(ほくべい)プレート」の上に乗っていますが、「太平洋プレート」が西向きに移動してきて「北米(ほくべい)プレート」にぶつかり、「日本海溝(かいこう)」などで地下にもぐりこみます。また、「フィリピン海プレート」は北向きに移動してきてぶつかり、「南海(なんかい)トラフ」で地下にもぐりこみます。このプレートどうしの摩擦(まさつ)が原因で地震(じしん)が起こります。

図 世界の主なプレートと地震の分布図

¶豆知識 − 日本列島もプレートの上に乗って動いている

プレートの上に乗っている日本列島も、プレートの動きにあわせて動いています、太平洋プレートとフィリピン海プレートは日本列島の太平洋側を西や北西方向に押(お)し、ユーラシアプレートは日本列島の日本海側を東や南東方向に押(お)しています。両方から押(お)されて盛(も)り上がってできたのが、日本列島の真ん中を背骨(せぼね)のようにつらぬいている山脈です。

図 日本列島の10年間の移動(2000年5月〜2010年5月)

¶豆知識 − 伊豆(いず)半島(はんとう)と本州がぶつかっている神縄(かんなわ)断層(だんそう)

神(かみ)縄(なわ)断層(だんそう)は、神奈川県(かながわけん)松田町(まつだまち)・山北町(やまきたまち)から静岡県(しずおかけん)小山町(おやまちょう)にかけての断層(だんそう)です。伊豆(いず)半島と本州との間のプレートの境目の断層(だんそう)として有名です。静岡県(しずおかけん)小山町(おやまちょう)では、その伊豆(いず)半島と本州のぶつかった地点を実際に目で見ることができます。

小山町教育委員会が作成した説明の看板(かんばん)によると、 今から約1500 万年前、伊豆(いず)半島(はんとう)は今の小笠原(おがさわら)諸島(しょとう)あたりにあった島でした。フィリピン海プレートの動きに乗って少しずつ北上して約100 万〜 50 万年前に本州とぶつかりました。伊豆半島は本州にぶつかっても北へ動きつづけ、そのために丹沢(たんざわ)山地(さんち)が盛(も)り上げられたということです。

写真の断層(だんそう)の線から左側は本州で、右側が伊豆(いず)半島(はんとう)です。本州側は丹沢(たんざわ)山地(さんち)をつくっている凝灰岩(ぎょうかいがん)という地層(ちそう)、伊豆(いず)半島(はんとう)側はれき層という石の地層(ちそう)です。

写真 伊豆半島と本州のぶつかった地点 静岡県小山町神縄断層

プレートの境目で起こる地震(じしん)と断層(だんそう)が動いて起こる地震(じしん)

日本で起こる地震(じしん)には、大きく、プレートの境目で起こる地震(じしん)と断層(だんそう)が動いて起こる地震(じしん)があります。

図 地震が起こる原因

¶豆知識 − 震源(しんげん)・震源域(しんげんいき)・震央(しんおう)

地震(じしん)は、地中で地層(ちそう)や岩盤(がんばん)が引っ張られたり押(お)しつぶされたりするなど大きな力が加わり、耐(た)えきれなくなったときに起こります。一番最初に耐(た)えきれなくなって破壊(はかい)が起こった地点を「震源(しんげん)」と言います。「震源(しんげん)」の真上にある地表が「震央(しんおう)」です。

震源(しんげん)から始まった地層(ちそう)や岩盤(がんばん)が割(わ)れるなどの破壊(はかい)は震源(しんげん)のまわりにも広がります(「震源(しんげん)断層(だんそう)」と言います)。この破壊(はかい)が広まった範囲(はんい)が「震源域(しんげんいき)」です。地震(じしん)は、震源域(しんげんいき)の全体から発生します。

図 震源・震源域・震央

くり返し同じ場所で発生する地震(じしん)

過去に地震(じしん)が起きた記録を調べると、大きな地震(じしん)は同じ場所でくり返し起こっていることがわかりました。

●東海(とうかい)・東南海(とうなんかい)・南海(なんかい)地震(じしん)

フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下にもぐりこむ「南海(なんかい)トラフ」のまわりでは、地震(じしん)があったことを伝える文献(ぶんけん)記録や地質(ちしつ)調査(ちょうさ)などから、東海(とうかい)地震(じしん)、東南海(とうなんかい)地震(じしん)、南海(なんかい)地震(じしん)が、およそ100から150年くらいの年月の間でくり返し発生していることが分かりました。

東海(とうかい)地震(じしん)、東南海(とうなんかい)地震(じしん)、南海(なんかい)地震(じしん)はそれぞれがマグニチュード8になるような巨大(きょだい)地震(じしん)で、強い地震(じしん)のゆれのほか、津波(つなみ)も発生し、大きな被害(ひがい)を何度も出してきました。しかも、3つの地震(じしん)は過去に連続して起こることがあったので、今後も、連続して起こるのではないかと心配されています。

図

図 くり返し発生する東海・東南海・南海 連続地震

●南関東の地震(じしん)

東京を中心とする関東地方の南部では、200年から300年に1度、関東大地震(じしん)(関東大震災(しんさい))と同じようなマグニチュード8の巨大(きょだい)地震(じしん)が起こっています。過去にはマグニチュード8の巨大(きょだい)地震(じしん)は、1703年と1923年に発生しました。このため、あと100年くらいはマグニチュード8の巨大(きょだい)地震(じしん)は起こらないと予想されます。

しかし、マグニチュード8の巨大(きょだい)地震(じしん)がくる間に、マグニチュード7の直下型(ちょっかがた)地震(じしん)が何回か発生しています。関東地方の真下で起こると予想されているので、東京の真下でマグニチュード7の地震(じしん)が発生することが心配されています。

図 南関東で発生した地震

日本に活断層(かつだんそう)は約2000あると推定されている

地震(じしん)の原因の1つに「活断層(かつだんそう)」があります。活断層(かつだんそう)では、過去に地震(じしん)がくり返し発生しており、今後も地震(じしん)が発生すると考えられています。

下の図は、日本の主な活断層(かつだんそう)です。日本には約2000の活断層(かつだんそう)があると推定されています。その中で主要活断層体(しゅようかつだんそうたい)は114とされ、政府(せいふ)の地震調査研究推進本部(じしんちょうさけんきゅうすいしんほんぶ)において、主要断層帯(しゅようだんそうたい)について活動度(かつどうど)を評価(ひょうか)し順次公表(じゅんじこうひょう)されています。

図 日本の主な活断層

1891年(明治24年)の濃尾(のうび)地震(じしん)、1948年(昭和23年)の福井(ふくい)地震(じしん)、1955年(平成7年)の兵庫県(ひょうごけん)南部(なんぶ)地震(じしん)(=阪神(はんしん)・淡路(あわじ)大震災(だいしんさい))、2007年(平成19年)の新潟県(にいがたけん)中越(ちゅうえつ)沖(おき)地震(じしん)などの大地震(じしん)は、活断層(かつだんそう)が動いたことが原因です。例えば、兵庫県(ひょうごけん)南部(なんぶ)地震(じしん)(=阪神(はんしん)・淡路(あわじ)大震災(だいしんさい))の原因となった淡路(あわじ)島(しま)の「野島(のじま)断層(だんそう)」は、断層(だんそう)を境に右横に0.9〜1.3mずれ、南東側が0.2〜0.5m盛(も)り上がりしました。

国の地震(じしん)調査(ちょうさ)研究(けんきゅう)推進(すいしん)本部(ほんぶ)では、主な活断層(かつだんそう)について、予想される地震(じしん)の大きさや地震(じしん)が起こる確率(かくりつ)(何年以内に地震が起こる可能性)などを研究して、発表しています。

写真 岐阜県本巣市の根尾谷断層(濃尾地震の原因)、兵庫県淡路島の野島断層(兵庫県南部地震の原因)

世界でもマグニチュード8以上の巨大(きょだい)地震(じしん)が起きている

地震(じしん)は日本だけでなく、世界で起こっています。1900年以降(いこう)に世界で発生した巨大(きょだい)地震(じしん)上位10位をあげてみると、東日本(ひがしにほん)大震災(だいしんさい)のあった日本、インドネシア、南アメリカのチリやエクアドル、北アメリカのアラスカ、ロシアのカムチャッカ半島など太平洋をぐるりと囲んでいるようです。

2011年(平成23年)3月11日に日本で起きた「東北地方太平洋沖地震(じしん)」はマグニチュード9.0という日本の観測(かんそく)史上(しじょう)最大(さいだい)の地震(じしん)でしたが、世界でも第4位になる超(ちょう)巨大(きょだい)地震(じしん)でした。

図 世界のマグニチュード6以上の震源分布とプレート境界

表 1900年以降に発生した世界の大きな地震(2017年3月3日現在)

地震(じしん)で、建物が倒(たお)れたり、火事が起きたり、津波(つなみ)などによって犠牲者(ぎせいしゃ)がでる

地震(じしん)が起こることで、建物が倒(たお)れたり、火事が起きたり、津波(つなみ)が海岸付近などにおしよせるといった被害(ひがい)を受けることがあります。このため、死者や行方不明者が出ることがあります。

「大震災(だいしんさい)」と呼(よ)ばれる大きな地震(じしん)被害(ひがい)を見ると、なぜ犠牲者(ぎせいしゃ)が多く出たのか特徴(とくちょう)があります。 1923年(大正12年)に発生した関東(かんとう)大震災(だいしんさい)では、死因(しいん)の87%が火事によるものです。発生時間が11時58分という昼食時間だったこともあり、火事が発生しました。能登(のと)半島(はんとう)付近に台風がいたため、関東地方では強い風がふいていたことも火事を大きくする原因になりました。

1995年(平成7年)に発生した阪神(はんしん)・淡路(あわじ)大震災(だいしんさい)では、死因の83%が建物が倒(たお)れて下敷(したじ)きになったりけがをしたことでした。朝5時46分に発生したため、ほとんどの人はまだ寝(ね)ていました。寝(ね)ているところに、古い木造の住宅が倒(たお)れてきて体がつぶされたり、タンスなど家具が倒(たお)れてきて体にあたって大けがをするなどして亡(な)くなる人が多くでました。コンクリートの建物でも倒(たお)れたり、ある階だけがつぶれたりしました。

2011年(平成23年)に発生した東日本(ひがしにほん)大震災(だいしんさい)では、マグニチュード9という超巨大(ちょうきょだい)地震(じしん)でしたが、地震(じしん)によって建物がこわされるという被害(ひがい)は多くありませんでした。それだけ、日本の建物は地震(じしん)に対して強く作れるだけの技術が発展(はってん)したということです。

しかし、地震後(じしんご)に海岸をおそった津波(つなみ)で多くの人が水死しました。そんなに大きな津波(つなみ)ではないだろうと油断していたり、避難(ひなん)場所(ばしょ)に逃(に)げてきたのに、その避難(ひなん)場所(ばしょ)さえも飲みこむほど大きな津波(つなみ)でした。また、津波(つなみ)から逃(に)げるために自動車に乗っている途中(とちゅう)で自動車ごと津波(つなみ)にさらわれて亡(な)くなる人が多く出ました。

死因

地震(じしん)のある国とない国のちがい

下の2つの写真を比べてください。両方とも、高速道路の橋脚(きょうきゃく)です。左は、日本の高速道路、右はフランスの高速道路です。どうちがうでしょうか。

日本の高速道路の橋脚(きょうきゃく)は太いです。これくらい太くして、コンクリートの中に鉄筋(てっきん)をたくさん巻かなければ、地震(じしん)の力に耐(た)えることができません。地震(じしん)だけでなく、台風もやってきますから、強風にも耐(た)えられるように頑丈(がんじょう)に作らなければなりません。

また、日本の平野や盆地は、地球の氷河期(ひょうがき)が終わったあと、川が運んだ土砂(どしゃ)などが積もってできたものですから新しくやわらかい地盤(じばん)です。このため、地下深くまで橋脚(きょうきゃく)の基礎(きそ)を入れないと、橋が安定しません。

それに対して、地震(じしん)のないフランスでは、日本のように太い橋脚(きょうきゃく)は必要ありません。地震(じしん)の力に耐(た)えるように鉄筋(てっきん)をたくさん使う必要もありません。ヨーロッパのい地盤(じばん)は、氷河期(ひょうがき)よりも前の時代にできていたため、古くてかたいです。日本ほど地下深くまで橋脚(きょうきゃく)の基礎(きそ)を入れる必要もありません。

橋や建物などを作るにしても、日本では地震(じしん)に耐(た)えられるようにするために、ヨーロッパよりも余分にお金をかけて頑丈(がんじょう)に作らなければならないのです。

日本とフランスの橋脚

津波(つなみ)によって大きな被害(ひがい)を受けてきた

海底を震源(しんげん)とする地震(じしん)が発生した後は、津波(つなみ)に注意しなければなりません。

地震(じしん)が起きると、震源(しんげん)付近では地面がはげしく上下します。これによって海水全体が急に押(お)し上げられて、大きな波となって四方に広がって行きます。

津波(つなみ)は、海が深いほど速く伝わり、浅くなるほど速度がおそくなります。水深5000mの海ではジェット飛行機と同じくらい、水深100mでも高速道路を走る自動車と同じくらいの速さで伝わります。

日本は何度も津波(つなみ)の被害(ひがい)にあいました。海岸近くに住む人々は、高い防潮堤(ぼうちょうてい)をつくったり、津波(つなみ)が来ないような高いところに家を建てたりしました。

東日本(ひがしにほん)大震災(だいしんさい)が起こる前までの日本で一番大きな津波(つなみ)は、1896年(明治29年)の明治(めいじ)三陸(さんりく)津波(つなみ)と言われています。岩手県や宮城県の三陸海岸は日本を代表するリアス式海岸として有名です。このとき発生した地震(じしん)そのものは震度(しんど)2〜3程度(ていど)のものでしたが、その後の津波(つなみ)により大きな被害(ひがい)を受けました。現在の岩手県大船渡市(おおふなとし)綾里(りょうり)湾(わん)では、本州で観測された津波(つなみ)の高さでは最も高い38.2mの「遡上(そじょう)高(こう)」を記録しました。

昭和8年(1933年)の昭和(しょうわ)三陸(さんりく)地震(じしん)でも、三陸海岸は津波(つなみ)の大被害(ひがい)を受けました。特に被害(ひがい)がはげしかったのは岩手県田老(たろう)村(現在の宮古市(みやこし)田老(たろう)地区)で、津波(つなみ)によって全戸数362戸のうち358戸が流され、人口1798人の44%にあたる792人が死亡しました。この被害(ひがい)をきっかけに、田老地区では町を取り囲むように、高さ10mの巨大(きょだい)な防潮堤(ぼうちょうてい)が建設されました。

この防潮堤(ぼうちょうてい)は、1960年(昭和35年)のチリ地震(じしん)津波(つなみ)から田老地区を見事に守りました。しかし、2011年(平成23年)の東北(とうほく)地方(ちほう)太平洋(たいへいよう)沖(おき)地震(じしん)(東日本(ひがしにほん)大震災(だいしんさい))の津波(つなみ)は、この防潮堤(ぼうちょうてい)を乗りこえてきました。

写真 東日本大震災前の岩手県宮古市田老地区の防潮堤

日本海側でも津波(つなみ)は発生します。昭和58年(1983年)の日本海(にほんかい)中部(ちゅうぶ)地震(じしん)により大きな津波(つなみ)が発生し、秋田県八竜町(はちりゅうまち)(現在の三種町(みたねまち)八竜(はちりゅう)地区)で6.6mの津波(つなみ)を観測しました。震源(しんげん)が陸に近かったため、地震(じしん)から7分後に津波(つなみ)が押(お)し寄(よ)せ、海岸から逃(に)げおくれた人が犠牲(ぎせい)となりました。

平成5年 (1993年) に発生した北海道(ほっかいどう)南西(なんせい)沖(おき)地震(じしん)のときには、北海道の日本海側に津波(つなみ)が発生し、奥尻(おくしり)島(とう)を高さ約30mの津波(つなみ)がおそいました。 奥尻(おくしり)島(とう)では、その10年前の日本海(にほんかい)中部(ちゅうぶ)地震(じしん)でも津波(つなみ)の被害(ひがい)にあっていたので、そのときの経験からいち早く高台に避難(ひなん)しようとしたのですが、震源(しんげん)が島に近かったため、避難(ひなん)する時間が十分にありませんでした。

表 明治時代以降の津波により大きな被害をもたらした地震

¶豆知識 − 津波(つなみ)の高さの種類

ふつう「津波(つなみ)の高さ」とは、ふだんの海面の高さから津波(つなみ)によって海面が上昇(じょうしょう)したその高さの差を言います。このほか、津波(つなみ)の高さをあらわす言い方として、「浸水(しんすい)高(こう)」または「痕跡(こんせき)高(こう)」、「浸水(しんすい)深(ふか)」、「遡上(そじょう)高(こう)」があります。それぞれ測る高さがちがうので、どの高さのことを言っているのか注意しましょう。

● 「浸水(しんすい)高(こう)」または「痕跡(こんせき)高(こう)」=陸上での津波(つなみ)の高さ(ふだんの海面の高さから測る)。

● 「浸水(しんすい)深(ふか)」=陸上での津波(つなみ)の深さ(地面の高さから測る)。

● 「遡上(そじょう)高(こう)」=津波(つなみ)が陸上をかけ上がった最高地点の標高(ふだんの海面の高さから測る)。遡上(そじょう)高(こう)は、気象庁(きしょうちょう)から発表される「予想される津波(つなみ)の高さ」に対して、同じ程度(ていど)の高さから、高い場合には4倍程度(ていど)までになることが知られています。

図 津波の高さの種類

地球の裏側(うらがわ)からも津波(つなみ)はやって来る

津波(つなみ)は、日本付近の地震(じしん)だけで日本の海岸をおそうのではありません。日本とは地球の裏側(うらがわ)にある南アメリカのチリで発生した地震(じしん)による津波(つなみ)が日本にやってくることがあります。

1960年(昭和35年)5月22日午後3時11分(日本時間では5月23日午前4時11分)、南アメリカのチリ沖で世界最大の地震(じしん)(マグニチュード9.5)が起きました。このとき発生した津波(つなみ)は太平洋を四方に伝わり、地震(じしん)発生から15分後に約18mの津波(つなみ)がチリの海岸をおそいました。約17時間後にはハワイに津波(つなみ)が到着(とうちゃく)し、約22時間半後の5月24日未明に、最大6mの津波(つなみ)が岩手県や宮城県の三陸海岸を中心におそい、142名が死亡(しぼう)しました。

図 1960(昭和35)年のチリ地震津波の伝わり

予想をはるかにこえた東北(とうほく)地方(ちほう)太平洋(たいへいよう)沖地震(東日本(ひがしにほん)大震災(だいしんさい))

2011年(平成23年)3月11日、宮城県の牡鹿(おしか)半島(はんとう)の東南東130km付近の三陸沖を震源(しんげん)とし、震源域(しんげんいき)が岩手県沖(おき)から茨城県(いばらきけん)沖(おき)におよぶマグニチュード9.0の地震(じしん)が発生しました。地震(じしん)の大きさは、日本国内で観測(かんそく)史上(しじょう)最大(さいだい)、世界で見ても1900年以降(いこう)に発生した地震(じしん)では4番目の大きさでした。

この地震(じしん)は、太平洋プレートと陸のプレートの境目で発生した地震(じしん)です。震源域(しんげんいき)は長さ約450km、幅(はば)約200kmにわたります。震源(しんげん)の真上の海底が水平方向に約24m移動し、垂直(すいちょく)方向に約3m隆起(りゅうき)したことから、大きな津波(つなみ)が発生しました。

記録されている津波(つなみ)の高さは、福島県相馬市で9.3m、岩手県宮古市で8.5m、岩手県大船渡市で8.0mなどです。津波(つなみ)の遡上(そじょう)高(こう)については、国内観測史上最大となる40.5mが岩手県宮古市重茂(おもえ)姉吉(あねよし)地区で見つかりました。

図 観測された津波の高さ

各地の津波の跡から推定した津波の高さ(浸水高・痕跡高)

沿岸(えんがん)の市町村では、震災(しんさい)前から「津波(つなみ)ハザードマップ」を作って、あらかじめ津波(つなみ)で浸水(しんすい)する範囲(はんい)を予想していましたが、東北(とうほく)地方(ちほう)太平洋(たいへいよう)沖(おき)地震(じしん)の津波(つなみ)は、その予想をはるかにこえました。これまで、津波(つなみ)の被害(ひがい)といえばリアス式海岸のことばかりだと思っていましたが、仙台平野では海岸線から5kmも内陸へ津波(つなみ)が入りました。宮城県石巻市(いしのまきし)では津波(つなみ)が川をさかのぼりました。このため、川沿(ぞ)いを中心に内陸まで海水につかりました。

図 津波ハザードマップで予想していた津波浸水域(青色)と実際の津波浸水域(ピンク色)

地震(じしん)に対する技術が発達している国 日本

数多くの地震(じしん)が発生する日本では、ほかの国に比べて地震(じしん)に対する技術がとても発達しています。例えば、地震(じしん)によって建物などが壊(こわ)された経験から、大きな地震(じしん)にも耐(た)えられるような建築技術や土木技術の研究が発展(はってん)しました。こうした研究成果から、建物や橋などは大きな地震(じしん)にも耐(た)えられるように設計することが法律で定められています。

東北地方(とうほくちほう)太平洋沖地震(たいへいようおきじしん)がマグニチュード9.0という超巨大地震(ちょうきょだいじしん)だったにもかかわらず、地震(じしん)でこわれたビルや住宅が多くなかったことに対して、世界中のニュースが日本の技術をほめました。

また、情報技術の発展(はってん)も地震(じしん)に備(そな)えることに役立っています。例えば、センサーにより地震(じしん)の前ぶれとなるような地下の異常(いじょう)な動きを感知したり、地震(じしん)の発生をいち早く感知して、ゆれ始まる前に地震(じしん)が来ることを知らせる「緊急(きんきゅう)地震(じしん)速報(そくほう)」もあります。緊急(きんきゅう)地震(じしん)速報(そくほう)はテレビの地上デジタル放送や携帯(けいたい)電話などに送ることで、多くの人たちに地震(じしん)が来ることを知らせることができるようになりました。

東北(とうほく)地方(ちほう)太平洋(たいへいよう)沖(おき)地震(じしん)では、走行中の東北新幹線が、最初のゆれの9秒前、最も大きいゆれが起きる1分10秒前に非常ブレーキをかけて減速(げんそく)を始めていたことが分かりました。

図内容