JICE 一般財団法人国土技術研究センター

国土を知る / 意外と知らない日本の国土

意外に大きい日本の国土

(わたし)たちの住む日本の国土は、弓なりの形をしていて、東西南北に長い列島なので、天気予報を見ていると、北海道と沖縄(おきなわ)とではずいぶん気温が全然ちがうな、というようなことはよくわかります。しかし、それ以外の日本の国土の特徴(とくちょう)は、なかなかふだんの生活では身近に感じることは少ないと思います。

しかし、日本列島を世界地図でなかで、いろいろな置き方をしてみると、日本の国土についておもしろい発見があるのではないかと思います。日本と世界の国々を比べてみましょう。

ヨーロッパ人から見ると東の果てにある国 日本

2つの世界地図を見てみましょう。

左の世界地図は、(わたし)たちが見慣(みな)れた世界地図です。太平洋と日本が地図の真ん中にあります。地図の右(はし)(日本から見て東の方角)にアメリカが、左(はし)(日本から見て西の方角)にヨーロッパがあります。アジアの国々の人が世界地図を見るときには、このような地図である方が自分の国の位置や周りの国々との関係がわかりやすいでしょう。

右の世界地図は、アメリカやヨーロッパの世界地図です。大西洋を中心にしてアメリカとヨーロッパが地図の真ん中になっています。昔のヨーロッパ人は、大西洋を航海してアメリカやアフリカと行き来していたのですから、このような地図になるのは当然です。ヨーロッパ人やアメリカ人から見ると、日本は地図の右(はし)(ヨーロッパから見て東の方角)にあります。

アジアを中心にした世界地図(左)、アメリカやヨーロッパを中心にした世界地図(右)

14世紀から16世紀(日本では鎌倉(かまくら)時代の終わりから戦国時代のころ)のヨーロッパでは航海(こうかい)技術が大きく発展(はってん)したことにより、アフリカやアジアまで船で出かけていき、貿易(ぼうえき)をしたり、自分たちの領土(りょうど)にしたりしました。

ヨーロッパ人から見てアジアは東の方角です。特にトルコやイラク、イラン、サウジアラビアなどは、アジアのなかでもヨーロッパに近い地域(ちいき)です。ですから、こうした地域(ちいき)を「近東(きんとう)」とか「中東(ちゅうとう)」、あるいは、両方をあわせて「中近東(ちゅうきんとう)」と言います。

日本や中国などの東アジア地域(ちいき)は、ヨーロッパ人から見ると東の果てです。地球の北の果ては「北極(ほっきょく)」、南の果ては「南極(なんきょく)」ですが、ヨーロッパ人から見た東の果ては「極東(きょくとう)」と言います。よく、東アジア地域(ちいき)のことを「極東(きょくとう)」と()ぶのは、ヨーロッパ人にとっての世界の見方から出てきた言葉です。日本の戦国時代に初めてヨーロッパ人が日本にやってくるまで、日本は見たこともない、はるか東のかなたにある伝説の国だったのですから。

ところで、同じような地名のつけ方は日本でもあります。江戸(えど)時代までの日本では、いまの滋賀県(しがけん)地域(ちいき)を「近江(おうみ)」、静岡県(しずおかけん)の西半分の地域(ちいき)を「遠江(とおとうみ)」と()んでいました。もっと古くは「近淡(ちかつあは)(うみ)」、「遠淡(とおつあは)(うみ)」と()んだそうです。ヤマトの(みやこ)から見て、「近くにある湖」、「遠くにある湖」という意味で、それぞれ琵琶(びわ)()浜名(はまな)()のことだと言われています。当時の日本の首都であった近畿(きんき)地方から見ると、確かに琵琶(びわ)()は近く、浜名湖は遠いですね。

東アジアの国々にとって太平洋との出入口にある日本

下の日本地図は、富山県がつくった「環日本海(かんにほんかい)諸国図(しょこくず)通称(つうしょう)(さか)さ地図)」です。(わたし)たちがふだん見慣(みな)れた、北が上になる日本地図を回転させて、南を上にした日本地図です。とてもユニークな地図ですね。

環日本海諸国図(通称:逆さ地図)

この地図をみると、東アジア地域ちいきでの日本の国土について、いろいろなことがわかります。

古代の日本は、朝鮮(ちょうせん)半島(はんとう)や中国から仏教などの進んだ文化が入ってきました。なるほど、朝鮮(ちょうせん)半島(はんとう)や中国から見ると、海の向こう側に島国があって、その島国のかたちはこの地図のように見えたのだと思います。いまでこそ太平洋側の方に大きな都市や大きな港がたくさんありますが、古代の日本では日本海側が外国とつながる玄関(げんかん)(ぐち)だったのです。

こうして見ると、日本海は日本とユーラシア大陸に囲まれた大きな湖のようにも見えます。日本海側の都市は、東アジアの都市と姉妹都市の交流をしたり、ロシアや韓国(かんこく)の都市と定期(ていき)航路(こうろ)定期便(ていきびん)の飛行機で結ばれています。そのような友好関係が今でも続いている理由がよくわかりますね。

地図に港を書き入れてみました。ロシアのウラジオストク港、韓国(かんこく)釜山(ぷさん)港や仁川(いんちょん)港、中国の大連(たーりえん)港・天津(てんちん)港・青島(ちんたお)港・上海(しゃんはい)港・寧波(にんぽー)港などの重要な港から、東南アジアや北アメリカに向けて太平洋に出るためには、必ず日本付近の海峡(かいきょう)を通過しなければなりません。東アジアの国々にとって、日本列島は太平洋への出入口となっているのです

東アジア地域の重要な港

日本よりも大きい国、小さい国

さて、日本の国土の面積は、約37万8000平方kmでしたね。国土の面積をほかの国と比べてみましょう。

アジアの国々では、ベトナム、マレーシア、イラクなどの国が日本と同じくらいの大きさの国です。

ヨーロッパには日本よりも小さい国がたくさんあります。イギリスやイタリアなどは日本よりも小さい国です。ドイツ、ノルウェー、フィンランドが日本と同じくらいです。オランダやデンマーク、スイスは九州よりも少し大きいくらいです。

オランダやデンマークは九州よりも少し大きいくらいの国土しかなくとも立派(りっぱ)な独立国です。オランダはサッカーが強い国ですし、江戸(えど)時代にはオランダ人が長崎までやってきて、日本と貿易(ぼうえき)していました。また、デンマークは福祉(ふくし)が進んでいて子どもや高齢者(こうれいしゃ)にやさしい国です。日本の各地方もこうした独立国に負けないようがんばってほしいと思います。

世界の主な国の大きさの比較

日本は世界で61番目に大きい国

日本は小さい島国だと思っている人も多いことでしょう。確かに世界地図を見ると、日本の近くには中国やロシアといった大きな国がありますし、世界地図の上で広い太平洋を東に行くとアメリカやカナダ、南へ行くとオーストラリアなど、大きな面積の国がありますから、日本はとても小さく見えてしまいます。

世界には、200以上の独立国や独立していない地域(ちいき)がありますが、その中で、日本の国土の面積は61位です。

下の世界地図とグラフは世界の国土の広い国、トップ10です。日本とこれらの国々とを比べてみると、ロシアは日本の約45倍もあり、カナダやアメリカ、中国は約26倍もあります。

また、世界の面積は1億3009万4010平方km、日本の国土面積は約37万8000平方kmですから、世界の面積のなかで日本の()める割合(わりあい)はたったの0.29%です。

世界の国の面積

● デンマーク王国は日本よりも大きい?小さい?

ヨーロッパにデンマーク王国という国があります。九州よりも少し大きいくらいの面積です。ところが、デンマークは、ヨーロッパから(はな)れた北極圏(ほっきょくけん)にあるグリーンランドという世界最大の島を領土(りょうど)としています。グリーンランドは日本の5.7倍もの大きさです。グリーンランドでは、デンマークから遠く(はな)れているため、グリーンランドに住む人たちが自分たちの身近なことは自分たちで決めることができるように、グリーンランド政府(せいふ)議会(ぎかい)があります。でも、住民はみなデンマークの国籍(こくせき)になっていて、グリーンランドは独立した国ではありません。

デンマークの面積を、ヨーロッパにある領土(りょうど)だけで計算すると日本よりも小さい国ですが、グリーンランドの大きさも含めて面積を計算すると日本よりも大きな国になります。このように計算方法によって少し順位がちがいます。

¶豆知識 − 海外にも領土(りょうど)を持っている国はデンマークだけではない

海外の遠く離れた場所に領土(りょうど)をもっているのはデンマークだけではありません。イギリスやフランスなどは、世界各地に海外領土(りょうど)を持っています。世界地図で太平洋や大西洋の島々を見てみましょう。きっと、イギリス領、フランス領などと書いてある島々が見つかります。これは、14世紀から16世紀(日本では鎌倉(かまくら)時代の終わりから戦国時代のころ)のヨーロッパでは航海(こうかい)技術が大きく発展(はってん)したことにより、ヨーロッパの国々は競って大西洋を航海してアメリカ大陸へ、またアフリカ大陸を回ってインド洋へ、そしてアジア、太平洋へと、貿易(ぼうえき)相手を見つけに出かけていきました。そのときに発見した島々を自分の国の領土としていったものが、いまでも残っているのです。

本州は世界第7位の大きい島

地理学という学問では、オーストラリア大陸以上の面積を持つ陸地を「大陸」といい、それ未満の面積のものは「島」に分類(ぶんるい)されます。

世界で一番大きな島は、デンマーク領のグリーンランドです。面積は日本の国土の5.7倍あります。日本の本州も島としては実は世界第7位の大きさです。ユーラシア大陸があまりに大きいので、世界第7位の島と言われてもピンときませんが、意外と大きいのですね。

世界の大きな島

いろいろな形をしている世界の国々

日本の弓なりの国土の形は、日本人なら(だれ)でも思い()かべることができることでしょう。では、他の国はどうでしょうか。世界地図をよく見てください。縦長(たてなが)の国、四角形に近いかたちの国、丸まるとした国など、いろいろな形をした国があります。

地図から国の形を切り出して、日本と同じ縮尺(しゅくしゃく)でならべてみると、東西・南北にそれぞれ約3000km長い日本の形の特徴(とくちょう)がよくわかります。

日本と同じ縮尺で並べたときの国の形の比較

日本の国土の広がりをヨーロッパ、アメリカ、中国と比較

ヨーロッパ、アメリカ、中国と、日本の国土の広がりや日本の形の特徴(とくちょう)と比較してみましょう。

●ヨーロッパの大きさと比べてみよう

イギリスは底辺500kmの三角形、フランスは東西南北約750kmの正方形のような形をしています。日本人が日本の国の形を「弓なり」とたとえて言うように、フランス人は自分の国を六角形の形をしていると言うそうです。ドイツは東西500km、南北700kmの少し縦長(たてなが)の長方形といった感じになっていますね。日本は、ドイツと同様の大きさです。

日本は東西約3000km、南北にも約3000kmの長さがあります。面積は同じくらいなのに、日本が東西南北に長い国だということがわかります。

移動距離で考えるとドイツ人が夏休みをとって南フランスの地中海に遊びに行くのは、東京の人たちが沖縄(おきなわ)に遊びに行くのと同じような距離感(きょりかん)がありそうです。

フランスの首都パリとイギリスの首都ロンドンとの間には、「ユーロスター」という新幹線のような速さで走る国際特急が走っています。フランスとイギリスとの間のドーバー海峡(かいきょう)では海底トンネルがあって、パリとロンドンの間を約4時間で走ります。パリからロンドンへ「ユーロスター号」に乗って出かけるのは、日本でいうと東京から上越(じょうえつ)新幹線で新潟まで行くと、パリとロンドンの中間くらいまで来たという感じかもしれません。

●アメリカの大きさと比べてみよう

アメリカ合衆国(がっしゅうこく)は面積が日本の約26倍もある大きな国です。アラスカ州やハワイ州などをのぞく、アメリカ合衆国(がっしゅうこく)本土の最東端(さいとうたん)はメイン州ウエスト・コディ・ヘッドで北緯(ほくい)44度48分、西経(せいけい)66度57分、最西端(さいせいたん)はワシントン州ケープ・アルバで北緯(ほくい)48度10分、西経(せいけい)124度44分です。北緯(ほくい)44度でアメリカの東西の長さをはかると約4500kmあります。最北端(さいほくたん)はミネソタ州アングルで北緯(ほくい)49度より少しだけ北側にあります。アメリカとカナダの国境線で太平洋まで長い直線の部分があります。これは北緯49度の緯線(いせん)を利用しています。最南端(さいなんたん)はフロリダ州イースト・ケープで、およそ北緯(ほくい)25度です。アメリカの南北の長さを北緯(ほくい)49度と北緯(ほくい)25度の差と考えると約2660kmです。

意外にもアメリカの南北の長さは、日本の南北の長さ約3000kmとあまり変わりありません。もっとも、アメリカは陸続きで約2660kmで、日本は島が連なって約3000kmなのですが、日本の国土の広がりにはおどろきです。

アメリカの大西洋に面した東海岸の地域(ちいき)には、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、首都ワシントンなど、アメリカを代表する大都市がつらなっています。首都ワシントンとニューヨークとの間は、日本でいうと東京と仙台(せんだい)との間と同じくらいです。また。東京と札幌(さっぽろ)との間は、アメリカの首都ワシントンとカナダの首都オタワとの間と同じくらいです。

●中国の大きさと比べてみよう

日本にとって中国は海をはさんで西隣(にしどなり)の国です。日本の約26倍の面積をもつ大きな国です。人口も14億人以上で日本の10倍以上です。

2011年6月30日、首都北京(ぺきん)上海(しゃんはい)を結ぶ新幹線が開業しました。1318kmを5時間未満で結びます。また、北京(ぺきん)香港(ほんこん)との間は直線(ちょくせん)距離(きょり)で約2000kmあります。東京と札幌(さっぽろ)の間は直線距離(きょり)で約840kmありますから、中国の大きさがよくわかります。