JICE 一般財団法人国土技術研究センター

  研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム
  (BRiDGE)

 JICEは、内閣府の進めるBRIDGEの39施策(令和5年12月15日現在)のうち「ダム運用高度化による流域治水能力向上と再生可能エネルギー増強の加速化プロジェクト」の研究開発・社会実装に取り組むとともに、研究共同体の事務局も担当しています。

新着情報・報道

2023/12/13    新着情報    JAPIC水循環委員会において講演を行いました。

BRiDGE(ブリッジ)とは

 BRIDGE(研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム)は、統合イノベーション戦略等の科学技術・イノベーション政策の方針に基づき、CSTI(※1)が各省庁の研究開発等の施策のイノベーション化(SIP(※2)や各省庁の研究開発等の施策で開発された革新技術等を社会課題解決や新事業創出に橋渡しするための取組をいう)につなげるための「重点課題」(例:事業環境整備、スタートアップ創出、人材育成など)を設定し、研究開発だけでなく社会課題解決等に向けた取組を推進するプログラム。令和5年度からPRISM(※2)の名称がBRIDGEへと改名されました。
 JICEは、内閣府の進めるBRIDGEの39施策(令和5年12月15日現在)のうち「ダム運用高度化による流域治水能力向上と再生可能エネルギー増強の加速化プロジェクト」の研究開発・社会実装に取り組むとともに、研究共同体の事務局も担当しています。


※1 CSTI(Council for Science, Technology and Innovation)
 総合科学技術・イノベーション会議。内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップの下、各省より一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とした「重要政策に関する会議」の一つです。

※2 SIP(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)
 戦略的イノベーション創造プログラム。科学技術イノベーション総合戦略及び日本再興戦略(平成25年6月閣議決定)に基づいて創設されたものです。令和5年から令和9年の5年間は第3期となります。
 SIPは、府省・分野を超えた横断型のプログラムであり、総合科学技術会議が課題を特定し、予算を重点配分するものであり、課題ごとにPD(プログラムディレクター)を選定し、基礎研究から出口(実用化・事業化)までを見据え、規制・制度改革や特区制度の活用等も視野に入れて推進していくものです。
 SIPの特徴は、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が司令塔機能を発揮し、社会的に不可欠で、日本の経済・産業競争力にとって重要な課題を選定し、自ら予算配分して、府省・分野の枠を超えて基礎研究から出口(実用化・事業化)まで見据えた取組を推進することです。

※3 PRISM(Public/Private R&D Investment Strategic Expansion Program)
 官民研究開発投資拡大プログラム。高い民間研究開発投資誘発効果が見込まれる「研究開発ターゲット領域」に各省庁の研究開発施策を誘導し、研究開発投資の拡大、財政支出の効率化を目指すプログラムで平成30年度から令和4年度まで実施しました。

JICEが取り組むプロジェクトの概要

 近年、「流域治水の推進」・「カーボンニュートラルへの貢献」など新たな社会的要請が生じ、これらの要請に応えるために、ダムが有する治水・発電ポテンシャルへの期待が高まっている。 既存ダムは、限られた容量を最大限活用し、ダム毎に運用ルールを定め、治水、利水、発電の機能を計画的に発現している。 ダムを柔軟に運用し、降雨が見込まれない期間は治水容量を利水(発電)に、降雨が見込まれる場合は利水容量を治水に活用することで、治水機能、利水機能(発電機能)の強化が見込まれる。 これらの運用を行うには精度の高い降雨予測が必要であり、近年降雨予測の精度、技術の高まりにより、事前放流の取組を推進しているものの、降雨予測の精度が十分とは言えない状況にある。 社会的な要請に十分応えるためには、降雨予測の精度向上と降雨予測の不確実性へのリスクを考慮したダム運用が課題である。

  • 長時間降雨予測、流入量予測に高度技術を導入し、ダムの貯水池運用の高度化を図る。
  • ダムの運用高度化により、治水機能の強化(確実な事前放流の実施、複数ダムによる連携操作)や水力発電の増電を図る。
  • これらダム運用の高度化を他省庁所管のダム(発電ダム、その他利水ダム)に展開することにより、個別ダムの有するポテンシャルの最大限活用が図られ、流域全体の治水機能向上、カーボンニュートラル等の施策への貢献を果たす。

 既存施設の操作ルールを変更するだけでなく、それにより生み出される、新たな治水・発電ポテンシャルに着目した放流設備・発電設備の改造や新設を併せて検討することにより、ダム再生、ハイブリッドダムなどの施策範囲の拡大、民間投資の拡大を促すものと考えている。

【研究開発等の目標】(BRIDGE実施期間で目指す目標)
 SIPU期では、ダム運用高度化の基本的な技術を開発。BRIDGE実施期間においては、都道府県管理の多目的ダム(予備放流方式ダムを含む)、他省庁所管となる発電ダム(揚水発電を含む)やその他の利水ダムにおいて、降雨の無い時期から後期放流まで適用可能な技術へと深化を図る。徹底的に試行を重ねた上で、様々なタイプのダムの実際の管理において予測を用いたダム操作が実現できるよう、ダム運用高度化技術の標準仕様の策定と、ルール作り(運用要領等の作成)、リスク管理手法の検討・開発を進める。


【社会実装の目標】(BRIDGE終了後の社会実装の目標)
 SIPU期では、主に国土交通省所管の50以上のダムで実装、ダム運用の参考情報として試行。BRIDGE実施期間においては、試行・評価・改善により導入するダム数の増加と導入する期間の拡大を図り、適用を促していく。導入・適用の可能性があるダムは日本全国に700以上あり、その4割強が他省庁所管の利水ダムである。このため、BRIDGEにより省庁横断的な検討と技術開発を集中的に短期間で進め、ダム運用高度化をより容易かつ効率的に導入・適用できるようにする。


【対象施策の出口戦略】(BRIDGE終了後に各省庁で実施する施策)
 治水機能の強化とカーボンニュートラルへの貢献を明示することで、ダム運用高度化を適用可能な多目的ダムに導入。合わせて、関係省庁との連携を強化し、治水効果と増電効果を明示することで、国土交通省所管外の利水ダムにさらに展開。運用高度化が、ハイブリッドダム、流域治水、カーボンニュートラルの取組を強力に推進することをダム管理者の理解を浸透。技術開発後、BRIDGEの成果をふまえ、逐次、ダムの操作規則、細則、運用要領の反映、見直しを図ることで、導入を加速させる。BRIDGEによる導入の拡大、BRIDGE成果の浸透を図ることで開発技術の自発的な導入を促進し、ダム管理のイノベーションを図る。

「ダム運用高度化による流域治水能力向上と再生可能エネルギー増強の加速化プロジェクト」の全体像

各研究開発テーマの概要

◆ 施策内容

  • SIP第2期で開発されたダム運用高度化の基本的な技術を活用し、都道府県管理の多目的ダム(予備放流方式ダムを含む)及び国土交通省以外の省庁所管となる発電ダム(揚水発電を含む)やその他の利水ダムにおいて、降雨の無い時期から後期放流までのダム操作の段階をカテゴライズし、その各操作段階をシームレスに接続する技術へと技術の深化を図る。
  • ダム種別と放流操作のタイミング別(事前放流から後期放流までをシームレスに接続)にカテゴライズ化した長時間アンサンブル予測技術の開発(他の予測技術の融合等及び上位中位下位予測の最適化)を行う。
  • ダム種別と放流操作のタイミング別にカテゴライズ化と予測技術を深化させた長時間アンサンブル予測のプロトタイプ運用を行う。
  • 開発予測技術システム運用とフィードバック、リスクを管理しながら各ダムにおいてポテンシャルを最大限引き出すための活用技術を完成させる。

◆ 施策内容

  • SIP第2期で開発されたダム運用高度化の基本的な技術を活用し、都道府県管理の多目的ダム(予備放流方式ダムを含む)及び国土交通省以外の省庁所管となる発電ダム(揚水発電を含む)やその他の利水ダムにおいて、予測技術の試行運用を行うためのマニュアルを検討する。
  • SIP第2期で試行を開始したダム群等へのダムタイプ毎の試行運用マニュアルの検討を行う。
  • システム改良フィードバック、ダムタイプ毎の運用マニュアル策定、SIP第2期で対象としなかったダム群への試行運用マニュアルの検討を行う。
  • ダムタイプ毎・放流操作のタイミング別の運用マニュアルを検討しダムタイプ別の適用プロセス標準化と活用手法を策定する。

◆ 施策内容

  • SIP第2期で開発されたダム運用高度化の基本的な技術を活用し、都道府県管理の多目的ダム(予備放流方式ダムを含む)など様々なタイプのダムの実際の管理において、長時間アンサンブル予測を用いたダム操作が実現できるよう実際に発生した洪水におけるダム操作の検証とフィードバックを行い、ダム操作ガイドライン案(操作規則、細則、運用要領等)の検討、開発を行う。
  • 試行運用の対象ダム(水機構多目的ダム、電力ダム等)におけるR4実洪水等実際に発生した洪水におけるダム操作の検証を行うとともに、試行運用のためのダム操作ガイドライン(案)の作成を行う。
  • 試行運用の対象ダム(水機構多目的ダム、電力ダム等)におけるR5実洪水も加えさらにダム操作の検証を重ねるとともに、試行運用の対象ダムにおけるダム操作ガイドライン(案)に基づく操作規則・細則の検討を行う。
  • 試行運用の対象ダム(水機構多目的ダム、電力ダム等)におけるR6実洪水も加えさらにダム操作の検証を重ねるとともに、本格運用のためのダム操作ガイドラインの策定、試行運用対象ダムの操作規則・細則の案を策定する。

◆ 施策内容

  • 都道府県管理の多目的ダム(予備放流方式ダムを含む)、発電ダム(揚水発電を含む)、大規模水道ダムなど、SIP第2期で対象としなかったダム群において、アンサンブル予測技術の展開を図り実際に発生した洪水でのダム操作の検証を行うとともに、試行運用のためのダム操作ガイドライン(案)を作成する。
  • 都道府県管理の多目的ダム、発電ダム、大規模水道ダムなどへの適用ルールの基本策定を行うとともに、数値シミュレーションでメリットとリスクを検証する。
  • 都道府県管理の多目的ダム、発電ダム、大規模水道ダムなどにおけるR5実洪水等実際に発生した洪水でのダム操作の検証を行うとともに、試行運用のためのダム操作ガイドライン(案)を作成する。
  • 都道府県管理の多目的ダム、発電ダム、大規模水道ダムなどにおけるR6実洪水等実際に発生した洪水でのダム操作の検証を重ねるとともに、試行運用の対象ダムにおけるダム操作ガイドラインに基づく操作規則・細則案の検討・策定及び、本格運用のためのダム操作ガイドラインの策定を行う。

共同研究開発機関

共同研究開発機関一覧

SIP第2期の成果

 SIP第2期では、気象予測を使って台風が来る事前に多目的ダムの水位を下げて、利水の容量を治水のポケットとして使うための技術開発を行いました。
 従来の気象予測では1-3日先の予測しか使えず、事前放流は限定的にしか行えませんでした。SIP第2期では、長時間アンサンブル予測によって15日間分の51ケースの予測を行い、1週間程度前からの事前放流を実現する技術開発を行いました。この技術により、雨が降らない時は逆に水位を高く保って水力発電量を増やすことができます。
 この技術開発は、4つのコア技術で構成されています。

  1. 長時間のリードタイムを確保する気象予測技術
  2. 降雨予測を高解像度化し、降った雨がどれくらいダムに入ってくるかの正確な流入量予測を行う技術
  3. 予測にどれくらい幅があるかを知ることができるアンサンブル予測技術
  4. 複数のダムの操作を連携して治水効果を拡大する操作シミュレータ

SIP第2期開始時の状況・課題と達成状況

お問合せ

ダム運用高度化による流域治水能力向上と再生可能エネルギー増強の加速化プロジェクト
事務局(一般財団法人 国土技術研究センター)

メールアドレス:bridge@jice.or.jp