JICE 一般財団法人国土技術研究センター

国土を知る / 意外と知らない日本の国土

山が多く森林にめぐまれた国土

日本の国土はどんな地形をしているでしょうか。山地が多く、大きな川が流れる平野、山に囲まれた盆地(ぼんち)、森林がゆたかな高原。日本の山や森林について調べてみましょう。

山が多く、平地が少ない国土

日本の国土の地形を「山地」、「丘陵地(きゅうりょうち)」、「台地」、「低地」、「内水域(ないすいいき)(とう)」に分けて地形別の面積を見ると、「山地」と「丘陵地(きゅうりょうち)」を合わせると7(わり)になります。標高0m〜100mの地域(ちいき)が国土全体の4分の1を()めますが、標高500m以上の地域(ちいき)も国土全体の4分の1を()めています。

地形別面積・標高ごとの国土の面積

地形別面積・標高ごとの国土の面積

背骨(せぼね)のような山脈が日本列島をつらぬいている

日本の山地の特徴(とくちょう)でヨーロッパの国々と大きくちがうのは、日本列島には、まるで背骨(せぼね)のような山脈が連なっていて、太平洋側と日本海側とに分けているということです。

外国と比べると日本がいかに山地の多い国かということが分かります。フランス、ドイツ、イギリスでは、標高500m未満の平地が広大に広がっています。

日本の東海道新幹線のうち東京―名古屋間は約340kmありますが、たくさんのトンネルや橋があります。一方、フランスの新幹線であるTGVですが、首都パリと2番目に大きい都市リヨンを結ぶ南東線は、約390kmでありながらトンネルが1つもありません。

各国の高地

日本は、太平洋側と日本海側をへだてる標高の高い山脈によって、それぞれの地域(ちいき)の気候や人々のくらしなどに大きな影響(えいきょう)を受けています。

たとえば、冬に日本海側で雪が多く、太平洋側には雪が少ないのは、湿(しめ)った冷たい季節風(きせつふう)背骨(せぼね)のような山脈にぶつかって雲ができ、日本海側に雪を()らせるからです。この季節風(きせつふう)が山脈を乗りこえて太平洋側にたどりつくころには、空気中の水分を雪として出し切ってしまい、(かわ)いた風になってしまうのです。

また、東北地方のように山脈や山地がとなりあう平野や盆地(ぼんち)との間をへだてている地域(ちいき)では、都市と都市との距離(きょり)が長くなります。(とうげ)をこえて地域(ちいき)地域(ちいき)を結ぶ道路や鉄道は、トンネルをほったり橋をかけて通りやすくするなどの苦労が外国よりも必要です。

山脈で地域が分けられている東北地方

国土のおよそ3分の2が森林

日本の森林面積は約25万平方km(=2500万ha)あります。国土の面積は37万8000平方km(=3780万ha)ですから、国土のおよそ3分の2が森林です。森林のうち約5(わり)が天然林、約4(わり)が人工林、残りが無立木地、竹林などです。

国土面積に()める森林面積を「森林率」といいます。国連食料農業機関(FAO)によると、世界の森林率の平均は約30%ですから、日本は世界各国のなかでも森林にめぐまれた国土であると言えます。

日本と世界各国の森林率

森林と国土を守ること

日本は降水量(こうすいりょう)が豊富で、温暖(おんだん)湿潤(しつじゅん)な気候であるため、どこでも木が育つ国土です。

南北に長い国土のため、沖縄(おきなわ)亜熱帯(あねったい)から北海道の亜寒帯(あかんたい)まで、気候のちがいによってさまざまな森林を見ることができます。また、標高3000mをこえる山もあるため、高山植物など標高によってもさまざまな森林が見られます。

森林は、木材を生産する役割(やくわり)のほかに、野生生物が生息(せいそく)する場所となったり、雨水を地面に通すことによって水源(すいげん)を保つ役割(やくわり)、地面に根をはることによって土砂(どしゃ)災害(さいがい)を防ぐ役割(やくわり)二酸化(にさんか)炭素(たんそ)吸収(きゅうしゅう)酸素(さんそ)をつくる役割(やくわり)(わたし)たちが自然のことを学ぶ場所など、重要な役割(やくわり)をはたしています。

ところが、最近は人の手入れが行きとどかないので、やせ細っている森林が目立つようになっています。例えば、スギ、ヒノキ、カラマツ、アカマツ、クロマツなどは成長が早く、建物の材料などに利用できる針葉樹(しんようじゅ)です。しかし、こうした木を良く成長させるためには、いらない枝を切ったり(枝打(えだう)ち)、成長させる木だけを残して、あとは切ってしまう(間伐(かんばつ))などの人の手入れが必要なのです。

こうすることで森林に日がさして明るくなり、地面には樹木(じゅもく)以外の植物も育ちやすくなります。そのため、土が雨で流されることを防ぐことができ、土砂(どしゃ)災害(さいがい)に強い森林となります。人の手入れがされていない森林では、日がさしにくいために暗く、地面に植物が育ちにくくなります。その結果、土がむき出しとなり、雨で流れ出やすくなります。樹木(じゅもく)も日があたらないので、良い木材になりません。

このように、人が森林の手入れを行うことは、森林そのものを強くし、土砂(どしゃ)災害(さいがい)が起こりにくい国土をつくることにもつながるわけですが、外国産の安い木材に日本産の木材が負けているため、林業は決して十分にもうかる仕事ではなくなってしまいました。

このため、間伐(かんばつ)してできた木材を利用して、道路のガードレールを作ったり、コンクリートを使わないウッドブロックなど、木材の利用方法を広げる研究やアイデアが考えだされています。