JICE 一般財団法人国土技術研究センター

国土を知る / 意外と知らない日本の国土

世界有数の火山国、日本

日本で有名な活火山(かつかざん)をどれくらい知っていますか。関東地方の浅間山(あさまやま)、九州地方の阿蘇山(あそさん)桜島(さくらじま)などは学校で習うと思います。

地球上で地震(じしん)が起きやすい地域(ちいき)と火山がある地域(ちいき)は似ています。そもそも活火山(かつかざん)とはどういう火山でしょうか。世界に活火山(かつかざん)はどれくらいあって、日本にはどれくらいあるのでしょうか。火山は噴火(ふんか)するとおそろしいですが、生活のすぐ近くに火山がある人々もいます。一方で温泉などの火山のめぐみもあります。火山について知ってみましょう。

世界の活火山(かっかざん)の約7%が日本にある

気象庁(きしょうちょう)によると、「活火山(かつかざん)」とは、およそ過去1万年以内に噴火(ふんか)した火山や現在も活発な活動のある火山をいいます。いま活発にけむりをあげている火山はもちろん「活火山(かつかざん)」ですが、過去の長い間活動がなくとも将来(しょうらい)噴火(ふんか)の可能性がある火山も「活火山(かつかざん)」です。

日本では全国で活火山(かつかざん)が111山あり、世界の活火山(かつかざん)の約7%()めています。

日本と世界の活火山の数

日本の活火山

ところで、昔は、「活火山(かっかざん)」のほかに、「休火山(きゅうかざん)」や「死火山(しかざん)」という分類がありました。いまは活動していないが過去に活動した記録が残っている火山を「休火山(きゅうかざん)」、過去の活動記録がない火山を「死火山(しかざん)」と分類していました。

しかし、火山の年代をはかる技術が進歩して、火山の過去の活動がくわしくわかるようになると、過去の活動記録だけで将来(しょうらい)噴火(ふんか)の可能性を判断することは(むずか)しいということがわかりました。そこで、いまでは「休火山(きゅうかざん)」や「死火山(しかざん)」いう分類はしていません。

地震(じしん)と火山の関係

世界で発生している地震(じしん)の分布(左)と世界の主な火山の分布(右)を比べてみましょう。よく似ていることがわかります。

世界の震源分布と主な火山

地球の表面近くでは、「プレート」という、厚さ数10kmから100kmの岩盤がんばんのようなかたまりでできています。地球の表面には大きく14〜15枚のプレートがあり、1年間に数cmという速さで移動しています。2つのプレートがぶつかる境目さかいめでは、一方のプレートがもう一方のプレートの下に(しず)みこんだりしています。

大陸(たいりく)プレートの下に(しず)()んだ海洋プレートから分離(ぶんり)した水のはたらきにより、上にあるマントルの一部(いちぶ)がとけでてマグマができ、それが上に上がっていき、いったんマグマ()まりに(たくわ)えられるなどしてから、地表(ちひょう)()き出すのです。

日本列島における火山噴火の仕組み

日本で起こる地震(じしん)の発生や火山の噴火(ふんか)は、こうしたプレートの動きと関係があります。日本列島は、「ユーラシアプレート」と「北米(ほくべい)プレート」の上に乗っていますが、東の海から「太平洋プレート」が西向きに移動してきてぶつかり、「日本海溝(かいこう)」などで地下にもぐりこみます。また、南の海からは「フィリピン海プレート」が北向きに移動してきてぶつかり、「南海トラフ」で地下にもぐりこみます。

このため、「日本海溝(かいこう)」や「南海トラフ」と平行して「火山フロント」と()ばれる火山の列があらわれます。これが北海道や本州、九州の山脈、小笠原(おがさわら)諸島(しょとう)などの火山帯(かざんたい)です。

さて、日本付近のプレートの図をよく見てください。ユーラシアプレート、北米(ほくべい)プレート、フィリピン海プレートの3つのプレートがぶつかるところのすぐ近く、火山フロントの交点になるところには何があるでしょうか。そう、日本一高い山、富士山です。

日本付近のプレートと火山

火山噴火(ふんか)などの被害(ひがい)

江戸時代中期、1783年の浅間山(あさまやま)噴火(ふんか)では、火砕流(かさいりゅう)溶岩流(ようがんりゅう)火山(かざん)泥流(でいりゅう)が発生し、土砂(どしゃ)吾妻(あがつま)(がわ)をせき止めました。その後、この土砂(どしゃ)決壊(けっかい)し、増水した吾妻(あがつま)(がわ)泥流(でいりゅう)となって大洪水(こうずい)を引き起こしました。増水した水は合流する利根川(とねがわ)にも流れこみ、現在の前橋市あたりまで被害(ひがい)が広がりました。この噴火(ふんか)で1151人の犠牲者(ぎせいしゃ)がでたと記録されています。

鹿児島県(かごしまけん)桜島(さくらじま)は、いまも噴煙(ふんえん)を上げ続けています。名前のとおり、かつては鹿児島(かごしま)(わん)に浮かぶ火山島でした。1914年(大正3年)の噴火(ふんか)により大隅(おおすみ)半島(はんとう)と陸続きとなったのです。

最近では、2000年(平成12年)に三宅(みやけ)(じま)噴火(ふんか)し、島民が全員、島から避難しました。

2008年(平成20年)年7月の北海道洞爺(とうや)()サミットの会場となった洞爺(とうや)()付近にある有珠山(うすざん)は、約30年に1度のペースで噴火(ふんか)し、噴火(ふんか)の前ぶれとして地震(じしん)が多発するという特徴(とくちょう)があります。2000年(平成12年)3月に有珠山(うすざん)噴火(ふんか)したときには、過去と同じように前ぶれとして地震(じしん)が多発したので、地元に住む人々は有珠山(うすざん)噴火(ふんか)が近づいていることを知って、いち早く避難することができました。

有珠山(うすざん)の近くに住む人々は、もし噴火(ふんか)が起こったときにどうしたらよいか考えていて、危険(きけん)地帯(ちたい)を表した地図(ハザードマップ)を作ったり、子供たちに噴火(ふんか)について学校で教えるなどしていました。噴火(ふんか)被害(ひがい)から立ち直った洞爺(とうや)()の人々は、火山のおそろしさも忘れないようにしながら、火山のことを勉強することができるまちづくりを行っています。

噴火(ふんか)被害(ひがい)だけでなく、火山から離れた地域においても火山灰(かざんばい)によって大きな影響(えいきょう)があることがわかってきました。例えば、火山灰(かざんばい)によって水道水が飲めなくなってしまったり、たった3ミリの火山灰(かざんばい)でも雨が降ると停電(ていでん)になると言われています 。

火山灰によるインフラなどへの影響

火山噴火(ふんか)の歴史

中世(1500年)以降の大規模だいきぼ噴火ふんかの歴史をみると、東北地方では活火山の数の割に大規模噴火だいきぼふんかが少ないことや、有珠山うすざん三宅島みやけじまのようにひんぱんに噴火ふんかを繰り返す火山があることがわかります。

日本における西暦1500年以降の大規模噴火の歴史

火山からのめぐみ

火山は噴火(ふんか)するとおそろしい一方で、火山からのめぐみもあります。

火山はすき()の多い溶岩(ようがん)でできているので、()った雨はすぐに地面にしみこんでしまいます。しみこんだ水は地下水となって山のふもとへ流れていき、溶岩(ようがん)の切れ目からわき水となって地上に出てきます。火山のわき水は豊富でかれることがありません。また、長い年月、地下を旅してきたので、きれいでおいしい名水として有名なものも多くあります。

火山活動によって川がせき止められたり、地面が陥没(かんぼつ)したところ(「カルデラ」と言います)に水がたまって湖ができることがあります。栃木県(とちぎけん)中禅寺(ちゅうぜんじ)()は、男体山(なんたいさん)という火山が噴火(ふんか)して川をせき止めてできた湖です。北海道の洞爺(とうや)()神奈川県(かながわけん)(あし)()は地面が陥没(かんぼつ)したカルデラに水がたまってできた湖です。

火山のまわりにはたいてい温泉もあります。また、火山の熱水(ねっすい)蒸気(じょうき)をつかって電気を起こすことができます。「地熱(ちねつ)発電」といいます。日本の地熱(ちねつ)発電所は、東北地方や九州地方の火山帯に多く立地しています。

日本の地熱発電所

火山が()き出したものもめぐみとなります。火山(かざん)(ばい)でできた土は水はけが良いという特徴(とくちょう)がありますから、水はけが良い土地を好む農作物を作るのには好都合です。また、軽石を()き出した火山もあります。軽石はざらざらしているので、お風呂で使うと気持ちがよいです。金、銀、銅、亜鉛(あえん)、スズなどの鉱物(こうぶつ)資源(しげん)も地球の内部から運ばれてきます。