JICEレポート
JICE REPORT 第43号
表紙
▼関東大震災から100年
1923年(大正12年)9月1日11時58分、相模湾北西部を震源とするマグニチュード7.9(推定)の巨大地震が発生し、10万棟を超える家屋の倒潰と火災等により死者・行方不明者は約10万5千人を数える甚大な被害をもたらした関東大震災から100年の節目を迎える。
死因の約9割は住家倒潰や火災によるものであり、震災後には建築物耐震基準の設定、幹線道路や公園の整備などの街づくりに活かされ、戦後には地震発生日の9月1日が「防災の日」に制定されるなど、伊勢湾台風と並んで我が国の防災対策の契機となった大災害として知られている。
▼火災だけではない関東大震災の被害
東京市内の火災被害が写真や文章でセンセーショナルに伝えられていることで、関東大震災は首都直下型の局所的災害であると思われやすいが、実際には相模トラフのプレート境界に沿って発生した海溝型地震であり、表紙に示すように震源は神奈川県西部、震度7と推定される住家全潰率30%以上の地域も神奈川県南部と千葉県南部に広がっている。
火災以外の災害も発生した。地震発生後わずか数分で伊豆半島東岸から相模湾、房総半島沿岸を5〜10メートルの津波が襲い、人や家屋が流失した。また、神奈川県西部では山崩れや土石流により約800人が犠牲となった。
プレート境界のずれにともなって神奈川県南部や房総半島南部の地盤が最大2メートル程度隆起、反対に丹沢山地周辺の地盤は沈降したことも地震の巨大さを物語る事実として知っておきたい。
▼来たるべき巨大地震に備えて
日本列島はどこでも大きな地震が発生する可能性があり、マグニチュード7 程度の首都直下地震も30年以内に70%の確率で発生が予測されている(地震調査研究推進本部2020年1月24日時点予測)。
日本に住む我々にとって地震は身近な存在であるが、大地震による被害、特に首都機能が麻痺するような壊滅的被害を想像することは難しい。家具の転倒防止や避難経路の確認など、地震発生直後に命を落とさないための準備が必要であるのは勿論のこと、想像を超える事態が発生しても冷静に行動するためにはどのような準備が必要なのだろうか。
関東大震災に関する資料は数多く残されており、情報技術が未発達な時代、また震災直後の混乱の中にも関わらず、先人たちが後世に記録を残そうと努力した様子がうかがえる。東京都墨田区の横網町公園にある東京都慰霊堂及び東京都復興記念館には、関東大震災の被害や復興に関する資料が多数展示され、当時の惨禍や混乱を今に伝えている。このような伝承施設に足を運び、災害を自分事として捉えることも大切である。
もくじ
ページ番号 | 内容 |
- | |
001 |
巻頭言 ●一般財団法人国土技術研究センター 理事長 徳山 日出男 |
004 |
研究報告 ●技術・調達政策グループ 総括(研究主幹) 井上 清敬 ●河川政策グループ 総括(研究主幹) 田中 敬也 ●道路政策グループ 総括(研究主幹) 牧野 浩志 ●技術・調達政策グループ 副総括(研究主幹) 篠田 宗純 |
010 |
●技術・調達政策グループ 副総括(研究主幹) 篠田 宗純 ●技術・調達政策グループ 副総括 佐藤 重孝 ●技術・調達政策グループ 首席研究員 佐々木 正 ●技術・調達政策グループ 元・主席研究員 山下 和也 ●技術・調達政策グループ 元・研究員 白井 髣T |
014 | |
018 |
流域治水の実現に向けた粘り強い堤防技術の開発〜粘り強い堤防から始まる流域治水のネクストステージ〜 ●河川政策グループ 主任研究員 味方 圭哉 ●河川政策グループ 副総括(首席研究員) 佐古 俊介 |
024 |
データに基づき長寿命化を促す道路舗装マネジメントの充実に向けて ―土地の成り立ちや修繕履歴などの情報を駆使した修繕設計の提案― |
030 |
国土政策研究所 講演会 自動運転の実現に向けたSIP 9年間の取組み〜産学官連携プロジェクトの成果と振り返り〜 ●トヨタ自動車株式会社 先進技術開発カンパニー Fellow 葛巻 清吾氏 |
048 |
事業紹介・事業報告 ●情報・企画部 研究員 石川 直樹 |
050 |
●情報・企画部 研究員 浅賀 久美子 |
052 |