▼再生可能エネルギー（再エネ）活用の現状と課題

表紙は、関東地方の高速道路ネットワーク及びサービスエリアの位置、物流拠点と、太陽光発電が旺盛な地域を示している。
首都圏外周部は、日照時間が長く太陽光パネルの設置に適した平地が多いなど、太陽光発電が旺盛である。電力需要が旺盛な都心部とは空間的な偏在があるため、再エネの活用を進めるには送電が必要であるが、送電の空き容量が少ない状況である。
太陽光発電は日中に供給され、天候にも左右される。電力を安定供給するためには、需要（電力消費量）と供給（発電量）のバランスを保つ必要があり、火力発電や揚水式水力発電の出力を調整することで、天候によって変動する再エネを含めた需給バランスを保っている。近年、需要の少ない日には供給過多となり、再エネ発電所の出力を抑える必要も生じているなど、時間的な偏在を抱えている。
また、現在の交通状況のまま今後全ての車が電気自動車（EV）に転換した場合、新たに必要となる電力量は日本全体の年間発電量の15%にもなることから、再エネをEVが消費する仕組みが求められるとともに、走る蓄電池としてのEVの活用が期待されている。

▼再エネの空間的偏在へ対応する狭義の電力ハイウェイ
首都圏外周部の再エネ発電エリアから、電力が不足する都心部等の電力消費地への新たな送電網として、幹線道路ネットワークの道路空間を活用した送電系統線を敷設するアイデアが考えられる。このように再エネ電力を消費地に届ける狭義の電力ハイウェイの実現が期待される。

▼時間的・空間的需給バランスを実現する広義の電力ハイウェイ
首都圏外周部に過多の太陽光発電を活用し、時間的・空間的な需要をシフトするアイデアとして、自家用EVであれば、首都圏外周部のサービスエリアなどで充電し、自宅に戻ってからその電力を活用することや、業務用EVであれば、首都圏外周部に多く立地する物流拠点で太陽光発電電力を充電し、高速道路ネットワーク等を活用した移動をすることなどが考えられる。
このような時間的・空間的な需要バランスの確保を目指し、EV充電器の整備と連携した幹線道路網の整備など、広義の電力ハイウェイの実現が期待される。
2050年カーボンニュートラルの実現には、土木インフラ分野の貢献が求められている。