JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第18回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

フラップゲート式陸閘の開発(第18回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称フラップゲート式陸閘の開発
副題津波・高潮等による浸水時の浮力により起立する防潮壁
応募者名日立造船(株)、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所
技術開発者日立造船(株) 森井 俊明、木村 雄一郎
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 下迫 健一郎
共同開発者早稲田大学 教授 清宮 理
京都大学 教授 間瀬 肇
国土交通省 四国地方整備局 小松島港湾・空港整備事務所
高松港湾空港技術調査事務所

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 開発者らは、平成15年度からフラップゲート式津波・高潮防波堤の開発を行っており、その過程で得られた知見を活かし、平成21年度からフラップゲート式陸閘の開発を開始した。開発途中に発生した東北地方太平洋沖地震では、陸閘や水門閉鎖等に関係して多くの消防団員が殉職された。その対策として、陸閘等の常時閉鎖や遠隔操作化が有効であるが、常時閉鎖(通行のたびに開閉する運用)は日常活動に多大な負担を強いる場合があり、遠隔操作化には長期に亘る多大な維持管理の負担が伴う。本技術は浸水に伴う浮力を利用して開口部を自動閉鎖する。平常時の交通の邪魔にならず、遠隔操作装置を必要とせずに、浸水時に確実に作動させることができれば前述の課題を一挙に解決できる。開発者らは、起立阻害要因の洗い出しと評価ならびに水理実験等による検証を行い、加えて維持管理方法まで含めたリスク回避方法を立案することで、十分な信頼性を有する陸閘として本技術を実用化した。

2.技術の内容

 本技術の施工事例を写真-1、動作機構を図-1に示す。防潮堤開口部に設置された扉体は、浸水時の浮力とウエイトによる助力により旋回起立することで開口部を自動閉塞する。本技術では、扉体内部に充填材を配置することで通行車両に対する強度と軽さを両立し、ウエイトを起立開始時の助力と起立完了時の制動力の両方向に利用することで、極めてシンプルな機構で扉体応答特性を改善(図-2参照)し、安定した作動を実現した。本技術の主要な特長を以下に示す。


 ・ 操作員が危険にさらされることがなく、かつ操作ミスや操作忘れ、操作遅れによるリスクも回避できる。
 ・ 津波来襲前に閉鎖する必要がなく、津波の到達直前まで避難路として使用可能である。
 ・ 遠隔操作方式と比較してメンテナンスが容易で、維持管理負担が大幅に縮減される。

3.技術の適用範囲

 ・ 適用箇所:津波・高潮対策等として、防潮堤開口部や河川堤防開口部等に設置される陸閘等
 ・ 寸  法:幅1.25m〜15.0m×高0.5 m〜4.0m(左記は製作実績。さらなる大型化も可能。)

4.技術の効果

 電気・通信機器を使用しないため、適切に定期点検を実施することで突発的な故障による不稼動リスクを回避できる。遠隔操作方式に比較して極めてシンプルな機器構成となるため、維持管理の負担が小さく、ライフサイクルコストが大幅に縮減される。

5.技術の社会的意義及び発展性

 近年、世界各地で地震津波や台風等による巨大水災害が頻発しており、さらに国内ではゲリラ豪雨等による内水氾濫リスクも高まっている。維持管理負担の小さい本技術は、人口減少に向かう日本国内において、持続可能な防災・減災社会の構築に大きく寄与し、社会インフラの整備が急速に進むアジア諸国においてもそのニーズは急速に高まっていくことが予測される。

6.技術の適用実績

 平成26年度撫養港海岸桑島瀬戸地区堤防改良工事(その2) など全34門(2016年4月1日時点)

写真・図・表