JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第5回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

日本沿岸波浪推算処理解析システム(第5回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称日本沿岸波浪推算処理解析システム
副題高精度波浪推算法と日本沿岸波浪推算データベースのGUIによる効率的な処理解析システム
応募者名(独)港湾空港技術研究所
技術開発者(独)港湾空港技術研究所  橋本典明
                   川口浩二

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 波浪は港湾・海岸構造物の計画や設計において第一に取り上げられる自然外力であり,精度よい波浪条件の設定が必要不可欠である.また,沿岸域をより有効かつ高度に利用するため,種々の開発計画を推進して行くためには,より広域の信頼性の高い波浪情報が必要になると考えられる.しかしながら,新たに波浪観測を実施して必要な情報を得るためには,多大の労力と費用および数年〜数十年の期間を要する.近年,気象情報の高精度化にともなって波浪推算法の高精度化が進んできたことから,波浪観測に代わる波浪情報の経済的収集手段としての信頼性の高い波浪推算法の早急の開発と実務への導入が強く要望されてきた.

2.技術の内容

日本沿岸波浪推算処理解析システムは,海上風推算システム,波浪推算システム及び波浪推算データベース解析表示システムの3つのシステムから構成されており,最先端の波浪推算技術を効率的かつ有効に利用可能なシステムである.海上風推算システムと波浪推算システムの開発では,世界標準的な最先端の数値計算モデルをベースとして,幾つかの改良を加えて開発した.海上風推算システムでは気象庁から提供されるGPVを入力値として沿岸や内湾の海上風を精度よく推算可能である.波浪推算システムでは,高精度な非線形相互作用の計算スキームを開発し,高精度化を図るとともに,内湾・沿岸域の波浪推算精度を向上させる改良を行った.また,波浪推算データベース解析表示システムでは,波浪情報を効率的に処理・解析して容易に利用できるようにユーザーフレンドリーなGUIを開発した.

3.技術の効果

日本沿岸波浪推算処理解析システムは,波浪観測に代わる経済的かつ効率的な波浪データ収集・解析システムであり,波浪情報を必要とする種々の計画や事業に適用可能である.このため,波浪観測における波浪情報の収集・解析コストを大幅に削減可能であるばかりでなく,工期短縮,作業手間の軽減等にも寄与できる.その他,本システムで構築された波浪推算データベースは,このようなコスト面での技術開発効果に寄与するのみならず,これまで現象解明が進んでいなかった長周期波の発生原因の究明への利用や,海域環境問題,広域漂砂問題等への種々の利用が考えられることから,このような学術的な面での波及効果も期待できる.

4.技術の適用範囲等

  • 信頼性の高い設計波を算定するための極値波浪情報の提供
  • 限界状態設計法で必要な波高・周期の結合頻度表を作成するための方向スペクトル情報の提供
  • 我が国沿岸の波浪の出現特性(波候統計)の解明のための連続的波浪推算情報の提供
  • その他,港内静穏度問題,広域沿岸漂砂問題,海域環境評価等で要求される波浪情報の提供,等

5.技術の適用実績

 波浪推算による東京湾及び関東沿岸の波浪データベースの作成、H13年4月〜H15年3月 他5件