JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第5回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

鋼製地中連続壁工法 (第5回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称鋼製地中連続壁工法
副題薄壁型・省スペース化・省力化施工の都市環境保全型地中連続壁工法
応募者名新日本製鐵(株)
技術開発者新日本製鐵(株) 田崎和之
(株)間組    佐久間誠也
清水建設(株)  前孝一
(株)大林組   平井正哉
鹿島建設(株)  村田俊彦
東急建設(株)  酒井邦登
共同開発者(株)間組
清水建設(株)
(株)大林組
鹿島建設(株)
東急建設(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 都市部においては地下道路、地下駅、共同溝、トンネル立坑など多くの開削工事による地下空間建設が行われている。これらの地下建設工事は年々大深度・大規模化する一方で、道路上や限られた狭いスペースで行われるだけではなく、既設の構造物による上空制限や地中埋設物制限など厳しい現場条件が加わって来ている。さらに、重機の大型化による近隣住宅への圧迫、建設副産物の大量発生など環境問題も多く発生している。これらの問題を解決し、今後さらなる効率的な地下空間建設の要求に応えるため、狭隘地での施工が可能で、かつ近隣環境保全を目指した新しいタイプの地中連続壁を開発した。

2.技術の内容

 鋼製地中連続壁工法は安定液掘削工法により造成された溝中に鋼製連壁部材NS-BOX(写真-1、2)を建込み、コンクリートなどを充填して土留め壁を構築する、わが国独自の工法である(図-1)。鋼製地中連続壁は仮設だけではなく永久構造物の地下壁として使用できる工法であり、従来の鉄筋コンクリート地中連続壁(RC連壁という)に比べ土留め壁の薄壁化、現場の省スペース化が図れる。開発にあたっては鋼製地中連続壁用の新構造部材NS-BOXを開発し、NS-BOXとコンクリートの複合構造特性を明らかにすると共に100m級の大深度でもできる施工法の開発を行い、設計施工技術を確立した。特にNS-BOX用に開発した「連壁用形鋼」(写真-3)は明治以降、輸入技術で生産された軌条、鋼矢板、H形鋼と違って、わが国初のオリジナリティのある形状の大型圧延形鋼となった。

3.技術の効果

  • コスト縮減:壁厚1.5m以上のRC連壁と比較して10%以上の工事費縮減ができる(図-2)。一般的には壁厚1.3m以上のRC連壁と比較して経済性がある。地中連続壁厚縮小:RC連壁や柱列式地中連続壁工法と比較して、約30%以上の壁厚縮小ができる。 ⇒鋼製連壁本体壁利用・薄壁化により建設用地の縮小及び地下埋設物移設回避などができる(図-3)。
  • 現場作業ヤード縮小:RC連壁と比較して、約30%以上の壁厚縮小ができる。 ⇒道路上工事での交通渋滞の緩和や用地制限の厳しいところでの建設が可能となった。
  • 環境への配慮:薄壁化により安定液掘削で発生する産廃処理量をRC連壁と比較して30%以上減少できる。
  • 総合的効果:従来技術では困難であった狭隘地での地下建設工事が、本工法により建設可能となった。海外においても本技術が採用されるなど、国際的にも貢献できる技術である。

4.技術の適用範囲等

  1. 地下道路、地下鉄駅舎、トンネル発進・到達立坑などの仮設兼用本体地下壁
  2. 深さ100m、壁厚2.4mまでの工事規模
  3. 地中連続壁の薄壁化や現場の省スペースが要求される場所に適用が多い。

5.技術の適用実績

国土交通省 蘇我共同溝発進立坑工事、平成14年9月〜平成15年3月 他34件