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柔構造樋門設計の手引き
はじめに
河川堤防を横断して設けられる樋門は、堤体土との重量・剛性等の相違から周辺土とは密着し難く、特に地盤の沈下が大きい軟弱地盤における支持杭基礎の樋門においては、函体底版下の基礎地盤や周辺堤防に空洞が発生する例が少なくありませんでした。この空洞は洪水時の河川堤防の安全を脅かす重大な課題として認識され、その対策が急がれていました。
本書は、この空洞化に対処するため、樋門を周辺地盤の沈下に追随させることで空洞化の抑制が期待される「柔構造樋門」の設計法の基本的な考え方についてとりまとめたものです。
柔構造・柔支持樋管の設計計算事例
柔構造・柔支持樋管の設計計算事例(7.3MB)
柔構造樋門設計の手引き FAQ
国土技術研究センターでは、平成10年12月に「柔構造樋門設計の手引き(以下、本書と記載)」を発刊いたしました。その後、現在に至るまで本書に関する多くの問合せがあり、その内容を蓄積しております。今回、これらの質問と質問に対する回答の一部を公開することで、本書を理解する一助として役立てていただければと思います。ただし、公開いたしました質問回答は、個別の事例における質問に対する回答となっているものも含まれており、全てのケースに対して最善な回答となっていない場合がある点を予め御了承願います。
また、本書の発刊後、「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説 平成19年3月 国土交通省河川局治水課」が示されました。耐震性能及び照査に用いる地震動、荷重、静的照査方法については、「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説」を参照ください。
正誤表
T 共通編:
第1章 総則
第2章 設計一般
直接基礎の場合に函軸たわみ性構造とするのは設計者の判断でよいか?
最終的には設計者の判断です。しかし、その判断材料としてどれだけの情報量があるのか、またその精度が問題です。剛支持基礎(直接基礎)であっても、種々の不確定要素に対応するため、さらに耐震性能を向上するために樋門本体は柔構造(函軸たわみ性構造)とすることが好ましいと考えます
カラー継手の"発泡ゴム:硬度30程度"の取扱いは?
“発泡ゴム:硬度30程度”は、例として示しています、エラスタイトが使われる例も多いと思います。 カラー継手の目地材は、施工中につぶれてクリアランスを確保することが難しくなり、クラック発生の原因となっているため、別途継手として機能する(弾性挙動する)材料をはさむことが必要です。カラー継手とする場合は、図1-2-17に示した改良型カラー継手に準じて応力分散ゴムを配置するのが望ましいと考えます。

p24,図1-2-2の固結工法以外の固結工法とはどのような工法か?
p27,図1-2-5のセメント系固結工法とはどのような工法か?
固結工法とは、セメントやセメント系改良材等を用いて地盤を固化(改良)する工法と考えています。改良材として生石灰を含めることもあると思います。原地盤を固化することで改良体の応力・ひずみ関係が図-1のようにコンクリートに近い状態に変化するため、改良体(改良部)は地盤としてではなく、基礎(構造物)として設計することとしています。
改良部(基礎)は、一般に沈下(抑制)、安定、支持力、改良体強度について検討する必要があります。
剛支持基礎が好ましくないのは、沈下抑制量が大きくなり基礎の抜け上がりにより堤防機能に悪影響を及す可能性が大きいためです。

残留沈下量5cm以下の場合は、すべて剛支持基礎になるのか?
地盤の残留沈下量の影響を無視できる場合に直接基礎(残留沈下量の影響を考慮しない)とし、無視できる条件として5cmを目安として与えています。このため、地盤の残留沈下量が5cm以下と算定されても、以下のような場合等では柔構造樋門(残留沈下量の影響を考慮する)として検討することが必要と考えられます。
- 地盤の残留沈下量が5cm以下でも、その沈下分布形状等の特性によって樋門本体に与える影響が大きいと判断される場合
- 地盤の残留沈下量の推定精度によっては、実際に生じる地盤の沈下量が5cmを超える可能性が大きい場合(想定される沈下量の範囲において本体の安全性を照査する)
基礎地盤が良質でない条件の場合において、大きな地盤の残留沈下量に対応できる樋門設計を行うことが柔構造樋門の設計理念であるので、地盤対策工によって残留沈下量を残留沈下量の許容値以内に抑制して直接基礎とする場合も広い意味で柔構造樋門に含まれると考えています。
剛支持基礎の場合、継手の検討を行う必要があるか?
沈下の影響を考慮しない剛支持樋門の設計(本体の縦方向の設計:弾性床上の梁)では、継手の変形照査を行ってもあまり現実的ではないと思います。
継手の安全性に不安がある場合は、地盤の残留沈下量を考慮した計算(本体の縦方向の設計:地盤変位の影響を考慮した弾性床上の梁)を行い、継手の変形状態に対応できる継手構造とする必要があります。
剛支持樋門と柔支持樋門に分ける必要性、理由はなにか?
本来、地中構造物である樋門はすべて柔構造樋門とすることが望ましいが、柔構造樋門の本体の縦方向の設計(地盤変位の影響を考慮した弾性床上の梁)では、地盤の残留沈下量が小さくなると設計精度に課題があるため、地盤の残留沈下量が小さい場合についてのみ、従来の設計法(弾性床上の梁)によることとして区分している。
「柔構造樋門設計の手引き」p24、2)に構造の形式について、堤防に関してからすると、沈下に追随できる柔構造にするべきと思われるが、「特殊な場合を除いては」剛支持樋門(杭基礎形式)とすることが可能か?
現在、軟弱地盤上に計画しているが、沈下量が約50cmほどあり、単純に地盤改良と杭基礎とを比較した場合、杭基礎のほうが経済性に優れているため判断に困っている。取水樋門として計画しているが、取水樋門になるから特殊な事情として杭基礎形式で構わないと解釈してもよいか?
樋門の構造については、「河川管理施設等構造令及び同令施工規則の運用について」と題する通達で樋門の構造が規定されています。 (改訂解説・河川管理施設等構造令、(社)日本河川協会、平成12年、p421参照)。
これには、樋門の構造について、”(1)杭基礎以外の構造とすること”、”(2)原則として柔構造樋門とすること”が示されています。
したがって、取水樋門や経済性を理由として杭基礎を採用することは原則として認められないと思われます。
固結工法とは具体的にどうゆう工法か?
固結工法とは、セメントあるいはセメント系固化剤を地盤と混合して地盤を改良する比較的長尺なセメント系地盤改良工法を指し、代表的な工法として深層混合処理工法が該当します。支持層に着底させない深層混合処理工法による改良地盤の基礎形式は、浮き固結工法基礎(あるいは浮き固化改良体基礎)と呼んでいます。
なお、表層混合処理工法もセメント系改良工法に分類することができますが、改良深さが1.0m程度と小さい場合は、固結工法に含めなくてよい(固結工法以外に該当する)と考えています。
「7.4.4 地盤改良工法の選定」に固結工法に含まれる工法があるか?
深層混合処理工法および生石灰パイル工法が該当します。

剛支持基礎の場合には、従来型カラー継手しか選択肢はないか?
従来型カラー継手は、地盤変位に対応できないので残留沈下がほとんど生じない場合を除いて使用しない方がよいと考えています。従来型カラー継手とする場合も改良型カラー継手に準じた配慮が必要と考えます。
函軸たわみ性構造は、函体材料と継手の組み合せで対応できる沈下量が決まると考えてよいか?
函軸たわみ性構造の検討において、函体材料と継手の組み合せは基本的な要素です。加えて、スパン長、地盤の残留沈下量分布およびキャンバー盛土に対する適合性等も検討項目として重要です。
第3章 荷重
U形翼壁の設計土圧は、道路土工に準じて主働土圧としてよいか?
樋門のU形翼壁は、部材厚が比較的大きく、規模が小さいもの(壁高が小さいもの等)が大部分であり壁体のたわみが非常に小さく滑動も拘束されていること、静止土圧係数は土質や締固めの方法によって0.4〜0.7の値に変動する(土工指針参照)こと、水位変動等による大きな繰り返し荷重が作用する場合が多いこと、背面土として現場発生土(粘性土の静止土圧係数は砂質土より大)を用いることが多いこと等を考慮して静止土圧で設計することとしています。
第4章 使用材料
p71にガス圧接に用いるとしてSD295BとSD355が示されているが、現時点においてSD295Aも圧接に用いてよいか?
SD295Aについては、「道路橋示方書・同解説 W下部構造編、平成14年3月」“p156 (2) ”の記述に準拠します。
すなわち、SD295Aを圧接に用いる場合は「事前に溶接性や要求される圧接鉄筋の性能に問題がないことを確認する」必要があります。また、発注者の承諾を得ることも必要と思います。
このようなことから、圧接に用いる場合はSD295B、SD345を用いるのがよいと思います。
第5章 基礎地盤の検討
地盤の変形係数EsとE0を区別する理由?
地盤の応力ひずみ曲線は、非線形となる(地盤が完全弾性体でない)ため、使用するひずみレベルに応じて変形係数(弾性係数)を使い分けます。
Es=7N{700N}の理由と根拠?
Es=7N{700N}は、ひずみレベルが比較的大きい場合の地盤の変形係数として一般的に用いられており、道路橋示方書下部構造編のE0とαの値(「柔構造樋門設計の手引き」でも同じ)の他の試験との関係からも700Nが含まれているのが解ると思います。 N値と変形係数の関係(Es=700N)については、地盤工学会の地盤調査法、平成16年版に以下の記載がございます。
〔地盤調査法 平成16年版(地盤工学会)より抜粋〕
孔内水平載荷試験から得られた変形係数Eと標準貫入試験のN値の関係については、吉中の先駆的研究を始め、両者を比較した例は多い。図-6.9.2はその一例であり、地盤材料に関わらずE=700N(kN/m2)という関係が近似的に成立している。

換算変形係数を求める際の「開削幅」と「堤体幅」の記載順(p80)が増刷版(第1〜3刷と第4刷以降)で逆になっているが、載荷幅を堤体幅、載荷奥行を開削幅とするのか?
ある指摘からp80の記述をご指摘のように一部修正しましたが、多様な条件に対応するにはこの記述では不十分と考えています。 質問に関する基本的な考え方は、以下のとおりです。
- 影響を調べなければならない深さ3Bは、矩形基礎と考えた場合の短辺の幅Bを基準とする。
- 沈下の影響を考慮する深さは、3Bは最小限の深さと考えて軟弱層の深さを優先する。途中で十分な厚さの固い層がある場合は、その層の上面までとするのがよい。
- 載荷幅Bに比べて載荷奥行Lが特に長い場合にLを適切な範囲に抑えるのがよいと考えています。その長さについては、10mとする考え方もあります。
なお、BとLを取り違えても結果(換算変形係数)は変わりません。
影響を調べなければならない深さは上記のように短辺の幅を基準に考えます。これより、新設盛土等の条件では堤体幅の3倍以上の深さとすることもあると思います。堤防盛土の様々な形態を考慮して、盛土荷重によって沈下が生じる深さを検討する必要があります。
p83、図1-5-2の「C(上載荷重)は必要に応じて考慮する」はどういった状況のことか?
また、即時沈下計算時に考慮する荷重の説明で全荷重(p83)と盛土等(p84)の違いは?
樋門の設計荷重として考慮する上載荷重(活荷重)の大きさは、条件によって判断する必要があります。上載荷重(活荷重)を本体の縦方向の設計に考慮する方法としては、沈下計算に考慮する方法(本体には地盤変位として載荷)と本体の縦方向の計算で荷重として載荷する方法の2つの方法があります(p110、表1-7-2参照)。両方に考慮すると荷重をダブルカウントすることになりますので、「C(上載荷重)は必要に応じて考慮する」としています(p83、図1-5-2)。また上載荷重は、圧密沈下計算に考慮することがありますが、即時沈下計算には考慮しないのが一般的と思われます。
即時沈下計算時の荷重は、p83の@に示したように床付け面より上の盛土(埋戻し土を含む)の全荷重です。p84の盛土等とは、埋戻し土を含むこの全荷重を指しています。

新設堤防に設ける樋門設計において、堤防の余盛り高を考慮する必要があるか?
柔構造樋門は、地盤の残留沈下量を地盤変位荷重(主荷重)として考慮するので、地盤の残留沈下量の推定に影響する条件を考慮する必要があります。実際の堤防盛土で施工される堤防の余盛りは、沈下計算に考慮する必要があります。
即時沈下の計算に重量の重い門柱部の荷重は考慮しなくてよいか?
圧密沈下の計算に上記と同様に重量の重い門柱部の荷重は考慮しなくてよいか?
地盤の残留沈下量(即時沈下+圧密沈下)の算定において、通常は門柱部の荷重を考慮しなくてもよいと考えています。ただし、床付け面が特に軟弱な地盤の場合や、門柱が特に重い場合ではその影響を考慮することがよい場合も考えられます。
一般に函体はその排土重量より軽く、函体に結合する門柱部は胸壁底版によって拡幅されていること、門柱部を含むスパン全体が一体的に挙動すると考えられること等から門柱部が地盤へ与える影響はそれほど大きくないと思います。
なお、門柱部が軟弱地盤上に位置する場合は、施工時の地盤の支持カを照査するとともに、施工時のトラフィカビリティの確保等も考慮して地盤対策(表層改良等)の必要性を検討する必要があります。
側方変位を考慮しなくてよい考え方はあるか?
側方変位量は、即時沈下と同様に原則として常に考慮すべきであると考えます。
即時沈下量の算定は「即時沈下が卓越する土層までの深さを対象とし・・・算出する」(p84)とある。この卓越するとは具体的にどのような状態か?
また、即時沈下量は、施工時に終了すると考えてもよいか?
卓越するとは、即時沈下の発生が無視出来ない大きさになるという意味です。即時沈下を考慮する深さは、一般的に載荷幅(短辺幅)の3倍以上(p79参照)の土層を対象とした検討が必要です。
具体的には、盛土荷重による地中応力が及ぶ範囲にある比較的強度の小さい土層(硬い層の上面まで)を検討対象とします。圧密沈下を考慮する土層がある場合は、即時沈下の検討も同等の深さとする例が多いと思います。
即時沈下量は、荷重の載荷直後(盛土施工直後)に終了すると考えるのが普通です。
即時沈下の計算において軟弱層が床付け面より30m程度(載荷幅の5倍)確認されている場合、全軟弱層を沈下対象層としてよいか?
盛土荷重による地盤内応力の及ぶ深さは、盛土荷重の形状によって異なりますが、この地盤内応力によって無視できない沈下を生じる深さまで考慮すべきと考えます。載荷幅の5倍程度の範囲まで軟弱層がある場合は、この軟弱層全層を考慮するのがよいと思います。
地盤の沈下を算出するにあたって地下水位が床付け面より高い場合、地下水位による浮力を考慮しなくてよいのか?
地盤の沈下を算出するにあたっては、地下水位に限らず以下に示す事項等についても検討し、沈下の予測精度を向上させることが必要です。
- 余盛り盛土の分布形状
- 置換する場合は、置換土と自然地盤との土の単位体積重量差
- 荷重として考慮した盛土(湿潤重量)が地下水位以下に沈下することによる浮力(水中重量)の影響
- 堤防天端高を確保するために堤防が沈下した分を追加する盛土による影響
この影響は、地盤の沈下量が大きい程大きくなるので沈下計算を行う場合に検討する必要がある。ただし、地下水位の変動を考慮することが重要である。
側方変位を考慮する条件とは?
樋門のような地中構造物においては、周辺地盤の変位・変形が支配的な荷重です。このため、柔構造樋門では、原則として側方変位量は考慮すべきです。
側方変位量は、即時沈下と同様に地盤を弾性体と見なして算定することとしています。弾性体は荷重を受けるとせん断変形〔鉛直方向に圧縮変位する(即時沈下に相当)と同時に水平方向へ膨らむように変位(側方変位に相当)〕します。側方変位量はこのような地盤の弾性的な水平変位です。
側方変位量が大きい場合は、本体縦方向に引張軸力が発生し、本体が水平変位するので継手が開口が大きくなるなど特に継手に悪影響が生じることが予想されます。
側方変位量は、本体の縦方向の設計法である「地盤変位の影響を考慮した弾性床上の梁」および「弾性床上の梁」において函軸方向変位として取り込む(入力する)ことで本体の設計に考慮します。その結果は、本体の軸力、函体の水平変位、継手の開口などに反映されます。
第6章 構造の基本
樋門の沈下を許容する場合に断面の余裕で対応するとは、沈下が5.0cm以下の直接基礎にも適用するのか?
函体断面には、樋門の沈下の有無によらず余裕高を考慮する必要があります(河川管理施設等構造令の解説参照)。樋門の沈下の影響は発注者と協議の上、この余裕高に含めて検討するのがよいと思います。5.0cm以下の沈下量の扱いは、その影響度(不等流計算等により)を考慮して判断して下さい。
本体と翼壁の接続部の変位差が大きいとはどの程度のことをいうのか?
また、本体と翼壁の接続部の変位差が大きい場合の対策はどのように考えるか?
変位差が大きいとは、一般的な止水板では対応が難しいと考えられるような変位量のことであり、使用する止水板によって許容値は異なります。また、本体と翼壁の接続部の変位差によって生ずる悪影響(止水板破断、空洞化等)の可能性も考慮する必要があります。
このような変位差は、基礎地盤面付近に軟弱層がある場合に多いように思われます。このような変位差(段差)が生じることが予想される場合の対応策として、@ダウエルバーで段差を抑える(空洞化に注意)、A予め翼壁部の敷高を本体より低く計画する、等が考えられます。
柔構造樋門設計の手引きp101下から4行目より抜粋「堤内側支川または水路の河床と本川の河床との落差が大きい場合には、常に内水が堤外に浸透し、ルーフィングの原因となることがあるので、その対応に配慮が必要である。」について質問したいと思います。
堤内側水路は土水路を対象としているのですか?堤内側水路が三方張(浸透の恐れがない)の場合は配慮の必要性がないと考えるのですか?
○浸透流に対する安全性について(p101の記述の主旨)
河川堤防に設けられる樋門と堤体の境界部では、浸透流が卓越し水みちが形成され堤防の弱点箇所となりやすいため、必要な浸透経路長を確保するためにしゃ水工(うなぎ止め)が設けられます。しゃ水工のパイピング(土と構造物との接触面に沿うパイピングはルーフィングと呼ばれる)防止については、「しゃ水工の設計」p188でレーンの加重クリープ比による方法により基準値を下回らないよう設計することとしています。この検討では、本川HWL時に堤内への浸透流を対象としていますが、この時の水位差は、一般に堤内外で考えられる最大の水位差になると想定しています。
しかし、浸透流によるルーフィングは、水位差が大きくなくとも長期間に渡って作用する地下水流、内外水位差、潮位差等により浸透経路(水みち)が形成されることがあります。このため、平常時(HWL時以外)においても、必要により浸透流の影響に対する安全性確保について配慮しなければならないことがあります。
三面張水路だから、その配慮の必要性がないとは言えません。地下水位が高い場合には、三面張水路に沿う浸透流が問題になる可能性があります。
しゃ水鋼矢板は底版に10cm貫入し、ヒゲ鉄筋を溶接して脱落を防止するとしている(p102)。
現場で貫入長が10cm以下の場合、その効果がないものか?
しゃ水鋼矢板の脱落防止措置は、応力状態を考慮して決めたものではありませんので溶接長が10cm以下でも脱落防止効果はあると思いますが、しゃ水鋼矢板の底版への貫入長が10cmより非常に小さい場合は、ひげ筋の溶接長として10cm以上確保できるように折り曲げて溶接すればよいと思います。
10cmとは配筋を考慮したものか?
10cmは、配筋に影響がないことを考慮しています。
しゃ水矢板のヒゲ鉄筋の長さは、鉄筋の定着長の計算式より求めることでよいか?
ヒゲ鉄筋の長さは鉄筋の定着長以上とするのがよいと考えています。定着長の算定式は以下に示します。

しゃ水鋼矢板の影響は、具体的にどういう条件のときに、どのように設計に考慮するのか?
しゃ水鋼矢板の影響は、柔構造権門のスムーズな沈下追随性を阻害する要因となることがありますので、可能な限りこの影響を設計に考慮することが望まれます(参考資料参照)。
高水敷保護工と護床工の設置範囲について、「柔構造樋門設計の手引き」p104では、堤防側から河岸防御ラインの範囲までとされていますが、「河川計画検討の手引き」p167に記載されている堤防防御ラインのことを示しているような気がします。
「河川計画検討の手引き」によりますと河川防御ラインには堤防防御ラインと低水路河岸管理ラインの2種類があり、堤防防御ラインは堤防の高水敷の保護範囲であり、低水路河岸管理ラインは低水路河岸の保護する範囲を示しているものと判断されます。
以上を踏まえて高水敷保護工護床工の設置範囲をご教示下さい。
河岸防御ライン(低水路河岸管理ライン)より低水路側の高水敷保護工および護床工については、必要に応じて設けるという考え方です。取付水路出口は侵食を受けやすいので一般堤防区間より浸食に対する安全性に配慮する必要があると考えています。
第7章 樋門の設計
図1-7-9(p127)において、キャンバーの変化点で継手を1ヶ所とする場合でもキャンバー盛土となるか?
キャンバー盛土は、想定される沈下量に対して本体を上げ越し施工することで、本体の沈下量を軽減する等(下記参照)を期待するものなので、この意味では継手の数を問いません(1スパンの樋門でも可能)。しかし、キャンバー分および残留沈下量が沈下した後の本体の沈下状況を考慮して樋門の機能に支障のないキャンバー盛土を設計する必要があります。継手の位置については、別途検討して決定する必要があります。
○キャンバー盛土の効果
- 樋門本体の施工時の設置高を上げ越し施工することで、本体の敷高が計画高より下がることを抑制する。
- 樋門本体の施工時の設置勾配を、地盤の沈下終息時に本体計画勾配となるように設定することで、逆勾配とならないようにする。
- 樋門本体の施工時の設置形状を、残留沈下量分布に対応するように設置することで、本体の不同沈下を抑制し、本体に発生する断面力を低減する。また、継手部の変位・断面力を抑制する。

プレロード盛土の載荷範囲の目安(図1-7-13)でB+2H or B十Dとあるがどちらを採用すべきか?
プレロード盛土は、本体盛土による地盤内応力分布と同等以上となるような範囲とするのが理想です。このため、載荷範囲は地盤内応力の分布を考慮して検討する必要があります。図1-7-13による場合は、大きい方を採用するのが望ましいと考えますが、あくまでも目安です。盛土範囲の制約がある場合は、盛土高さを大きくして補うことも考えられます。

沈下板(3ケ所)をプレロード盛土のセンターに計画したが、設置位置の基本的考え方はあるか?
設置位置の考え方は特にありませんが、プレロード盛土による函軸方向沈下分布を把握しておくことが樋門設計時に残留沈下量の検討を行う際に(強度増加等の検討で)必要になると思いますので、沈下板3ヶ所は少ないと思います。できれば5ヶ所以上が望ましいと考えます。
プレロード盛土の沈下板設置で地層が傾斜している場合に考慮する事項はあるか?
上記のように樋門設計(地盤の残留沈下量および沈下量の分布の推定)で必要とする情報を動態観測で得るという視点に立って設置位置を検討してください。
ダクタイル鋳鉄管の周辺土の転圧方法について
・締固めの善し悪しの影響は?
・クッション材は締固めるのか?
円管(ダクタイル鋳鉄管等)の管側面下側の締固めは、機械施工が困難であるので一般に突き棒等による人力施工になると思います。(堤防では良質な砂を用いた水締めの採用はひかえるべきです。)
ダクタイル鋳鉄管等の断面たわみ性管は、断面がたわむことによって生じる周辺土の抵抗反力を期待するので周辺土の締固めは重要です。周辺土の締固めが不十分な場合は、断面たわみが大きくなり、発生断面力が大きくなると想定されます。
クッション材は、設計支持角を確保するために十分締固める必要があります。ダクタイル鋳鉄管の管厚計算では、管側面の土質および締固め度を規定していませんが、断面たわみ性管の特性を考慮すると管の側面の土の影響も大きいと考えられます(銅管の管厚計算手引きp145を参照)。したがって、基床部を含む管周辺土は、締固めを十分に行うように配慮する必要があります。
弾性床上の梁モデルは、函体図心位置でよいか?
函体図心位置とするのがよいと思います。
函体端部拡幅部の断面定数、拡幅形状は反映する必要はないか?
函体スパン部を剛体モデル(p150、153参照)と仮定すれば、函体標準部と拡幅部の断面定数(剛性)の区別はないことになります。弾性梁モデルと仮定すれば函体標準部と拡幅部の剛性を考慮することが可能です。
拡幅部の形状(胸壁を含む全幅)の影響は、地盤反力係数に載荷幅を乗じる等で考慮します。
しゃ水鋼矢板の影響について、砂質土の場合のすべり係数Csの推定法はあるか?
鋼矢板と周辺地盤のすべり係数Cs(p159)は、砂質土および粘性土に適用することができると考えています。p159の記述は、砂質土に比べて粘性土の方がバラツキ(誤差)が大きいという意味です。
地盤変位(側方変位)等価荷重の算定には、函体周長あるいは函体幅のいずれによるのがよいか?
函体周長とするのが基本と考えています(p150基本式参照)。函体周面は、基礎地盤に接する部分と埋戻し盛土に接する部分に大別されるため、それら考慮して水平方向せん断地盤反力係数を設定するのがよいと思います。
良質地盤における地盤変位等価荷重が、土かぶり荷重に比べて大きくなるのは現実的ではない?
沈下量が十分小さい場合は、「地盤変位を考慮した弾性床上の梁」モデルは適用性に課題があるので、「弾性床上の梁」モデルを適用するのが妥当と思われます。
本体の縦方向の設計において、しゃ水矢板の先端が固い層に入っていない場合でも、設計に考慮する必要があると解釈してよいか?
本体の縦方向の設計では、しゃ水矢板の影響について必ず検討する必要があります。
しゃ水矢板の影響により本体の設計に大きな影響がある場合等では、函体底版としゃ水矢板の接続部を可とう性構造(U形可とう矢板)として矢板反力を吸収することで、本体の設計にはしゃ水矢板の影響を考慮しないことがあります。
側方変位量は、どのように設計に反映させればよいか? また、側方変位量が函軸直角方向に影響がないことをどのように評価すればよいか?
既往の全国樋門変状調査結果において、本体の変状として継手部の開口や止水彼の破断の頻度が高く、その原因として地盤の側方変位の影響が大きいことが把握されました。
側方変位量は、本体の縦方向の設計(p150〜)において残留沈下量を地盤変位の影響(沈下)とすると同様に、側方変位量を地盤変位の影響(函軸方向の側方変位)として設計に考慮することができます。
本体の縦方向の微分方程式に示すように函軸直角方向と函軸方向とは各々独立です。一般に(1-7-10、1-7-11)式で計算します。
本体の縦方向の計算に側方変位量を考慮した結果は、函体の函軸方向の断面力・変位に反映され、継手部の変位(開口等)として得られますので、側方変位量の大きい軟弱地盤において問題となる継手の開口量を評価することが可能となります。
継手の種類によって、許容変位量(開口、目違い、折れ角)が異なるので、本体の縦方向の計算結果として得られる継手部の変位が、使用する継手の許容値以内であるかを照査します。
側方変位は函軸方向荷重なのに図1-7-17で鉛直方向に描かれているのはどうしてか?
側方変位は、外向きの水平方向(函軸方向)荷重になります。図1-7-17は水平方向に描くと見難いため便宜的に鉛直方向で表現しています。
側方変位を水平力として作用させる場合は、どのように累加するのか?
側方変位量は、残留沈下量と同様に扱います。側方変位量の計算結果は、その地点の複数の等分布荷重による変位量の累加値として計算されます(質問にある図も累加値として算定されています)。本体の縦方向の計算には、一般的にこの値(地盤変位荷重)を適切な変化点毎に台形分布に区分して函軸方向(水平方向)に作用させます。
本体の縦方向の設計における胸壁荷重の考慮方法は?
胸壁の荷重は、T共通編p151、p153の図に示すように、胸壁位置における鉛直力(自重、背面土量等)、水平力(土水圧)および函軸(梁モデル軸線)に対する(水平力による)曲げモーメントとしてモデル化するのが一般的です。

本体の縦方向の計算(地盤変位の影響を考慮した弾性上の梁)において函体上の土重は考慮すべきか?
土重を考慮しない場合、胸壁の作用力は自重、土圧のみ考慮すればよいか?
地盤変位の影響を考慮した弾性上の梁による本体の縦方向の計算には土重(鉛直土圧)を考慮しません(p110表1-7-2参照)。
本体の縦方向の計算に考慮する胸壁の影響としては、自重、土圧に加えて、土圧合力と梁モデル(一般に図心位置)との偏心による曲げモーメントを考慮します(p153図1-7-17参照)。

函体縦方向の計算において、「柔構造の手引き」p155の計算条件の内とについて質問があります。
"地盤変位の影響"については沈下量等の計算において、堤体の土重等を使用して沈下量を求めその沈下量から荷重換算を行い縦方向の計算に反映させていますが"Fその他の外力"にさらに土重も考慮すると明記されております。
この土重については、函体上面の築堤盛土部であるとは判断できますが、この考えではEとFの条件において、土重を2重に考慮した計算とならないのでしょうか?
図1-7-17の設計モデルに示すように地盤変位(沈下)以外の荷重として門柱・胸壁等による荷重があり、Fの土重、土圧等としては、胸壁底版上部の土重や「耐震設計編、3.4地震時土圧」において考慮する鉛直土圧等があります。函体上部の築堤盛土は、地盤変位の影響に考慮されているので、Fの土重には含まれません。

函体縦方向の部材計算において函体をT形断面にモデル化し単鉄筋で設計する(p163)とあるが、BOX断面としてモデル化し、複鉄筋あるいは全鉄筋で設計すれば経済的である。柔構造樋門の場合に前者とする方法が望ましい理由があるか?
部材設計の原則は、「7.6.5.1 鉄筋コンクリート構造」(p162)の枠書きのように鉄筋コンクリート部材のコンクリートおよび鉄筋の応力度を許容応力度以内とすることです。解説のT形断面のモデル化については、従来から標準的に用いられている考え方(簡便法)を示しており、BOX断面としてモデル化することを否定するものではありません。現在は、部材計算を計算ソフトで行うのでBOX断面としてモデル化することが多いのではないかと思われます。
柔構造樋門だからT形断面にモデル化する方法が望ましいとする理由は、特にありません。
T形断面の中立軸を求めるp163の計算式(1-7-13)で実線幅bは、図1-7-21のBではないか?
bは、記号の説明でフランジ幅としているように、図1-7-21の矩形函体のモデル化ではBに相当します。 本式は、T形断面の場合の中立軸の位置を求める一般式であり、函体をT形断面、矩形断面のいずれとして扱うかの判定を目的として示しています。したがって、この式から求まる中立軸の位置は、矩形断面には適用できませんので、中立軸が底版(フランジ)内にあるときは、矩形断面の中立軸の位置を別途求める必要があります。
p163の矩形函体の断面計算において「中立軸が頂版または底版内にあるときは、矩形断面とする。」とあるが、せん断応力度の算出も矩形(フランジ幅×有効高)断面で計算してよいという意味か?
せん断力応力度については、確実に期待できるコンクリート断面積で算定する必要があります。


PC函体の場合、複数の函体ブロックを一体化するために管軸方向に導入する緊張力について、「柔構造樋門の手引き」p165に「安全性を考慮して接面応力の最小値を0.5N/mm2とする。」との記載があるが、本事項は、設計最低条件として取り扱って構わないものかどうかご教示願います。
現在実施しているものについては、あくまで設計上の必要接面応力を確保するのみとしているものもある。
なお、橋梁のセグメント桁の場合も、設計上の必要接面応力を確保するのみとしており、最小値の設定はしていないとのこと。
「最小値0.5N/mm2」というのは、結構大きい値ということで、これを最低値として確保すべきかどうかということについてお聞かせ下さい。
本書の函体ブロックの接合部の最小面圧(p165)については、地盤の残留沈下量の推定精度が十分でない場合でも接合部の水密性を確保するために0.5N/mm2を設定しています。その趣旨は「土木構造物設計マニュアル(案)樋門編」の解説において下記のように記述されています。
「土木構造物設計マニュアル(案)〔樋門編〕、3.2 プレキャスト函渠の接合」より抜粋
(1)接合部は、プレストレス接合によることを標準とし、水密性を確保するために設計荷重作用時において必要な圧縮応力を確保する。 必要な圧縮応力を確保するとは、接合部の最小面圧あるいは接合部に挟まれた材料の最小面圧を、設計内水圧(あるいは外水圧)に余裕量を見込んだ値以上とすることである。 |
最小面圧0.5 N/mm2は、接合部の水密性を確保するために設定されたものであり、“設計水圧に応力余裕量を加えたもの”ですが、応力余裕量の妥当性については、現段階では十分には評価できるデータが蓄積されているわけではありません。一方で、本体の縦方向の設計断面力は、必ずしも十分な精度が確保されていない事例が少なくないことも事実です。
応力余裕量は、地盤の沈下量分布と地盤反力係数の推定精度に大きく依存します。地盤条件が良好で地盤の沈下量が少ないと想定される場合にも、地盤反力係数が大きくなるので、本体の縦方向には大きな断面力が発生することがあります。
このため、応力余裕量に十分な安全性を確保することが望まれると考え、現行の「柔構造樋門設計の手引」では、最小面圧を0.5 N/mm2としました。これは基本的に設計水圧(通常0.1〜0.15 N/mm2程度)に対して、応力余裕量(通常0.35〜0.40 N/mm2程度)を見込んでいることになります。
質問におけるアンダーライン部の主旨は、「“設計水圧のみを考えているものがある”が、応力余裕量を見込まないで良いか」ということと理解しますが、樋門では上記のように応力余裕量を見込むのが基本であると考えます。
橋梁の場合には、外力条件等の設計条件が明確であり、接合部に発生する応力の推定精度は十分高いと考えられます。一方で、樋門のような地盤条件が複雑な地中構造物では、接合部に十分な応力余裕量をとる(ただし、その余裕量については?)ことで、その安全性を確保するが重要であると考えています。
(注)ここで、剛接合方式とは函体ブロック間を“無収縮高強度のモルタル接合”とする構造を前提として記述しております。
胸壁の設計について
- 縦壁の主鉄筋は土圧側だけでよいのでは?
- 底版の地盤反力は、自重・土重でほとんど相殺されるのでは?
- 底版の前趾の土重は考慮しなくてよいか?
胸壁の配筋は、ダブル配筋とするのが普通です。計算は単鉄筋として単純化する場合もあるでしょう。 胸壁底版の反力は、本体の縦方向の計算より求められる地盤反力です。この地盤反力は、地盤の沈下分布と函休の沈下の相対関係で決まります。自重・土重で相殺されると考えるのは間違いです。配筋にあたっては、本体底版の横方向の主鉄筋に合わせるなどの配慮も必要です。
胸壁の設計では、胸壁前面が洗掘された場合を想定して胸壁の根入れや受働土圧などの抵抗を期待しません。
胸壁の設計について
胸壁の構造計算について、胸壁を本体と一体の構造と考えれば胸壁単体では地盤反力の照査はできないと考えます。仮に胸壁単体において地盤反力の照査を行ないますと、縦壁の1/2程度の底版幅では偏心量が大きくなり、地盤反力の許容を大きく超えることになります。
地盤反力の照査という事項は、樋管全体においての地盤反力を照査すればよいか。
胸壁は本体と一体構造であり、本体の縦方向の設計で胸壁の底版(幅、長さ)を考慮した計算を行い、@本体と地盤との相対変位およびA地盤反力を算出します。
@を用いて地盤支持に対する安定の照査(p237)を行います。
Aを用いて胸壁底版の部材計算(p181)を行います。
以上で胸壁部の地盤支持に対する安定は、照査済ということになります。
なお、浮き直接基礎では地盤の支持力照査(地盤の許容支持力に対する照査)を省略できる(p236)としています。
門柱部函体の補強範囲の考え方は?
門柱部函体の補強範囲は、門柱部の安全を確保するに必要な範囲ということになります。一般に胸壁底版幅と同じにするのが普通です。
胸壁底版幅は、本体と一体構造としたことからその決定根拠は明確でなくなりました。このため、「柔構造樋門設計の手引き」では従来構造との整合性等を考慮して、あまり小さい底版幅は好ましくないので底版幅の一般的な目安として1/2H以上としています。

胸壁のたて壁と翼壁を一体構造としたいがどうか?
翼壁を樋門本体と分離構造とするのは、翼壁が洪水で流失した場合でも樋門本体へ影響しないこと、堤防の崩壊は胸壁等によって防止(胸壁の機能)して樋門および堤防機能が損なわれないことを期待した措置です。
以上を考慮して検討してください。
「手引き」p187の表1-7-13翼壁の安定照査条件について、
1)「揚圧力考慮」とは、「水の影響を考慮する(静水圧)」としてよいか。
2)常時の場合は「水の影響を考慮しない」としてよいか。
3)上記2)と同様に地震時の場合は、「水の影響を考慮しない」としてよいか。
表1-7-13は、常時で「揚圧力考慮」を考慮する場合は地震時と同等の照査条件とすることを示したものです。
水の影響(静水圧)は、ケースを問わず考慮するのが一般的と思います。
揚圧力の作用については、p55の記述によって下さい。
翼壁の支持力照査は、地盤の許容支持力と弾性変位量の照査の2つの方法をどのように適用するのか?
翼壁の支持力照査は、破壊モードを考えて選定します。すなわち底版後趾から支持力破壊(全般破壊)するのか、底版前趾または後趾の直下地盤の一部が塑性化するのかの判断です。
一般に翼壁では荷重レベルは大きくなく、柔構造樋門では良質地盤が少ないため弾性変位量で照査することが多いと考えられます(U基礎構造編参照)。
鉛直方向のしゃ水矢板は、川表側だけで加重クリープ比を満たしている場合でも川裏側の翼壁にも設ける必要があるか? あるとすればその理由は?
川裏側の翼壁にも必ずしゃ水矢板を設ける必要があるか否かは、条件によって判断が異なると思います。取り付く支川(水路)による洗掘のおそれがある場合は設ける必要があると思います。
また、「解説・河川管理施設構造令p228、(5)その他」、に記述があるように常時支川側の水位が高く、支川側から本川側への浸透(内水の漏水)の影響も無視できないことがあります。
p188の「しゃ水壁および胸壁から最低でも2m程度確保することが望ましいが‥」、および「堤防開削幅を大きく切り込んで設ける必要はない」の意味は?
p188の下段の解説は、水平方向のしや水工の範囲についてのもので、以下のような意味になります。
→「しゃ水壁および胸壁から最低でも2m程度確保することが望ましいが‥」について
浸透流は水平方向が卓越する性質があるので、鉛直方向にのみしゃ水矢板を設けた場合では、水平方向に浸透流が回り込むことになるので鉛直方向の最低長2mと同程度の長さを水平方向にも設置するのがよいと考えます。
→「堤防開削幅を大きく切り込んで設ける必要はない」について
堤防開削面まで延長する水平方向のしゃ水工は、開削面に沿って流れる浸透流を遮断することが主目的です。堤防開削面における浸透流は、本体周辺の境界面を流れる浸透流とは異質であり、埋戻し土の土性(締固め度の違いを含む)が既設堤防土と大幅に異なることは、通常はあり得ないので、堤防に悪影響を与えないためにも開削面を必要以上に大きく切り込まないで対処するのがよいと考えます。
図1-7-41(p190)において水平方向のしゃ水矢板は、加重クリープ比を満たしている場合でも川裏側の胸壁、しゃ水壁、翼壁に最低2mを設けるのか?この場合の2mとはどの範囲か?
川裏側の水平方向のしゃ水工を開削面まで延長しないのは、しゃ水工によって堤体内に浸透流を滞留させることで堤防に悪影響を与えないためです。
川裏側の水平方向のしや水工の最低長2mとしているのは、2)で述べた理由によります。2m程度では、浸透流を滞流(あるいは堰上げ)する働きは少ないと考えています。
胸壁部に設けるしゃ水矢板は、川裏側であっても翼壁が流失・洗掘等によってその機能を果たさなくなったときに洗掘防止、堤体土の吸い出し防止としての機能を受け持つことになりますので、この機能を考慮する必要があります。
水平方向に設ける2m程度のしゃ水矢板は、胸壁、しゃ水壁の端部からの長さを考えております(翼壁には考慮しない)。
水平方向の加重クリープ比の検討における対象土は何か? 埋戻し土(購入土)が対象となり、しゃ水矢板を必要としなくなった場合でも開削面まで延長するのか?
水平方向の加重クリープ比の検討対象土は、基本的には基礎地盤としてよいと思いますが、堤体土のパイピング抵抗性に課題がある場合には、堤体土で検討する必要があります。
加重クリープ比による検討結果に関わりなく、しゃ水矢板の最低長を設置するべきですが、既設樋門の撤去と新設樋門の構築を同時に施工するため開削幅が大きくなる場合等で、水平方向に開削面まで延長することについて、十分な検討によってその必要がないと判断されれば延長する必要はありません。
なお、最低長2mについては、従来の数値を踏襲したもので、定量的な根拠を有しませんが、加重クリープ比の計算は、あくまで平均動水勾配で評価するものであり、しゃ水矢板1ヶ所当りで評価していないため、部分(1ヶ所当り)の安全性を確保するために必要と考えています。
しゃ水工の浸透経路長の水平距離の取り方において、「柔構造樋門設計の手引き」(p190)で図示されている樋門底版下面を通る浸透経路以外に川表側の本体側壁から浸透する経路等は考えないのか?
河川堤防に設けられる樋門と堤体の境界部では、浸透流が卓越し水みちが形成され堤防の弱点箇所となりやすいため、必要な浸透経路長を確保するためにしゃ水工(うなぎ止め)が設けられる。しゃ水工のパイピング(土と構造物との接触面に沿うパイピングはルーフィングと呼ばれる)防止効果については、レインの加重クリープ比による方法により基準値を下回らないよう設計することとしている。
レインの式は、多くのダム・堰・落差工等の直接基礎の浸透(パイピング)に関する調査から導かれた考え方であり、平均導水勾配と浸透経路長に基づく経験式で簡便法であるが、他に適切な方法がないため河川構造物等のしゃ水工の検討に用いられている。この式では、ルーフィングが発生し易いと考えた構造物底面と地盤の間に卓越する浸透流の経路を対象としている。
樋門においても、このような潜在的に浸透流が生じ易い経路として空洞が発生し易い本体構造物の底面を取って検討することとしており、堤防開削調査等でも構造物の底面が浸透流の経路となっていることが確認されている。
浸透経路としては、質問のような本体側壁から浸透する経路も考えられるが、さらには最短経路として前面のしゃ水矢板の直下を回り込まずに胸壁天端背面から本体側壁へ斜めに浸透して底版に達する経路が考えられる。ルーフィングを検討する浸透経路は、最短経路で考えるのでなく、浸透流が卓越するであろうルーフィングの経路(浸透流の流水抵抗の最も少ない経路)を考えるのであって、これまでの河川構造物における被災の実績からも、ルーフィングが構造物底面と地盤の間で発生していることから、これを考えるのが妥当である。特に、樋門では周辺地盤の沈下の影響が大きいので、底版下に空洞が発生し易いことが知られており、この底版下の経路を考えるのを原則としている。
互層地盤の鉛直方向の浸透経路(図1-7-42)p190において矢板の長さの決定方法は?
浸透経路は、浸透流が構造物と地盤の接触面に沿って流れ易いことから底版下面部(函体直下付近)を基本として考えます。互層地盤の場合は、図 1-7-42のような浸透経路を仮定して函体直下付近の浸透抵抗をチェックして安全性を検討する必要があることを示しています。矢板の長さは、以上を考慮して決定して下さい。

プレキャストコンクリートの函体の最小部材厚について
函体の最小部材の規定(p191)で「(2)工場製作のプレキャストコンクリートの最小部材厚は20cm以上とする。」としている根拠は何か?
一般的なボックスカルバート(道路、下水道用)の標準品1000×1000mm、部材厚12cmは使用できないか?
プレキャストコンクリートの最小部材厚20cmについては、緊張材(PC鋼材)を部材厚の中央に配置し、鉄筋のかぶり3.0cm(p192)を考慮した標準的な検討から最小部材厚20cmを提案しています。
樋門用のプレキャスト函体が具備すべき仕様については「土木構造物設計マニュアル(案)〔樋門編〕平成13年12月国土交通省」(インターネットからダウンロード可能)に記述されていますので参照して下さい。
道路用のプレキャストボックスカルバートをそのまま柔構造樋門の函体として用いることは、難しいと考えています。それは、
- 部材厚が薄い場合、大きな緊張力に対する定着部の安全性確保が難しい。
- 接合部をフルプレストレスとする規定を満足することが難しい。
- 鉄筋のかぶり(2.5cm)が小さい。
柔構造樋門は、地盤の残留沈下量分布に応じて生じる樋門本体の縦方向の断面力に対して安全な設計とする必要があります。道路用のボックスカルバートは、このような縦方向の厳しい条件を対象としていません。このため、地盤の残留沈下量等の条件によっては上記のような課題を解決できないと考えられます。このため、道路用のボックスカルバートの沈下を許容する柔構造樋門への適用は難しいと考えています。
場所打ちコンクリートの函体の最小部材厚について
内空寸法B1.2m×H1.5mの函体において「土木構造物設計マニュアル(案)樋門編、国交省」では最小部材厚さを40cmとしているが、40cmとしなければならないか。
「土木構造物設計マニュアル(案)樋門編」は、上位基準である「河川砂防技術基準(案)」の規定内で施工合理化策を検討したものであり、河川構造物の最小部厚は「河川砂防技術基準(案)」により35cmとなっており、「土木構造物設計マニュアル(案)樋門編」も35cmの使用を禁じてはおりません。
「土木構造物設計マニュアル(案)樋門編」の配筋使用で35cmの部材厚とすると配筋が窮屈になるので、当該断面寸法で使用するのは望ましくないと思われます。
「7.14.1.2 函体の最小鉄筋量」p191、p192について
門柱、操作台、胸壁、翼壁等の配筋についても、有効断面積0.2%以上を適用しなければならないか?
柔構造樋門は現在、土木構造物設計マニュアル(案)〔樋門編〕を用いて設計することになっており、この設計マニュアル(案) 〔樋門編〕の配筋仕様を優先して適用するものとします。したがって、p191の函体の横方向の最小鉄筋量の規定は適用しません。最小鉄筋量を検討する場合は、現行の「道路橋示方書W下部構造編」に従って検討して下さい。
この設計マニュアル(案)では、適用範囲内(内空断面3.0m程度以下の樋門)の鉄筋コンクリート部材(函体の縦方向を除く)ではD13ctc250mm以上を配置すれば最小鉄筋量の規定を照査しなくても鉄筋コンクリートとしての最小鉄筋量を満足すると考えています。
192ページ4行目のただし書きは、函体縦方向のみでなく、函体横方向および門柱や胸壁等も対象となるか?
p192のただし書き(必要鉄筋量の4/3以上の鉄筋が配置される場合は、この規定によらなくてもよい)は、函体の縦方向の配筋に関する解説です。「道路橋示方書W下部構造編、平成6年版」の最小鉄筋量および最大鉄筋量に同種の記述があります。これは、函体の縦方向の最小鉄筋量を枠文にあるようにコンクリート有効断面積の0.3%以上としたときに過大な配筋となる場合の緩和措置です。
また、函体(本体)の縦方向の最小主鉄筋量については、“「土木構造物設計マニュアル(案)に係わる設計・施工の手引き(案) 〔樋門編〕」3.2.2本体の縦方向の設計” に記述されている函体の縦方向の主鉄筋の配置(下記)の考え方が、現状における最小鉄筋量の標準的な考え方の一つです。
なお、頂版の縦方向の鉄筋については、残留沈下量の分布状況やしゃ水矢板の影響等によって本体に負の曲げモーメントが発生するなど、断面力が大きく異なることが想定されるときには、底版と同量の主鉄筋を頂版にも配置することが妥当な場合がある。本設計例では頂版の縦方向の鉄筋は、D16ctc250を配置することとした。 |
p192〜193鉄筋のかぶりについて「土木構造物設計マニュアル(案)〔樋門編〕」との関係でどのように考えればよいか?
樋門の配筋の考え方は、「土木構造物設計マニュアル(案) 〔樋門編〕」に従って下さい。「同マニュアル(案)に係わる設計・施工の手引き(案)〔樋門編〕」に鉄筋のかぶり(主鉄筋中心からコンクリート表面までの距離)の算定方法の詳しい解説があります。
この設計マニュアル(案)では鉄筋のかぶりの算定に配力鉄筋を考慮しています。鉄筋の最小かぶりは、最外側の鉄筋を対象とします。
第8章 仮設
第9章 施エおよび施エ管理に関する一般事項
U 基礎構造編
第1章 総則
第2章 基礎に関する一般事項
第3章 直接基礎
直接基礎の場合に樋門本体の安定は、基礎地盤の許容支持力度で照査するのか、または、浮き直接基礎と同様に降伏変位量で照査するのか?
直接基礎の場合に樋門本体の地盤支持に対する安定は、一般の構造物の設計で行われている基礎地盤の許容支持力度で照査する方法で行うことができます。
一方、地中構造物である樋門本体は、一般に地盤の許容支持力の計算で想定している全般せん断破壊を生じることはありません。したがって、直接基礎の樋門においても浮き直接基礎の柔構造樋門と同様に降伏変位量で照査することが可能と考えています。
両者の方法の内、いずれか一方が満足することを確認すればよいと考えています。
第4章 柔支持基礎
直接基礎の場合に樋門本体の安定は、基礎地盤の許容支持力度で照査するのか、または、浮き直接基礎と同様に降伏変位量で照査するのか?
柔構造樋門設計の手引きでの"浮き直接基礎"と"直接基礎"で違う考え方を示している。浮き直接基礎において地盤の支持力の照査を省略できるのはなぜか?
・浮き直接基礎 設計の基本(柔構造樋門設計の手引きp235)
(2)樋門の本体の支持に対する安定は、基礎地盤の降伏変位量で照査する。
〔解説〕樋門は地中構造物であり、一般に函体はそれが排除した堤体土重量より軽いため函体直下の鉛直支持力に問題になることは少ない。この意味で浮き直接基礎、設計上は排土重量を補償した基礎と位置づけられる。このため、浮き直接基礎は、地盤の支持力の照査を省略することができる。 |
・直接基礎 設計の基本(柔構造樋門設計の手引きp219)
(2)樋門の本体は、直接地盤の支持力に対して安全でなければならない。
〔解説〕直接基礎の樋門本体の安定は、本体の縦方向の計算で得られる最大地盤反力度が基礎地盤の許容支持力度以内であることを照査することで行う。 |
(1)直接基礎
基本的に柔構造樋門は、補償基礎(函体が排除した土の重量の影響を考慮した基礎)であり、函体が排除した土の重量に対して函体の重量が軽いため、地盤支持力が問題になることはほとんど無いと考えています。この意味で地盤の支持力は、必要により施工時(函体設置時:通常は門柱部が課題になる)の検討を実施するのみで対応できると考えます。
門柱の設置によって、施工時の支持力が問題になるような地盤はトラフィカビリティの確保も難しい地盤となると想定されるので、一般には表層改良等が実施されるものと考えられます。
「特に入念な検討を行う場合」とは、このような地盤条件の場合や大規模な樋門で門柱の荷重が大きい場合等と考えています。
(2)浮き直接基礎
「浮き直接基礎は、地盤の支持力の照査を省略することができる。」としたのは、手引きの説明不足です(“全体破壊を考慮する地盤の支持力照査は省略することができる”の意味です)。
浮き直接基礎の地盤の支持力の照査は、「p237 4.2.3 地盤の支持に対する安定」の降伏変位量で照査します。
一般の地盤の支持力計算は、地盤のすべり破壊(全体破壊)を想定してそのすべりに対する極限支持力を計算しますが、浮き直接基礎も補償基礎であり、地盤の全体破壊は考慮する必要が無いと考えています。このため、樋門本体の支持に対する安定は、基礎地盤の局部せん断破壊に対する照査としており、地盤の変位が塑性変形に至らず弾性変形(基礎幅の1.0%かつ5cm以内)内にあれば安定であると判断することとしています。
基礎幅の1.0%かつ5.0cm以内については「道路橋示方書 W下部構造編(平成14年3月)9章基礎の安定に関する基本事項(p245)」などでも採用されています。
浮き固化改良体基礎のクッション材はどのようなものを使えばよいか?
クッション材は、堤防内の水みちとならない材質とする必要があります。堤体材料の透水性と比べて極端に大きい透水性材料をクッション材として用いることは危険です。このことから、一般の地盤改良で使用される良質なサンドマットは不適合となる可能性があります。
クッション材の材質としては、「柔構造樋門設計の手引き」p132の置換材料に示す堤体材料として望ましい土の条件が参考になります。すなわち、堤体材料と同等で施工性の良い材料が好ましいといえます。
- 粒度分布が良い。
- 細粒分(75μm以下)が土質材料の15%以上:これは不透水性を確保するための条件である。
- シルト分のあまり多くない土 :シルト分が多いと降雨等による含水比の増加でせん断抵抗が低下しやすい。
- 細粒分(75μm以下)のあまり多くない土 :細粒分が50%以上のものは、乾燥時にクラックが入る危険性が指摘されている。

「4.3.2改良体の配置と強度(p241)のなかで、浮き固化改良体基礎の設計に使用する壁厚について、『格子状配置の場合は有効厚としてよい』は理解できるのですが、『杭状配置の場合は基礎幅・奥行きの各々1/2としてよい』というのは計算モデルとしてどう理解すればよいのでしょうか。また、断面方向や縦方向の計算にどう考慮するべきなのでしょうか。
また、モデル化の考え方のベースとなっているものはなにでしょうか。
格子状改良のモデル化のベースは、地中連続壁基礎(道示W下部構造編参照)です。『杭状配置の場合は基礎幅・奥行きの各々1/2としてよい』とあるのは杭状配置を格子状配置として扱う場合の考え方を示したものです。
浮き直接基礎では、「樋門本体の支持力に対する安定は、基礎地盤の降伏変位量で照査する」とありますが、浮き固化改良体基礎については、どのように考えるべきなのでしょうか?
浮き固化改良体基礎の基礎底面地盤の支持力の安定については、p248の許容鉛直支持力度を求めて照査してください。極限支持力に対する安全率は1.5(表2-4-5)を用いることができます。
沈下を許容する浮き基礎では、一般に基礎の根入れが大きい場合は、支持力のチェックが不要の場合もあると思いますが、基礎先端地盤が極軟弱層の場合や、基礎の根入れが小さい場合に基礎の支持力不足による基礎の沈下が生じ易いので、基礎先端地盤の支持力を照査する必要があります。
4.3.5基礎の許容支持力
「4.3.5.2基礎の周面摩擦力度および基礎底面の鉛直支持力度」は"浮き固化改良体 基礎"に関する規定ですが、「4.3.5.1基礎底面地盤の許容鉛直支持力度」は"浮き直接基礎"に関する規定なのでしょうか。
その場合、鉛直支持力に対する安全率は、浮き固化改良体基礎については1.5、浮き直接基礎については3.0と考えてよいか。
「4.3.5.1基礎底面地盤の許容鉛直支持力度」は、"浮き固化改良体基礎"の支持(安全率1.5)に関する規定です。
"浮き直接基礎"に関する地盤支持に関する規定は、「4.2.3地盤の支持に対する安定」(p237)です。すなわち、浮き直接基礎の安定は、通常の支持力計算ではなく基礎の降伏変位量(本体の縦方向の設計)で照査します。
なお、通常の支持力計算を必要としない記述は、「4.2.1設計の基本」の(2)の解説(p236)で記載されています。
手引きp252の「4.3.5.5地盤反力係数」の項で、「地盤反力係数は改良部の平均変形係数およびその下部に分布する層の変形係数の影響を考慮して求める。」とありますが、改良部の平均変形係数はEp=100quとして、層厚は改良体の長さというように考えるということでしょうか?
改良体(改良部ではない)の変形係数は、従来の試験結果等から100quが平均的な値として得られています。改良部の変形係数は、改良率を考慮して求めます。
改良部の沈下量については、圧密沈下量は無視できると思いますが、即時沈下量は改良部の変形係数を用いて地盤と同様に計算するのが普通です。
「残留沈下および地盤反力係数を求めるときの変形係数の考え方」について 地盤は弾性体ではないため応力・ひずみ関係は曲線(非線形)になります。この地盤の特性を考慮して設計に用いる変形係数(弾性係数)は、地盤の沈下のように大きなひずみを扱う場合と、構造物の変形のように小さいひずみを扱う場合で2種類の変形係数を使い分けます。例えばN値から求める変形係数は以下のようになります。その他の試験値を用いる場合も同様に使い分けます。(p78〜79の記述参照)
Es=7N
E0=28N