JICE 一般財団法人国土技術研究センター

最新の助成研究

2023年度(第25回)研究開発助成の決定

「第25回(一財)国土技術研究センター研究開発助成制度」は、住宅・社会資本整備の課題に対して応募があった53件から、審査委員会での厳正な審査により、11件を採択することとなりました。

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記者発表資料(2024/02/20)

助成研究名・研究者氏名等

助成研究名 研究の概要 所属・氏名
@安全に安心して暮らせる国土の実現に寄与するもの
生活道路ユーザーの納得感の高い法定外表示の設置に関する研究

 法定外表示は、交通の円滑化を図るために欠かせないものであるもので、地域の実情に合わせて柔軟な運用ができることになっている。しかし運用にあたっては、都道府県ごとの交通管理者が適切と判断した方法と場所に設置され、居住する住民が知らぬ間に突然家の前に様々な法定外表示が設置されるのが実情である。

 住民も主体的にまちを改善する時代となっている。住宅地内の交通管理についても住民の主体的な意識を醸成することで、モビリティ・マネジメントは改善する。法定外表示を住民と交通管理者との協働により決定することで、住宅地内の交通静穏化等の交通管理が適切に行われるという仮説のもと研究を行う。

日本女子大学
家政学部住居学科
教授
■薬袋 奈美子
A人・もの・情報が効率的に通いあえる国土の実現に寄与するもの
東日本大震災の復興検証-かわまち事業における施設整備の社会的インパクト評価に関する研究-  東日本大震災の復興政策の特徴として、「復興の基本方針」により地域特性を理解する市町村をその主体として各自治体が策定する復興プランの下で進められたこと、事業支援や産業政策向けの補助金が設けられたことがある。各自治体では地域特性を生かした復興と、住民主体による復興を進めたいと考えたが、その中で、石巻市の「かわまちオープンパーク」、名取市の「かわまちテラス」は国土交通省の「水辺を活かしたまちづくり」の支援事業の対象となり、自治体と地域事業者や市民が連携して施設整備に取り組み、成功事例に挙げられている。しかし、施設の位置付けや機能、計画推進、事業主体、各自治体の政策方針等の違いにより、各施設の投資効果や地域への波及効果に違いが生じていることが予測される。この仮説に対し、施設整備の直接的な経済効果と間接的な地域活性化の効果の2つの側面から検証し、その成功要因を明らかにする。
東北大学大学院
経済学研究科
教授
■増田 聡
道路整備に伴う「集積の経済」効果の発現パターンに関する研究  本研究は、2023年度に開発を進めた、独占的競争市場と消費者および企業の多様性選好を考慮した全国47都道府県間空間応用一般均衡モデル(SCGEモデル)を用いて、多様な道路整備計画(地方都市間、大都市間、地方都市と大都市間、地方都市内および大都市内)の「集積の経済」効果を計測する。2024年度は特に、@SCGEモデルにおける「輸送マージン」や地域間の代替の弾力性等の主要パラメータの精度を向上させること、A道路整備のあり方と「集積の経済」効果の間にパターンを見出し、実務に応用できる簡便指標を開発する。
神戸大学大学院
工学研究科
教授
■小池 淳司
幹線交通の気象影響を考慮した旅行時間信頼性の経済価値推計
 幹線交通の旅行時間信頼性の経済評価(便益計測)を行うために取得した2018年前後2か年の日々の交通機関別時間帯別(運行別)旅行時間データと,携帯位置情報データによる冬期を含んだ日別の幹線交通需要データを組み合わせて,非集計ロジットモデルによって幹線交通の旅行時間信頼性評価値を算出する.
 一般的に幹線交通の時間価値は都市交通に比して高く,時間信頼性価値も相応に大きいと想定される.交通機関ごとの旅行時間変動の季節別変化が旅行需要にも影響する可能性を明らかにし,時間時間信頼性の経済価値を算出する.
芝浦工業大学
工学部土木工学科
教授
■岩倉 成志
B心豊かに暮らせる快適で美しい国土の実現に寄与するもの
C流域治水の地域への展開に関する研究
流域治水とコンパクトシティの融合を通じた適散適集グリーン社会への展開とその治水安全度評価  本研究では2023年度に、現在・将来の地先の水害リスクを明確にするとともに、この水害リスクに対して、流域治水オプションおよびコンパクトシティ政策がどの程度効果的か富山市を対象とした解析より評価している。2024年度は、富山県全域の市町村を対象とし、流域治水オプションの拡大でグリーントランスフォーメーション(GX)を組み込む。これにより、今後の人口減少・地球温暖化時代に適した地方都市の未来像として、コンパクトシティの発展形となる適散適集なグリーン社会を提案する。外水・都市内水ネスティング解析により治水安全度を評価し、各種対策の費用便益分析を実施する。更に合意形成に向けた取り組みも行う。
富山県立大学工学部
環境・社会基盤工学科
准教授
■呉 修一
小流域での住民参画による防災と快適環境計画づくりに関する研究  山形県飯豊町は長年行政と地区住民による協働での農村地域づくりを土地利用計画や地区別計画を策定してきた。申請者はこれに関して40年近く支援研究を進めてきた。2022年の豪雨災害後も調査研究チームを組織し、災害の要因と対策を探り町民、町・県行政にも発信してきた。その成果を生かし山〜河川〜里の小流域の治山治水の視点から、住民参加による総合的な防災と快適な環境づくりのための土地利用管理計画を住民とともに作成する。グリーンインフラやEco-DRRを組み込んだ先駆的な防災・快適環境計画を作成し、他の地域への波及を図っていく。さらに国土利用計画を補完する市町村での防災を加味した地区別土地利用計画策定のモデル的事例となる。
NPO法人エコロジー・アーキスケープ
理事長
■糸長 浩司
人口減少に伴う地域変容と洪水氾濫制御機能を有する公園緑地整備に関する研究  将来の人口減少下において,洪水氾濫のリスクが高い河川周辺域から安全な地域への移転が進んだ際に生じる余剰地に,二線堤の機能を有する遊歩道や高台,及び水害防備林となる林からなる公園緑地を整備することを想定し,その配置や規模を様々に変化させた条件のもと,氾濫解析モデルによるシミュレーションを行い,各ケースでの氾濫制御効果の分析を行う.また,氾濫制御に伴う経済損失の軽減効果や要避難者数の変化を算定し,洪水リスク軽減効果を評価する.以上により,人口減少下での地域変容時に,水防災に貢献するグリーンインフラとしての公園緑地を整備することの有効性を評価し,流域治水と地域づくりの検討に資する知見を獲得する.
金沢大学理工研究域
地球社会基盤学系
教授
■谷口 健司
D河川堤防の信頼性・安全性評価に関する研究
計算機解析と実験および計測による河川防災技術の実用化に関する研究  本研究では防災の観点から実験と計測および計算機シミュレーションによる河川の流れと水面下の地形変動に着目し,信頼性の高い実験と計測手法および解析システムの開発と実用化および応用を目的とする。すなわち実測データを計算機シミュレーションに導入した解析システムの構築を目標とする。更に流れのシミュレーション結果を検証するためGNSS受信機を搭載したフロートによる実験も実施することも目標とする。本研究では,実測データを導入した計算機解析手法の開発と実用化および実験と計測による計算機解析結果の検証手法の確立により河川氾濫に対する堤防の安全性を評価する手法を確立し,河川防災・減災に資することを目標とする。
岡山大学学術研究院
環境生命自然科学学域
准教授
■赤穗  良輔
E道路ネットワークを賢く使うための道路計画論に関する研究
F戦略的な道路舗装の予防保全型メンテナンスに関する研究
G都市のカーボンニュートラルの評価に関する研究
グリーンインフラ整備の脱炭素化効果の推計と負担配分に関する研究  コンパクトシティ化を進めることで郊外にグリーンインフラを整備,拡大することが可能となり,それは脱炭素化などの観点から望ましい.しかしながら整備がもたらす便益の内容,規模,その算定方法が明らかでない.また,いかなる主体がグリーンインフラを整備することが効率性,公平性の観点から合理的といえるかも明らかでない.そこで本研究では,ライフサイクルアセスメントの方法論に基づいて脱炭素化の効果を明確化し,便益帰着構成表とゲーム理論に基づいて広域で協同的なグリーンインフラ整備の成立可能性を考察し,整備計画の策定に資する方法論を構築する.
名古屋工業大学大学院
工学研究科
教授
■秀島 栄三
CO2固定化反応素材によるカーボンニュートラル都市の設計に関する研究  コンパクトシティ化を進めることで郊外にグリーンインフラを整備,拡大することが可能となり,それは脱炭素化などの観点から望ましい.しかしながら整備がもたらす便益の内容,規模,その算定方法が明らかでない.また,いかなる主体がグリーンインフラを整備することが効率性,公平性の観点から合理的といえるかも明らかでない.そこで本研究では,ライフサイクルアセスメントの方法論に基づいて脱炭素化の効果を明確化し,便益帰着構成表とゲーム理論に基づいて広域で協同的なグリーンインフラ整備の成立可能性を考察し,整備計画の策定に資する方法論を構築する.
早稲田大学理工学術院
創造理工学部社会環境工学科
教授
■小峯 秀雄
H建設現場のカーボンニュートラルの評価に関する研究
I建設業等の新たな取組領域に関する研究
ハイパースペクトルイメージングを用いた汚染土壌判定に関する研究  本研究では,ハイパースペクトルデータと深層学習を組み合わせることで,掘削残土の中から重金属を溶出する汚染土壌を判定するシステムを構築する。そのために,@掘削残土中に含まれる砒素等の重金属の特性評価(溶出のしやすさや含有量を評価),A掘削残土のハイパースペクトルデータの取得,B@,Aで取得したデータと深層学習を組み合わせ,掘削残土から汚染土壌を判定するプロトコルの構築を実施する。汚染土壌中の重金属の溶出量に関係するスペクトルの特定は極めて難しいと想定されるため,掘削残土中の重金属の含有量と溶出量の相関性を評価し,重金属含有量に関係するスペクトルに着目することで,間接的に溶出量を判定するシステムを構築する。
北海道大学大学院
工学研究院
環境循環システム部門
助教
■有馬 孝彦

審査の観点

審査委員会においては、以下の視点で審査いたしました。

 @応用研究課題:1)先見性、2)応用性・発展性、3)確実性
 A重点研究課題:1)社会ニーズ、2)実現可能性、3)波及効果

審査委員会

委員長 徳山 日出男 一般財団法人 国土技術研究センター 理事長
委 員 池淵 周一 京都大学 名誉教授
委 員 石田 東生 筑波大学 名誉教授
委 員 岡田 恒男 東京大学 名誉教授
委 員 土岐 憲三 立命館大学 特別研究フェロー
委 員 森地 茂 政策研究大学院大学 客員教授
委 員 川ア 茂信 一般財団法人 国土技術研究センター 理事
委 員 佐藤 克英 一般財団法人 国土技術研究センター 理事
委 員 奥村 康博 一般財団法人 国土技術研究センター 研究総括監