最新の助成研究
2022年度(第24回)研究開発助成の決定
「第24回(一財)国土技術研究センター研究開発助成制度」は、住宅・社会資本整備の課題に対して応募があった49件から、審査委員会での厳正な審査により、11件を採択することとなりました。
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助成研究名・研究者氏名等
助成研究名 | 研究の概要 | 所属・氏名 |
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@安全に安心して暮らせる国土の実現に寄与するもの | ||
関東地方の周年行事から学ぶ負の記憶を継承する要因に関する研究 | 千葉県内には、100年以上にわたり自然災害・感染症大流行を起源として、これらの「負の記憶」を伝承する周年行事が存在する。例えば、銚子市・旭市・東庄町の式年銚子大神幸祭(20年ごと約900年)、長生村の元禄大津波溺死者之精霊三百回忌供養塔(50年ごと300年以上)、鴨川市の烈医沼野玄昌先生忠魂碑(50年ごと100年以上)である。本研究では、千葉県を含む関東地方を対象として、これらの3つの事例の他にも長期間にわたり伝承されている自然災害・感染症流行を起源とする周年行事の事例を収集し、これらに共通する特徴を明らかにすることを目的とする。 |
千葉科学大学
危機管理学部
危機管理学科
教授
■藤本 一雄
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A人・もの・情報が効率的に通いあえる国土の実現に寄与するもの | ||
道路整備に伴う「集積の経済」効果の発現パターンに関する研究 | 本研究では、ストック効果の1つである「集積の経済」に着目する。独占的競争市場、収穫逓増および多様性選好を仮定したSCGEモデルと、完全競争市場を仮定したSCGEモデルを構築する。両SCGEモデルともに日本全国47都道府県間モデルである。両モデルから計算される特定の道路整備事業の便益を対比させ、「集積の経済」効果を定量的に捉える。道路整備区間について、地方都市間、大都市間、地方都市と大都市間、大都市内および地方都市内といった場合分けを行い、整備事業の性質に応じて変わる「集積の経済」の発現パターンを明らかにする。また実務において「集積の経済」効果を簡便に考慮することを目的に、同効果が従来の時間短縮便益の何倍に相当するかといった指標を開発する。 |
神戸大学大学院
工学研究科
教授
■小池 淳司
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B心豊かに暮らせる快適で美しい国土の実現に寄与するもの | ||
気候変動への適応に向けた砂浜価値の定量化に関する研究 | GISデータベースに登録された砂浜,干潟,ウミガメ,海岸植生,藻場等の環境情報を広く収集し,それぞれの要素の関連性(様式1Dの図2参照)について整理するとともに,日本の沿岸域の代表的な環境指標となりうるパラメータを探索する.国内外の文献調査により砂浜の経済評価結果に関する情報を集約し,日本の沿岸域に適用可能な環境価値の評価手法を開発する.開発した手法を申請者らが構築した砂浜経済評価手法に導入することで,防災・環境・利用すべての価値を考慮した砂浜価値の評価手法を開発する.気候変動に伴う海面上昇に対する全国の砂浜消失の被害額を推計し,将来の砂浜消失への適応策の策定に資する知見を提示する. |
東北大学大学院
工学研究科
教授
■有働 恵子
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C流域治水に関する研究 | ||
外水・都市内水ネスティング解析による流域治水とコンパクトシティ融合の影響評価 | 本研究は、富山県富山市および神通・常願寺川を対象に、外水氾濫解析の結果をネスティングする詳細な都市内水氾濫解析を実施することで、現在・将来の地先の水害リスクを明確にする。この水害リスクに対して、流域治水オプションがどの程度効果的かを明らかにするとともに、富山市が積極的に実施している「コンパクトシティ」政策の有無、今後の進展が洪水被害軽減にどの程度寄与するかを定量的に評価する。これにより、今後の人口減少・地球温暖化時代で、1)国土強靭化による河川整備・管理、2)流域治水による関係者の協働、に3)コンパクトシティ政策の推進による住民の居住誘導と荒廃地の保全・有効利用を新たに追加した3セットを、地方都市の未来像として提案する。 |
富山県立大学
工学部
環境・社会基盤工学科
准教授
■呉 修一
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自然科学と人文・社会学の知を基にした流域治水の総合的マネジメントに関する研究 | 流域治水では,気候変動を踏まえて流域圏の多様な主体の協働が定義され,そこには分野横断的な水災害の総合的マネジメントが求められている.しかし,行政にとどまらない多様な主体間での協働や連携への合意は難しい.広域連携を対象とした合意形成手法は確立できておらず,分野横断的視点において検討が必要である.そこで,本研究では,土木,建築,人文社会,の知識を融合し,水災害マネジメントにおける関係者間の合意に至るまでの「認知のズレ」を,心理学的手法を用いて分類することで見える化し,連携のあり方を分野横断的視点から検討する. |
静岡理工科大学
理工学部土木工学科
准教授
■松本 美紀
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D河川堤防の信頼性評価に関する研究 | ||
越水した場合であっても「粘り強い河川堤防」の耐浸透性能に関する研究 | 令和元年台風第19号による多数の堤防決壊の発生を受け,越水した場合であっても「粘り強い堤防」の整備が全国で進んでいる.一方,「粘り強い河川堤防」であっても,従来の河川堤防に求められる耐浸透性能などは必要となるが,従来の土堤を基本とした堤防構造とは異なるため,その知見は十分蓄積されていない. そこで,本研究は「粘り強い河川堤防」を対象に,模型実験及び現地観測により耐浸透性能を検討する.それらの結果をもとに,「粘り強い河川堤防」の耐浸透性能を評価し,設計の高度化に活用することを目的とする. |
山口大学大学院 創生科学研究科 准教授 ■森 啓年 |
E社会潮流の変化に対応した道路ネットワークのあり方に関する研究 | ||
F人中心の道路空間再構築に関する研究 | ||
歩車共存型道路空間のデザイン・マネジメント技術に関する研究 |
本研究では、歩車共存型道路空間のデザイン・マネジメント手法の構築に向けて、以下の3つの事項を実施する。
1)欧州におけるシェアドスペースのコンセプトに基づいて計画・設計された道路空間の利用実態について、動画解析を行う。
2)国内における歩車共存型道路空間の先行事例である京都・三条通、船場・高麗橋通りの利用実態について、動画解析を行う。
3)申請者が関わるフィールド(祐天寺駅周辺、三軒茶屋駅周辺、渋谷公園通り周辺等)において実施する社会実験について、交通調査・効果検証を行う。
上記3項目の結果を踏まえて、各事例において採用されたデザイン及びマネジメント技術の汎用性・実用性を分析し、技術の体系的な整理を行う。
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国士舘大学
理工学部
まちづくり学系
准教授
■西村 亮彦
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G人口減少社会における持続可能な都市の構築に関する研究 | ||
都市経営の視点からみたコンパクトシティ政策による長期的便益の貨幣価値評価に関する研究 | 本研究では、長期間の実績データを用いて、コンパクトシティ政策に要した経費とそれによって得られた便益を貨幣価値で算出して比較する。まず、富山市のデータを用いて詳細な時系列分析を行い、次に、「政令指定都市ではない県庁所在都市(31都市)」を対象とした比較分析を行う。経費としては「都市軸となる公共交通の利便性向上のための経費」や「公共交通沿線への立地誘導費」、便益としては「地価水準と固定資産税・都市計画税」、「公共交通の利用者数と収支」、「人口密度と都市施設の管理費」を求め、一連の政策がどれだけ自治体の財政に寄与しているかを示す。また、その結果を踏まえて、今後のわが国の都市政策の推進に資する政策的な知見を示す。 |
富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 特別研究教授 ■中川 大 |
H今後のあるべき建設生産システムに関する研究 | ||
セメント硬化体の炭酸化反応を活用した再生骨材の高品質化に関する研究 | コンクリートの強度をつかさどるセメント硬化体は通常の環境条件では炭酸化による分解速度が極めて低く、50〜100年と言われる構造物の供用に不都合は生じない程度である。一方、本研究では、材料として二酸化炭素のみを用い、日常的にはあり得ない、市販炭酸水の数倍の高濃度炭酸水に中品質再生骨材を浸漬し、表面に付着したままのセメント硬化体を効率的に炭酸化・剥離させて高品質化する技術を開発する。さらに、あらかじめ高濃度炭酸ガス中で中性化することにより、炭酸水浸漬時間の短縮を図る。なお、破砕した廃コンクリート片を市販炭酸水に浸漬する予備実験にて、セメント硬化体が炭酸化して骨材表面から剥離することを確認済みである。 |
高知工科大学
システム工学群教授
■大内 雅博
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火山ガラス微粉末を用いたコンクリートに関する研究 | 本応募研究では、天然資源の有効利用とCO2削減を可能とする火山ガラス微粉末を持用いたコンクリートを開発する。具体的には、福島県にある火山堆積物を粉砕し、サイクロンで分級した火山ガラス微粉末(JIS A 6209 コンクリート用火山ガラス微粉末 相当品)を多量に使用したコンクリートを開発する。具体的には、コンクリートの基本性状(流動性、強度および耐久性)を評価し、構造部材への適用検討として、鋼材腐食に対する抵抗性およびRCはり部材としての構造性能を実験で明らかにする。さらに、火山ガラス微粉末の製造プロセスを含めたLCCに加え、CO2削減に伴う環境負荷低減効果を試算する。 |
金沢工業大学
工学部
環境土木工学科
准教授
■花岡 大伸
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I社会資本の戦略的な維持管理に関する研究 | ||
階層ベイズによる既存橋梁の耐震性能評価モデル構築に関する研究 | モデル更新では,対象構造物の数値モデルを構築しそのパラメータをモデル応答が観測と一致するよう初期値から更新する.このとき,有限要素モデルなど精緻なモデルは詳細な性能評価が可能である反面,パラメータ数が多く全パラメータの正確な更新は困難となる.一方,質点系モデルなど簡易なモデルはパラメータ数が少なく更新は容易だが,モデル化誤差が大きくなり更新結果に基づく性能評価の信頼性が低下する.本研究では,近年提案された階層ベイズを用いてパラメータに確率分布を仮定しその分布係数の観測更新を検討する.本手法では,パラメータ数を抑えた簡易モデルにおいても,モデル化誤差を確率的に補償して信頼性の高い性能評価が可能な更新が期待される. |
東京大学大学院
工学系研究科
助教
■北原 優
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審査の観点
審査委員会においては、以下の視点で審査いたしました。
@応用研究課題:1)先見性、2)応用性・発展性、3)確実性
A重点研究課題:1)社会ニーズ、2)実現可能性、3)波及効果
審査委員会
委員長 | 徳山 日出男 | 一般財団法人 国土技術研究センター 理事長 |
委 員 | 池淵 周一 | 京都大学 名誉教授 |
委 員 | 石田 東生 | 筑波大学 名誉教授 |
委 員 | 岡田 恒男 | 東京大学 名誉教授 |
委 員 | 進士 五十八 | 東京農業大学 名誉教授 |
委 員 | 土岐 憲三 | 立命館大学衣笠総合研究機構 特別研究フェロー |
委 員 | 森地 茂 | 政策研究大学院大学 客員教授 |
委 員 | 野田 徹 | 一般財団法人 国土技術研究センター 理事 |
委 員 | 川ア 茂信 | 一般財団法人 国土技術研究センター 理事 |
委 員 | 佐藤 克英 | 一般財団法人 国土技術研究センター 研究総括監 |