JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞者の声

建設分野の新技術への挑戦

第13回国土技術開発賞

優秀賞 連続SSRT 技術開発者 村山秀幸 受賞コメント

第13回国土技術開発賞 連続SSRT
技術開発者 (株)フジタ  村山 秀幸

受賞にあたって

 このたびは,国土技術開発賞優秀賞を賜り身にあまる光栄と存じます.

 掘削発破を震源に活用する連続SSRTは,先行技術であるSSRT(Shallow Seismic Reflection Survey for Tunnels)において、探査時に専用の震源と振動観測機器が坑内を占有することから、「現場で毎日使っている掘削発破を震源にできないのか」という現場からの声を具現化した技術です。

 掘削発破を調査に活用しようとする考え方は古くからありましたが,掘削発破は切羽に装薬した火薬をある間隔で順々に爆破するため様々な波が重なり合って記録されること、発破時刻と振動を正確な時計(10-4秒以下の精度)に基づき記録できること等が課題となり,実用化されていませんでした。
 連続SSRTの技術成立性において、最も苦労したのは後者の課題であり「坑内観測機器の時計精度をいかに確保するか」でした。一般に、各種振動計測では観測機器の時計精度を確保するためにGPS衛星から発信される時刻情報を利用していますが、トンネル坑内ではGPS刻時信号を受信できません。そこで、原子時計の一種であるルビジウム(10-11秒の精度)を用いた刻時装置を開発しました。このルビジウム刻時装置は軽量かつ小型で、掘削作業のない休日に坑外でGPS刻時信号と同期させ時計精度を確保したのち、掘削作業が開始される前に坑内に携行・常設するという運用方式を採用することよって、掘削作業に支障を与えずに連続的な切羽前方探査が可能となりました。

 最後に,本技術の開発並びに現場適用に際して多くの御助言と御便宜を賜りました関係各位に御礼申し上げます。

受賞後の動き

 トンネル技術者にとって、「切羽前方に地下水があるか、あるとすればどの程度の水量か」を事前に把握することは悲願とも言え、安全管理上非常に重要です。連続SSRTでは、原理的に地下水を直接把握することはできませんが、他手法との融合等によって地下水を把握できないか思案しており,今後是非ともアプローチしていきたいテーマと考えております。