JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞者の声

建設分野の新技術への挑戦

第15回国土技術開発賞

入賞 低改良率セメントコラム工法(ALiCC工法) 技術開発者 大谷政敬 受賞コメント

第15回国土技術開発賞 入賞 低改良率セメントコラム工法(ALiCC工法)
技術開発者 (株)キタック 大谷 政敬

受賞にあたって

 このたび国土技術開発賞の入賞にご選考頂き有り難うございました。共同開発者並びに関係者の皆様に改めて御礼申し上げます。

 アリック工法は、軟弱地盤上に盛土を構築する場合の対策工として深層混合工法を用いる場合の設計法です。

 1980年代までは、北陸地方整備局管内で深層混合工法を軟弱地盤上の盛土の安定や沈下対策に用いる場合、主にスベリ破壊に対する抑止と言った発想から盛土のノリ肩からノリ尻にかけての基礎地盤部分に改良体を配置する設計が行われていました。

しかし、1980年代に施工された事例から、このような設計では、盛土中央部の沈下を抑止できない事、側方流動により改良体に水平力が作用すること、改良体は軸力には強いが、水平力には弱い事などが明らかとなりました。このため深層混合工法を用いる場合は盛土敷幅全体に配置し低改良率(10~20%)にして改良体の軸力で盛土荷重を支えることで、地盤改良の品質向上さらにコスト縮減に結びつくものと考えました。

 これを実証するため北陸地方整備局新潟国道事務所では、新潟西バイパスにおいて低改良率20%の配置による試験施工が行われ、低改良、高強度改良柱体による地盤改良の有効性が検証されました。その後、北陸地方整備局管内の和島バイパスや能越自動車道において更に技術開発が進み、経験的な設計手法が確立され10%台の低改良率まで可能となり、北陸では多くの軟弱地盤対策工として用いられてきました。

 これらの実績が低改良高強度改良柱の深層混合工法の普遍的な設計手法としてのアリック工法誕生の一助となることができました。今振り返ると技術開発に向けて熱心に思考し議論した北陸地方整備局技術者の皆々さんの顔が思い出されます。この様な技術開発に参画することができ、技術開発者の一人に加えられたことは、ひとえに、ご指導頂いた北陸地方整備局の方々のお陰であると改めて感謝申し上げます。


受賞後の動き

 深層混合工法はもともと高価な地盤改良工法であることから、コスト縮減が大きな課題でした。アリック工法により従来に比べて28%以上のコスト縮減が可能となりました。さらに大口径改良柱体を採用することや補助工法としてのジオテキスタイルの用い方により更なるコスト縮減が可能であることが最近の事例から検証されています、これらの資料を活用して現在の「軟弱地盤改良のためのアリック工法マニュアル」が改定されて、安全でより廉価な軟弱地盤対策工が普及することを願うものです。