JICE 一般財団法人国土技術研究センター

『 建設技術・マネジメント』に関わる自主研究

工事記録映像活用試行要領・同解説

はじめに

 昨今、一部の工事において、落橋防止装置等の溶接不良や基礎ぐいの支持層未達、地盤改良工事における施工不良・虚偽報告等の不適切な施工が見受けられている。しかし、監督する発注者側は、職員定員の削減に加え業務が多様化・複雑化する中、職員自らによる現場の臨場が困難となり、円滑な工事の実施と品質の確保に支障を来しかねない状況にある。

 そうした中、施工状況を撮影して発注者へ提供することにより、品質の高さを証明したり、受発注者間のコミュニケーションを円滑にする取組や、安全教育に活用する取組、熟練技術者の技術を若手技術者へ伝承しようとする取組等、一部の施工者において先導的な取組が進められている。加えて、映像の撮影・保存に必要な機材等は価格が大幅に低下し、また小型・軽量化して使い勝手も格段に向上していることから、今後、施工状況を映像により記録することが一般的に普及していくことが期待される。

工事記録映像活用試行要領・同解説

 「工事記録映像活用試行要領・同解説」は、建設現場において施工状況を撮影し、その映像を監督手法の1つとして品質の確保に活用する他、受発注者間のコミュニケーションの円滑化、安全管理等に活用することによって、建設生産プロセスの生産性向上を図り、安全で魅力ある建設現場を創出することを目的として、建設現場で撮影、編集等の試行を行う際の考え方や留意事項等をまとめたものである。

 今後、実際の現場で試行を積み重ね、効果を検証するとともに、課題を克服して建設生産プロセスの中に組み込んでいくことを期待している。

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建設工事の安全対策

 我が国の労働災害の発生状況をみると、死亡者数、死傷者数ともに減少傾向にある。このうち建設業においてもほぼ同様な傾向を示しているが、全産業に占める割合をみると、死亡者数では30%程度、死傷者数では20%程度と高い状況にあり、安全対策に関して一層の努力が求められるところである。

 国土交通省では平成4年に「公共工事の発注における工事安全対策要綱」を策定し、「適正な積算・工期設定の実施」「施工条件の明示・条件変化への適切な対応」「安全教育の経費計上・適正実施の指導」「安全対策に向けた技術開発支援・普及促進」 等を定めて実施している。 また、安全指針・ガイドライン・事故防止対策のための重点対策 等を提示し、受注者の支援を行っている。

一方、建設企業では、労働安全衛生法等の法令・関係省令・規則および発注機関の定める指針等に基づいて安全計画を策定し、現場環境に応じた事故防止対策を実施している。

建設工事における安全確保は、官民各々の立場で努力されているが、まだ課題が多い。近年では建設投資の減少や過当競争による安全面への影響が懸念されている。 JICEにおいても、公共工事の安全対策に関してさまざまな観点から検討を進めていることころである。

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公共事業の構想段階における計画策定プロセスに関する関係資料集

 社会資本整備を進めるに当たっては、透明性、公平性を確保し、住民・関係者等の理解と協力を得るため、住民参画の取組みを推進することが重要です。

 JICEでは「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」等の策定に関して支援業務を実施しており、このたび、実務者の便宜を図り、背景の理解を深める一助として戴くため、本資料集を編さん致しました。当資料集が有効に活用され質の高い計画作りが推進されることを期待しております。

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自然災害死史観と装置インフラの変遷−わが国を襲った自然災害とインフラ整備の歴史−

 今後30年以内に首都直下地震や海溝型巨大地震が高い確率で発生すると言われているなか、安全で安心できる社会を維持し、次世代に豊かな国土を引き継いでいくためには、これまでにも増して、社会資本の防災化・減災化を進めていく必要がある。また、過去に建設された膨大な社会資本ストックの高齢化が急速に進展していく中で、わが国のおかれた厳しい自然条件・社会条件が引き起こす様々な問題(塩害、腐食、疲労損傷等)を想定し、土木構造物を健全な状態で適切に維持管理していくことも求められている。これらの困難な課題に対応していくためには、従来の枠組みにとらわれることなく、高い目標を設定しそれに果敢に挑戦していくこと、また、変化のスピード速い現代にあって、俯瞰的なものの見方に立った決断と実行のスピードが求められている。

 こうした問題認識のもと、本稿は、【前半】において、わが国を襲った自然災害の歴史を改めて整理し、“国土学”の視点、自然災害死史観から、現在われわれが直面している時代背景と酷似している「幕末・明治維新の時代」を再考するとともに、こうした国土学の視点、自然災害死史観に立って、装置インフラの歴史を、橋梁耐震対策の視点から整理している。

 また、【後半】では、新たな時代の装置インフラの可能性、とりわけ構造物モニタリングのあり方について、過去の取り組みをレビューするとともに、今後のあり方を検討・提案している。

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発注者に求められる技術力と発注者支援方策の具体化検討

  公共工事の品質確保に関しては、その基本法ともいうべき「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(以下、「品確法」という。)が平成17 年に議員立法により制定され、同年4 月より施行されたところである。また、一般競争入札方式の拡大や総合評価落札方式の拡充、検査体制の強化など、その後の国土交通省を中心とする様々な制度改革により、価格と品質(技術)に優れた公共調達の取り組みが、具体的かつ全国的に進められている。

 一方、こうした新しい調達システムを実現していくための体制はというと、その先導的役割を担うべき直轄国道事務所をみても、行革による定数削減、業務量の増加・多様化(ソフト系業務への大幅な移行)、設計・施工業務からの実質的撤退(乙による責任施工システムと積算・現場管理業務の外部委託)等を背景として、キーとなるハード系業務に係る発注者(管理者)の技術力が著しく低下しているのではないかとの指摘がある。

 このことは、公共構造物の代表選手である道路橋の現場においても顕在化しはじめている。新設橋梁の施工現場におけるトラブルしかり、既設橋梁の維持管理現場におけるトラブルしかり、いずれも橋梁の計画から維持管理に一貫して携わる発注者(管理者)の「技術力」を問われかねない、過去にはみられなかった問題である。

 公共投資が削減されていく中、品確法に基づきコスト縮減を実現する新たな調達システムを積極的に導入していくべきであるが、公共調達の現場では民間から提案された高度な技術提案を適切に審査できているのであろうか、また、急速に老朽化が進む大量の道路橋の維持更新を、国として責任を持って効率的に進めていかなければならないが、今の現場の体制で可能であろうか。

 本稿は、社会資本の品質確保を図るため、発注者(公物管理者)はどうあるべきか?そのために何をなすべきか?について、過去の事例を紐解きながら現行体制の問題点を検証するとともに、フランス、イギリス、韓国の体制・制度や日本の港湾法・建築基準法など、国内外の制度・仕組みをレビューしながら、我が国において参考となる制度・仕組みをリストアップし、畢竟、インハウス組織の強化及び発注者(管理者)支援制度について提案するものである。

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土木構造物のリスクマネジメントとインフラ・イノベーション

木歩道橋設計・施工に関する技術資料(木歩道橋の選定と設計の考え方)

 人と自然に優しい木橋を採用するに当たっては、建設コストが割高になることに加え、耐久性に関して腐朽という課題があるため、維持管理の費用が嵩むこととなります。しかし、木橋には以下に示す効果が期待できるので、その採用に当たっては、これらのデメリット・メリットを勘案して、木橋の採用を決定することが望ましいと考えられます。

 また、木橋の場合安易に支間長を大きくすると、コンクリート橋や鋼橋と比較して建設コストの増加がより大きくなることから、適正な支間長と構造形式を採用することが望まれます。

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木歩道橋設計・施工に関する技術資料