JICE 一般財団法人国土技術研究センター

『住まいと暮らし』に関わる自主研究

 本研修は国土交通省の「接遇研修モデルプログラム」で紹介されています。

 本研修の概要をまとめた動画をご覧になれます。

心のバリアフリー研修について

1.研修の紹介

1-1. 研修の趣旨

「心のバリアフリー」について、障害当事者等に「優しくすることだけで、社会参加の障壁は解決できるのか?」という問いかけから、優しさだけでなく、ハード面・ソフト面の環境を整備していく視点、即ち「障害の社会モデル」の視点に気づく研修プログラムです。

*注)「障害の社会モデル」の考え方

「『障害』は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である」という考え方。 (参照:「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(2017.2.20関係閣僚会議決定))

1-2. 研修の特徴

特徴その1:障害のある当事者講師との対話による研修です

  • 研修では、リアリティのある具体的な「社会的障壁」の事例を取上げ、講師と直接対話し、受講者との意見交換を通して「障害は環境にある」という「障害の社会モデル」の考え方を実感できる研修です。

     ○グループワーク風景        ○当事者講師との対話風景

【受講者の声】

講師が、自分ごととして話す強さと説得力を感じました。当事者の体験談は貴重。

対話をすることで、相手のことを理解できることを具体的なケースを見ながら学べた。

障害者が生活する上で、現在もある沢山の課題を知る契機となった。

特徴その2:動画のリアリティのあるシーンから「社会的障壁」を理解します

  • 日常的なリアリティのあるシーンを動画で視聴頂き、問題・課題は何が原因なのか、どうすれば解決できるのかを考えることで、環境を整備していく視点に気づき、発見したことを基に研修を進めます。

     ○車いす編の動画サンプル







     ○聴覚編の動画サンプル              ○精神障害編の動画サンプル

【受講者の声】

具体例が映像で示されたので、分かりやすかった。

動画を見て考えるという流れは、気づきが得られて非常によい。

配慮が足りない場合のマイノリティがどんな状況なのか知ることができた。

特徴その3:気づいて対話し、自ら考える「発見型」の研修で、行動につなげることを目指します

  • 動画のシーンの中で、障害者が日常的に遭遇している問題点を発見し、講師との対話を通じて問題の発生原因を探り、社会的障壁を取り除く解決策を自ら考えることで、行動変容を促す研修です。

     ○問題点の抽出、解決策についての検討風景

【受講者の声】

内容が具体的で分かりやすく、他の参加者の意見も聞けて参考になりました。

自分勝手な思い込みが、一番の障害になるのではないでしょうか。

日常的にどのようなことに困っているか、分かりやすく伝えて頂けたと思います。

特徴その4:「障害の社会モデル」に係る公的な考え方や研修方針に準拠しています

 <*当該研修プログラムが目指すものとして、下記が示されています>

  • UD2020行動計画で示されている「心のバリアフリーの基本的な考え方」(障害(バリア)とは何かを考え気づく、「障害の社会モデル」を理解する)を身につける。
  • 障害当事者が参画することにより、理解を深めともに考えることのできる場とする。
  • P17に本研修が紹介され、P21〜22に研修プログラムの概要が掲載されています。
  • コンテンツ開発について、日本福祉のまちづくり学会 障害の社会モデル研修特別研究委員会(委員長 中野泰志/慶應義塾大学教授)と連携しています。

【受講者の声】

「障害のある人の特性を知り、優しく接しましょう」ではなく、「社会的障壁を当事者(障害の有る無しに関わらず)に意見を聞き、お互いが優しくなれる社会」にしたいです。

1-3.本研修は このような方にお勧めします

(1)「心のバリアフリー研修」の提供者の方へ

  • 研修では、リアリティのある具体的な「社会的障壁」の事例を取上げ、講師と直接対話し、受講者との意見交換を通して「障害は環境にある」という「障害の社会モデル」の考え方を実感できる研修です。
  • 「心のバリアフリー研修」について理解しているが、どのプログラムを採用すればよいか迷っている方。
  • 企業や団体、地方公共団体、学校での授業(中学生〜大学生)などで「心のバリアフリーの授業」を計画されている先生。

(2)受講者のバリアフリー・ユニバーサルデザインの理解の度合いに対応可能です

  • 初心者から経験者まで、受講者の理解の深度に合わせた研修運営が可能です
  • バリアフリー・ユニバーサルデザインについて、初心者の方から、既に関連の研修を受講された方々まで、修得の経験や理解の深度については、幅広い方々に柔軟に対応した研修運営が可能です。
  • 他の関連研修と組み合わせて実施すると更に有効です。

2.研修の内容

2-1.研修コンテンツの種類
  • 本研修は、障害のある当事者が講師となり、講師が直面する日常的な問題・課題を含むシーンを取上げており、複数の障害別のコンテンツの提供が可能です。
  • WEB研修のコンテンツもあります。

研修コンテンツ 集合対面研修 WEB研修
【車いす編】
・車いす使用者がエレベータに乗れず、上下階への移動ができないシーンから考えます。
可能 可能
オンライン方式
(オンデマンド方式)
【聴覚障害編】
・口話による会議と手話による会議で、情報保障があるにも関わらず、会議への参加(発言)が困難なシーンから考えます。
可能 可能
オンライン方式
【精神障害編】
・電車のシートに横になっている乗客への、車掌や乗客の様々な対応方法のシーンから考えます。
可能 検討中
オンライン方式

2-2.車いす編

(1)研修のポイント

  • 車いす使用者の階層移動にはエレベーターが必要不可欠な手段ですが、外見からは元気に見える人が利便のために使用していることが多いように見受けられ、車いす使用者の利用を困難にしています。
  • このような困難は何が原因で発生しているのか、多様な視点から考え、更にその解決策について検討する中で、障害の社会モデルを学ぶ研修です。

(2)講師プロフィール

  • 山嵜 涼子氏

自立生活センター小平、DPI日本会議(バリアフリー部会)所属。
電動車いす使用。

(3)研修プログラム(WEB研修/オンデマンド方式の場合)

ステップ 時間 内容
導入 2分 ・自己紹介(エピソード)
・研修の狙い(=エレベーターに乗れないという課題を一緒に考えよう)を伝えます。
・研修の流れ(ステップ1〜3)を説明します。
【動画@上映】
説明
1分 ・エレベーターを待つ車いす使用者、エレベーターの戸が開くと満員で、乗っている人皆が視線を外して知らん顔のまま戸を閉め、車いす使用者を置き去りにしていきます。
【ステップ1】
講師の体験談
講師との対話
4分 ・動画コンテンツにより、このような問題が起きていることが現実にあることを実感し、理解します。
・講師が現実に遭遇している生々しい現状を語ることで、どれだけ不利益(不当な差別)を受けている現実があるかを理解します。
【ステップ2】
個人ワーク
(グループ討議)
要因の分析
15分 ・いろいろな要因によって、問題が発生しているという多角的な視点を獲得します。
・要因の分析において、自分や周囲の人という「人」の対応に帰属する問題だけでなく、「施設」や「制度」、「教育」といった社会の様々なことにも要因があること(=社会モデルの視点)を理解します。
【ステップ3】
要因グループに対する解決策の検討
講評
8分

25分
・要因ごとの解決策を考えることで、やさしさだけで解決できない、解決すべき問題ではないことを理解します。
・社会や環境への働きかけが重要であること、社会として考えていくべき課題であることを認識します。(=社会モデルをベースとした解決策の理解)その上で自らの行動を見出します。
【まとめ】
動画A・結び
5分 ・社会モデルをベースとした行動イメージ(共生社会の実現方法)を具体的な動画で補強します。
合計 60分

2-3.聴覚障害編

(1)研修のポイント

  • 会社で日常的に行われている会議に、聴覚障害者が情報保障(PCノートテイク)を受けて出席しますが、聴者と同じようにタイムリーに意見交換に参加できない状況の動画を視聴します。その後、会議の使用言語が手話になるという環境が逆転した場面で、聴者が情報保障(PCノートテイク)を受けて出席する動画を視聴し、情報保障という環境整備の実情から、障害の社会モデルを学ぶ研修です。

(2)講師プロフィール

  • 柴田留理氏

特別支援学校教諭、その後空港の国際線担当グランドスタッフとして勤務し飛行機や空港のユニバーサルサービスに携わった。5歳のときより難聴、手話使用。



(3)研修プログラム(WEB研修/オンライン方式の場合)

ステップ 時間 内容
開会 2分 ・受講について説明
導入
趣旨説明、自己紹介等
10分 ・聴覚障害者の現状説明。(クイズ)
・美術館での経験談、気づかれない現状。
【動画@上映】
動画
9分 ・上映動画の中から10ヵ所以上の問題点を探します。
・動画は口話を使う「いつもの会議」のシーン、聴覚障害者の出席者は1名で、情報保障。(PCノートテイク)があるが、スムーズに会議に参加できているか?
問題点について
対話
10分 ・動画視聴後チャットで各自問題点を挙げます。(2分)
*オンライン研修の場合はチャット機能を使用します。
・講師がコメントを読み上げて紹介し解説を加えます。
【動画A上映】 12分 ・上映動画の中から10ヵ所以上の問題点を探します。
・動画は、手話が使用言語の「いつもと違う会議」のシーン、聴者は1名で、情報保障(PCノートテイク)があるが、スムーズに会議に参加できているか?
問題点について
対話
10分 ・動画視聴後チャットで各自問題点を挙げます。(2分)
・講師がコメントを読み上げて紹介し解説を加えます。
「解決するために」
意見交換
13分 ・どちらの会議にも問題点がありましたが、それらを解決する方法についてチャットで各自解決策を挙げます。(3分)
・講師が解決策を読み上げて紹介し解説を加えます。
「障害の社会モデル」
解説
7分 ・環境が変わると情報困難者が変わる。会議に参加できないのは環境に原因がある。このような社会的障壁により、社会参加が阻害されていることに気づきます。
・障害は環境にあるという考え方は世界中で共有されている考え方であると紹介します。
【まとめ】 17分 ・気づいたことに基づき、今後どのように行動していきたいかチャットで各自挙げます。(2分)
・講師が行動提案を読み上げて紹介し解説を加えます。
合計 90分

2-4.精神障害編

(1)研修のポイント

  • 鉄道の座席で横になっている乗客に、車掌がどのように対応したか、複数の対応シーンを見ながら、横にならざるを得なかった乗客の視点を通して、人的対応や乗車ルールといったソフト面の環境と、精神障害者の関係から障害の社会モデルを学ぶ研修です。

(2)講師プロフィール

  • 山田 悠平氏

 全国「精神病」者集団・運営委員
 一般社団法人 精神障害当事者会ポルケ代表理事

  • 桐原 尚之氏

 全国「精神病」者集団・運営委員

(3)研修プログラム(集合対面研修の場合)

ステップ 時間 内容
導入
趣旨説明
10分 ・研修の目的:障害の社会モデルについて解説します。
・“障害”とは何かについて、障害の原因や責任を個人に問うのではなく、何故生きづらい社会なのかを、改めて考えてみます。
【ステップ1】
「動画@上映」
5分 ・動画@「横にならないでください」上映。(約5分)
・電車のシートに横になっている男性に、車掌が座るように促します。男性はどのようにすれば良かったか、車掌はどのように対応すれば良かったのか、個人個人で考えます。
・グループ討議で意見を出し合うことで、様々な見方(視点)があることに気づきます。
【ステップ2】
グループ意見の発表
35分 ・グループで意見交換。(20分)
・グループ意見の発表。自分のグループ以外の多様な視点があることを学びます。(10分)
・講師との意見交換から、「シートに座る」という社会のルールの背景について目を向けていきます。(5分)
【ステップ3】
「動画A上映」
5分 ・動画A「体調 悪いんですか」上映。(約5分)
・電車のシートに横になっている男性に、車掌が体調を気遣い、座れないほどに具合が悪い場合を想定し会話します。
【ステップ4】
グループ討議と、意見の発表
25分 ・動画@と同様にグループ内で討議を行い、動画@と何が違うのかについて、グループで意見を出し合います。
・動画@との変化について、他のグループの意見を聞くことで、共通の認識を獲得します。
・講師との意見交換から、電車では横になってはならず、「シートに座る」という社会のルールについて目を向けていきます。
【まとめ】
補強、結びと閉会
10分 ・社会モデルの視点から「電車で横になっている」ことに対して、何をすべきなのかについて振り返ることで、社会モデルの視点(考え方)を獲得します。
・多様な人がいることを前提にした社会のありようを考え、個人個人の対応や行動する動機づけへと結び付けます。
合計 90分

3.研修の運営について

3-1.研修運営に係る確認事項

(1)研修形態

  • 集合対面研修とWEB研修が選べますので、ご相談ください。
  • WEB研修は原則オンライン方式で、講師との対話を行いながら進行します。

(2)研修形態
@研修時間 :90分を標準とします。(質疑応答を含む)
A動画の視聴:動画の視聴ができる環境が必要です。
Bグループワーク:講師からの問いかけ(問題点の発見、解決策の検討など)に、グループで意見交換して発表し又は講師の問いかけに回答する方法とします。
*WEB研修の場合は、受講者の通信環境や研修場所の環境により、実施方法や進め方を協議させて頂きます。
Cアンケート:研修内容の評価、研修効果等に関するアンケートにご協力をお願いします。

(3)集合研修会場

  • 講師及び受講者、事務局スタッフに車いす使用の人が参加している場合、会場のバリアフリー環境が必要です。(会場までのバリアフリー経路、会議室のバリアフリー、多機能トイレの確保等)

(4)情報保障

  • 講師に係る情報保障のほか、受講者に対応した情報保障につきましては、ご本人が求める情報保障の方法を伺ったうえで、適切で、対応可能な方法を、ご本人、研修主催者、事務局、情報保障提供団体等と協議致します。

(5)研修費用
@講師謝金(30,000円+税)、交通費(実費)
A運営支援費(研修企画、コーディネート、研修当日の運営支援等の事務局経費は応相談)
B情報保障費(必要により手話通訳、文字通訳、点字或は音声読み上げテキスト等の費用)
C会場費・通信環境維持費・文具等消耗品費(研修主催者様でご準備下さい)

(6)研修実績(2017〜2021年度)

  • 地方公共団体(3回)
  • 社会福祉協議会(1回)
  • 公共交通事業者(8回)
  • (一社)日本福祉のまちづくり学会(WEB研修/2回)
  • 私立大学(7回)
  • 公立中学校(1回)
  • 民間企業(1回)

3-2.研修コンテンツの問合せ・申込先

  • 一般財団法人 国土技術研究センター
    都市・住宅・地域政策グループ(沼尻)
    TEL 03-4519-5003  https://www.jice.or.jp/ 
  • 公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団
    バリアフリー推進部(澤田)
    TEL 03-5844-6265  http://www.ecomo.or.jp/ 

避難施設等のバリアフリー環境整備に関する研究〜東京消防庁が認めた防災マップ〜

研究目的

 この研究は、災害時においての高齢者・障害者等の要配慮者の避難環境の向上に向けて、国土交通省総合政策局「災害時・緊急時における避難する経路・場所のバリアフリー化に関する研究」(外部リンク)をもとにして、東日本大震災を経験した仙台市太白区東四郎丸地域、東京都内の密集市街地である板橋区清水町地域においてケーススタディを行い、ハード・ソフトの対応策を検討したものです。

 仙台市太白区東四郎丸地域では、介護予防や地域交流を実施するNPO法人「FOR YOUにこにこの家」、障害児放課後デイケアを実施する「特定非営利活動法人つばめっこ」等と連携しながら、小・中学校への避難訓練をして地域の状況を把握しました。板橋区清水町地域では、地域住民のネットワークである「おたがいさまネットワーク」と連携し、「防災・減災合同体験学習」の企画・実行し地域における点検や課題の抽出を行いました。

研究成果

 高齢者・障害者等の要配慮者の置かれている状況によって災害時の避難支援のあり方は様々といえます。

 災害対策基本法では災害時避難行動要支援者名簿を作成し支援者等が支援をすることとしていますが、本研究では、この具体的な方策として、要配慮者の身体状況等を記した事前調査書の活用、避難経路・避難所等のバリアフリー点検を通じた「防災マップ」を提案しました。防災マップの作成を含む活動は、東京都消防庁主催「第11回地域の防火防災功労賞」で「優良賞」を受賞しています。(受賞者「おたがいさまネットワーク」)

ダウンロード

板橋区清水町地域周辺の防災マップ

板橋区清水町地域の活動紹介(JICEレポート第26号)

第11回地域の防火防災功労賞(外部リンク:東京消防庁HP 平成27年2月9日公表資料)