JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第9回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

自動漏水検知修復システム (第9回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称自動漏水検知修復システム
副題水と緑を守る廃棄物処分場におけるしゃ水技術
応募者名(株)淺沼組(※)
技術開発者〔(株)淺沼組〕下西四郎・森山保彦/
〔(株)田中〕村上 豊
共同開発者(株)田中

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 廃棄物・リサイクル対策については以前から様々な対処がなされてきたが、依然として廃棄物の発生量は膨大である。新しく廃棄物処分場が作られなければ、あと数年で既存の処分場が満杯になってしまう。新しい廃棄物処分場の建設は急務であるが、地域住民には処分場の安全性に対し「有害物質が地盤に漏れ出し地下水汚染等を引き起こすのではないか」といった不安があり、建設用地の確保は年々困難なものとなっている。

 このような背景から、地域住民の理解を得るため、廃棄物処分場において浸出水の地盤への漏水を確実に防ぎ、かつ地域住民に安全性が理解されやすい技術を確立する必要があった。

2.技術の内容

 廃棄物処分場においては、周辺地盤に漏水することのないよう廃棄物の下にしゃ水シート等を敷く必要がある。しかし、このしゃ水シートは鋭利な廃棄物等により破損してしまう可能性があり、しゃ水シートの破損を検知する設備の設置が指針によって定められている。

 本技術は、地盤への漏水を確実に防ぐことで安全な生活を確保し、地域住民の理解を得ることを目的とした技術である。図―1のように区画分けをした袋状のしゃ水シートに検知管を接続し、漏水の自然流下により容易に破損を検知する。袋の中には非常に水を通しやすい透水シートを介在させてあり、下部のしゃ水シートが破損した場合でも地盤へ漏水を流出させない。

 破損を検知した場合は、管理室のパソコンにデータを送り警報機を鳴らす。また、漏水を検知した管からコロイド溶液(ベントナイトの水溶液)を注入し、ベントナイトが土中で膜を形成する効果によって破損部を修復する(図―2)。さらに、そのまま袋の中をコロイド溶液で満たしておくことにより、以後破損が生じた場合は破損部よりコロイド溶液が漏れ出し自動的に破損を修復するため、コロイド溶液を注ぎ足すだけで破損を何度でも自動的に修復できる。

3.技術の効果

 従来技術と比較して約15%の全体コスト削減を可能とした(グラフ―1)。また、従来技術と比べ以下のことを可能とし、周辺環境への安全性を確保した。

1.連続的なモニタリング 定期的な破損の検測ではなく、24時間連続的なモニタリングができる。
2.容易な破損の修復 破損部の上に埋め立ててある廃棄物を除去することなく破損部を修復できる。
3.複数回破損の修復 破損した箇所の修復後に再度同じ箇所で破損が起こっても検知・修復できる。
4.漏水の量・水質の確認 漏水を検知管により回収することで、その水量と水質を確認できる。
5.モニタリングの省力化 専門的知識を要せず検知・修復ができ、パソコンのみで管理できる。

4.技術の適用範囲等

・全ての廃棄物処分場に適用できる。
・施検知区間を200〜500m2程度の適切な面積に区画分けをすることが望ましい。

5.技術の適用実績

 長泉町一般廃棄物最終処分場整備運営事業に係わる建設工事(写真―2)、
 平成16年8月〜平成18年3月 他1件(写真―1)

写真・図・表