JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第9回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

パラレル構法の開発 (第9回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称パラレル構法の開発
副題斜めPC鋼材を応用した外付け耐震補強構法
応募者名鹿島建設(株)(※)/(株)富士ピー・エス
技術開発者〔鹿島建設(株)〕五十殿侑弘・荒木玄之/
〔(株)富士ピー・エス〕長尾コ博・田中恭哉

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 近年、学校施設等の公共建築物を対象として耐震診断・補強が積極的に進められている。これまでの耐震補強技術は、耐震壁の増設・新設や鉄骨ブレース増設など、既存建物内部に補強部材を設置する方法が主流であり、居ながら施工や工期の制約、および施工時の振動・騒音や粉塵等が補強工事の問題となっていた。また、学校施設等では補強後建物の使用性の面から眺望や通風・採光を妨げるなどの課題があった。そこで、既存建物の外部から補強する技術で、補強後の室内からの眺望や通風・採光を確保できる技術の開発に着手した。

2.技術の内容

 本技術は、既存建物の外構面に新たに基礎とプレキャスト補強柱を新設して、PC鋼材を斜めに配置・緊張したフレーム(パラレルフレーム)を、既存建築物の外構面に取り付けて補強するものである。基礎部はあと施工アンカーによる接合、パラレルフレーム梁と既存梁部はPC鋼棒により圧着接合するものである。斜めPC鋼材に予め初期緊張力を導入しているため、建物の変形に応じて引張側PC鋼材がさらに伸び、圧縮側PC鋼材が初期導入力を開放することで、引張側と圧縮側の左右の斜めPC鋼材が地震時の慣性力に抵抗する。また、斜めPC鋼材は弾性範囲内で伸縮するために補強後建物の地震後の残留変形を小さくできる。

3.技術の効果

 パラレル構法は、既存建物の内部をほとんど触ることなく外部から補強でき、プレキャスト部材を使用するため工期を短縮することができる。そのため、学校施設の補強工事では夏休み期間での工事が可能であり、建物を使用しながら補強工事を行う「居ながら施工」も可能であるため、工期の制約が少なく、施工時の振動・騒音や粉塵等も低減することができる。

 また、斜めPC鋼材の径が細いため、室内から見てもほとんど気にならず、補強後の室内からの眺望や通風・採光を確保でき、使用性の面からもほとんど影響を与えない。補強後も意匠的に美しい景観を提供することができる。さらに、斜めPC鋼材が耐候性・耐食性に優れているため、メンテナンスが不要である。

4.技術の適用範囲等

 既存の鉄筋コンクリート造建築物で、コンクリート圧縮強度が13.5 N/mm2以上である建築物の耐震補強に適用できる。用途としては幅広く適用可能であるが、特に眺望や通風・採光などの使用性を重視する学校施設や事務所、医療施設、住宅施設などの耐震補強に適している。また、平面形状としては凸凹がない整形で、スパン数が多い建物に適している。

5.技術の適用実績

 聖学院小学校校舎・体育館 耐震補強改修工事、
平成16年7月18日〜平成17年2月28日、 他11件(15棟)

写真・図・表