JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第10回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

せん断パネル型制震ストッパー (第10回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称せん断パネル型制震ストッパー
副題橋梁の支承部に適用する制震ダンパー
応募者名(株)横河ブリッジ
高田機工(株)
川口金属工業(株)
技術開発者〔(株)横河ブリッジ〕谷中 聡久・小池 洋平
〔高田機工(株)〕佐合 大・谷 一成
〔川口金属工業(株)〕鵜野 禎史・姫野 岳彦

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 兵庫県南部地震の以後,橋梁は耐震性能の向上が図られてきた.既設橋梁においても,耐震補強工事が実施されているが,施工困難や既設構造の耐力不足などの問題を生じる場合もある.特に,分散支承や免震支承は,支承が大規模となる,地震時変位が大きく桁遊間が不足する,軟弱地盤や常時負反力を生じる場合に適用できない等,既設橋梁への適用が困難な場合がある.このような耐震補強工事の問題に対しては,制震ダンパーの適用が効果的であると考えられ,構造が単純で経済的なせん断パネル型ダンパーに着目し,橋梁の支承部に適用する制震ダンパーを開発した。

2.技術の内容

 本技術は,せん断パネルに低降伏点鋼を使用した制震ダンパーで,鋼板を溶接した単純な構造である(図1).橋梁の固定支点部に可動支承と組み合わせて,機能分離型支承として適用する(図2).作動メカニズムは,常時・レベル1地震時までは固定部材として,レベル2地震時にはせん断パネルが降伏し,ダンパー部材として機能して地震エネルギーを吸収・消散する(図3)

3.技術の効果

 本技術の制震ストッパーを設置することで,従来の支承構造よりも耐震性の向上を図ることができる.図4に示した2径間連続桁橋の検討例では,1.固定・可動支承を用いたケースと比較すると,固定橋脚に生じる地震力を1/2程度に低減,2.免震支承や分散支承を用いたケースと比較すると,上部構造の地震時変位を免震支承の1/5,分散支承の1/6に低減できる.免震支承の適用できない,軟弱地盤や常時負反力の生じる支承部へも適用できる.

 また,耐震性向上効果により,既設橋梁の場合では,補強量の低減によるコスト縮減が図れ,特に基礎補強を回避できる場合は,コスト縮減効果が非常に大きい.また,安価な鋼製支承と制震ストッパーを組み合わせることで,免震支承や分散支承を用いた場合よりも,支承の製作コストを縮減できる.

4.技術の適用範囲等

・既設橋梁の耐震補強や新設橋梁,また,鋼橋およびコンクリート橋へ適用可能.
・桁形式橋梁をはじめ,トラス橋,アーチ橋および吊形式橋梁の補剛桁支承部へ適用可能.
・橋長が200m程度以下で,一点固定の支承条件の桁形式橋梁では,適用効果が高い.
・橋台などの剛性の高い下部構造へ制震ストッパーを設置できる場合には,適用効果が高い.

5.技術の適用実績

地方道路交付金工事 横手大森大内線(大上橋)(F197-10),平成18年12月〜平成19年8月  他5件

写真・図・表