JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第11回国土技術開発賞

地域貢献技術賞(国土交通大臣表彰)

連続画像作成技術「Mofix(ムーフィックス)」 (第11回国土技術開発賞 地域貢献技術賞)

応募技術名称連続画像作成技術「Mofix(ムーフィックス)」
副題災害時における高精細連続画像の活用と情報共有化について
応募者名〔株式会社エマキ〕代表取締役社長 菅家 忠洋
技術開発者〔株式会社エマキ〕後藤 良平

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 近年、地震や豪雨での災害が頻発し、特に平成20年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震は記憶に新しいところである。応募技術の開発契機は、災害調査、特に初動調査に重要な「今、どこで、何が起きているか」の情報収集が最も重要なことであることに着眼した。被災状況の詳細な把握には全体〜詳細までの画像が必要であり、従来の航空写真の単写真では詳細は確認できても、全体を見ようとすると解像度が低くなってしまい現況確認には不向きであった。それを改善する為、ヘリコプターからのハイビジョンビデオ撮影により取得し動画から高精細な連続画像を作成する画像処理技術を開発する事で、前後関係を確認できる詳細画像を現場で使用する事ができると考えた。また、もうひとつの課題である関係各機関との情報共有を、画像情報配信により的確に行うことができると考えた。

2.技術の内容

 システムの概要は、ハイビジョン規格の画質を損なわずに高精細な連続画像を作成する高精細な連続画像処理システムとする。
 ハイビジョンビデオカメラで撮影された大容量、高解像度動画に対応した画像処理システムで、被写体の状況をリアルに表現することを目的とし、ハイビジョン規格の画質(垂直解像度:1280pixel、1920pixel)を損なわずに短時間で長大パノラマ画像を作成する機能を有する。

3.技術の効果

● 画質を最優先とし、ハイビジョン規格の画質(垂直解像度:1280pixel、1920pixel)を損なわない解像度を確保した。
● 実処理時間を、撮影時間の10倍以内で可能とする。
(例:撮影時間1分を取込後、実処理時間10分以内)
● 作成された画像を関連機関へインターネット経由で配信し、情報共有化の効果を確認する。

4.技術の適用範囲等

1. 関係機関との連絡を必要とする大規模災害の状況把握に有効。
2. 本システムは、アナログ、デジタル、ハイビジョンの全ビデオに適応しており、航空、地上のあらゆる撮影動画から高精細な連続画像の作成が可能。
3. 長大構造物の維持管理における画像を活用した既歴管理が可能。

5.技術の適用実績

岩手・宮城内陸地震簡易モザイク画像作成業務、平成20年6月〜平成20年6月   他3件

6.地域への貢献

 本技術は、如何に正確に被災の状況を把握し、いち速く関係諸機関に伝達できるかに着目し、  第一報として被災地の詳細が分かる長大パノラマ画像を、デジタル合成技術によって提供するものである。これは、被災状況を被災地域はもとより全国へ迅速に伝達し、対策対応へ活用できるのは、現場及び周辺状況全体を把握できる長大な画像であるという考えに基づくものであった。

 新潟中越地震(平成16年10月23日発生)、中越沖地震(平成19年7月16日発生)の大規模震災時に出動し、各方面より活用され、評価された。

 平成18年度「四国テーマ設定技術募集(災害対応技術)」においては、繋ぎ目の無い高精細パノラマ画像を短時間で作成することで、産学官からなる評価委員会から高く評価され、TH-010024-AからTH-010024-Vへと昇格した。また平成20年春、四国地方整備局、四国4県、関連機関との情報連携をテーマにした防災訓練に参加し、防災ヘリからの伝送画像をリアルタイムに処理し、長大パノラマ画像及び状況報告を含む第一報を、自治体、関連機関へインターネットで送信、災害情報の迅速な共有による一歩進んだ初動体制の実現可能性が確認された。

 こうした様々な実績の中で、各方面よりご指導を賜り、さらに改良を重ねてきた。

 平成20年6月に発生した岩手・宮城内陸地震では、社団法人東北建設協会より、被災地をヘリから垂直に撮影したハイビジョンビデオ動画から、切れ目の無い高精細な連続画像を作成する任務を指示され、撮影総延長304qにおよぶ広範囲な被災エリアの画像を1枚の高精細画像として作成した。前後の被災状況、現場への安全な経路の検討等、震災発生後の日々変化する最新情報を提供することができた。緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)からも高い評価を受け、この画像は、国、宮城県、岩手県、近隣市町村、各団体へ配付することで、情報共有の重要性や、国と地方が連携した復旧計画の準備への一助となった。

 今後、更なる技術革新を進め、地域住民の安心・安全を第一に、大規模自然災害時の情報収集において、被災状況の第一報として、最大限に活用できるよう課題解決に努めたい。

写真・図・表