JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第11回国土技術開発賞

地域貢献技術賞(国土交通大臣表彰)

専用バケットを用いたホタテ貝中間育成施設のアンカーブロック撤去工法 (第11回国土技術開発賞 地域貢献技術賞)

応募技術名称専用バケットを用いたホタテ貝中間育成施設のアンカーブロック撤去工法
応募者名(株)西村組
技術開発者〔(株)西村組〕吉田 稔・川合 邦広

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 北海道のオホーツク海沿岸ではホタテ貝の管理型漁業が営まれている。ホタテ貝の養殖漁業は種苗生産と稚貝の育成を行って、一定サイズとなったホタテ貝を放流し、3年後に漁獲するものである。この中間育成の施設は水深50m〜60mの海域に設置されていて、一つの中間育成施設は延長約6,000mであり、この中間育成施設を固定するためには600m間隔でアンカーブロックが配置されている(図1参照)。これまで北海道のオホーツク沿岸では、発達した低気圧による波浪の影響で、ホタテ貝が大量に打ち上げられるなどして資源量が減少したことがあり、この対策として、放流海域を水深50m程度以上の海域に設定し直すことが望まれていたが、この海域とは、ちょうど中間育成施設が設置されていた海域であったため、中間育成施設を移設する必要があった。また、設置後数十年が経過したアンカーブロックでは、ブロック綱をつなぎ止めている鋼製の環が劣化して(写真1参照)強度不足となり、綱環を交換する必要も生じていた。そのため、問題点の多い従来技術に替わる新しいアンカーブロック撤去工法の開発が必要となった。

2.技術の内容

 水深が50m程度の海域で、その設置位置が未確認のアンカーブロック(14t〜20t)を、潜水士を用いずに撤去する工法。この工法は起重機船に専用バケットを取り付けて行うが、専用バケットの中心部には穴を設けている。この穴がガイドの役割を果たし、アンカーブロックについているブロック綱をたどってアンカーブロックに到達することができ、掴むことができる。

3.技術の効果

● 吊環・綱環が腐食・劣化していても、アンカーブロックを撤去できる。
● 従来工法よりも日当たり撤去個数が倍増したので工期短縮につながり、単価についても従来工法705,700円に対し、開発工法は322,200円(金額は経費抜き)まで低減した。
● 潜水士を用いないので、潜水事故のリスクがなくなり、安全性が高まった。
● 劣化した吊環・綱環を新しいものと交換・再設置し、施設の長寿命化を図っているが、これにかかる費用もコストダウンしている。
● 撤去したアンカーブロックを嵩上げするので、使用資材の減量につながっている。
● 設置する場所を変更する場合、新しい漁場の創設となり、水面を有効利用できる。

4.技術の適用範囲等

● 設置されている位置が分からなくても、ブロックにロープが付いていれば撤去できる。

5.技術の適用実績

ホタテ漁場中間育成施設整備事業種苗生産施設(中間育成施設工事)
平成20年5月〜平成20年10月   他1件

6.地域への貢献

 本工法の開発で中間育成施設が移設できるようになり、ホタテ貝の放流漁場を現在の海域よりも深い海域に変更でき、時化によってホタテ貝が打ち上げられて資源量が減耗する危険性が低下した。
 また、漁獲の支障となるアンカーブロックを撤去することで、ホタテ貝の放流漁場として適している、これまでの中間育成施設の設置海域を放流漁場にすることができる。これによりホタテ貝の生産量増大が見込まれ、一次生産者のみならず、水産加工業者にまでその波及効果が現れる。
 さらに、アンカーブロックの維持管理ができるようになり、今後も中間育成の継続で安定した収益を見込める。これらのことから、本工法の開発は地域経済の維持に大きく貢献している。

写真・図・表