JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第12回国土技術開発賞

地域貢献技術賞(国土交通大臣表彰)

ロングスパン・ポケット式落石防護網工法(第12回国土技術開発賞 地域貢献技術賞)

応募技術名称ロングスパン・ポケット式落石防護網工法
副題自然環境にやさしい高エネルギー吸収落石防護ネット
応募者名田中工業(株)/(株)第一コンサルタンツ
技術開発者〔(株)第一コンサルタンツ〕右城 猛
〔田中工業(株)〕田中登志夫
共同開発者愛媛大学防災情報研究センター 矢田部龍一教授
愛媛大学大学院 木下尚樹助教
(株)ロイヤルコンサルタント
日本プロテクト(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 高知県は地形が急峻で狭隘であるため、落石対策としてポケット式落石防護ネットを採用するケースが多いが、落石が支柱を直撃して破損させたり、衝撃力で金網の破網やワイヤロープを破断させたりする事故が多発している。道路管理者より、このような問題の解決を相談されたことを契機に、高知県内の企業と愛媛大学が連携して「ロングスパン・ポケット式落石防護網工法」の技術開発を行った。

2.技術の内容

 ポケット式落石防護網工法として、下記の3つの性能を満たす技術開発を実物規模の実証実験に基づいて行った。

  1. 400kJ以上の運動エネルギーを持つ落石を防護ネットで受け止めることができること(エネルギー吸収性能)
  2. 落石を受け止めた際に、金網の破網、ワイヤロープの破断が生じないこと(耐衝撃性能)
  3. 受け止めた落石が、防護ネットの裾から道路に抜け出さないこと(抜け出し防止性能)

3.技術の効果

  1. 落石の経路となる沢地形部を避けて支柱を設置することができる。このため、支柱や吊りロープが落石の直撃を受ける恐れがない。
  2. 横ロープに緩衝装置を装着するので、落石の衝撃力によって金網が破網したり、ワイヤロープが破断したりする恐れがない。400kJまでの落石なら確実に受け止めることができる。
  3. 落石を防護ネットで受け止め、セーフティネットというポケットでキャッチするので、落石が防護ネットの裾から車道に転がり出して、通行の邪魔をすることがない。
  4. 落石の運動エネルギーや地形条件によっては、従来工法より経済性や施工性の向上、自然の改変規模の低減といった直接的効果に資する。また、通行制限期間が短縮できるため、利用者便益が向上し、間接的な効果が期待できる。
  5. 本工法が斜面に設置されていれば、落石に対する恐怖がなくなる。安全・安心が得られる。

4.技術の適用範囲

  • 受け止めることができる落石の運動エネルギーは400kJ以下である。
  • 支柱間隔、すなわち金網を吊すワイヤロープのスパンは10m〜30m、金網の高さは最大30mである。
  • 設計対象となる落石の直撃を受けると、防護ネットは前方へ3mほど孕み出して落石の運動エネルギーを吸収するので、道路の建築限界に対する検討が必要である。

5.技術の適用実績

県道久礼須崎線 地域活力基盤創造交付金工事、平成21 年8月〜平成22 年1月   他12 件

6.地域への貢献

  1. 地形が急峻で狭隘な高知県では、落石の頻発する道路を生活道路として利用している人々が多い。本工法が斜面に設置されれば安全・安心を享受することができる。
  2. 本工法は経済性に優れるので、限られた予算で落石に対する安全性を高めるには有効である。
  3. 本工法は高知県内の企業によって開発された独自の新技術である。県外企業に頼ることなく地元の技術者と労働者によって設計施工が可能である。
  4. 本工法の部品を高知の企業で製造販売することで地場産業の振興と雇用機会の拡大が期待できる。

写真・図・表