JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第16回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

ハイブリッド機能および全自動運転システムを装備するグラブ浚渫船 (第16回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称ハイブリッド機能および全自動運転システムを装備するグラブ浚渫船
応募者名寄神建設(株)
技術開発者〔寄神建設(株)〕 西原 直
共同開発者住友重機械搬送システム(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

原油の需要が逼迫する懸念とともに、化石燃料由来の温室効果ガスの排出が増大し、地球環境問題の観点より環境に配慮した機械・技術が望まれている。

一方、港湾の建設、整備・復興工事の一躍を担うグラブ浚渫船は各種大型の機械が装備されており、搭載機械を駆使して作業する事により大量の化石燃料を消費し、大量の二酸化炭素を排出する。

その様な時代背景のもとに、省エネルギーで環境配慮の機械を装備し、更に浚渫作業員の高齢化・熟練作業員不足への対応等に考慮した浚渫全自動運転システムを装備するグラブ浚渫船を開発しました。

2.技術の内容

グラブ浚渫船の浚渫作業のタイムテーブルは、グラブ巻下げ・海底に着底・グラブ閉にて土砂を掴む・グラブ巻上げ・旋回・土運船への土砂投棄・旋回・次の浚渫位置へのグラブ巻下げを行います。従来は、この一連の作業においてグラブ巻下げ時に発生する回生エネルギーは再利用される事はなく、抵抗等により熱変換され大気に放出されていました。

そこで、エネルギーの有効利用する手段としてリチウム蓄電池を装備するハイブリッドシステムを構築しました。グラブ巻下げ時に蓄電池へ充電して、グラブ巻上げ時にその充電された電力を蓄電池より放出する事により省エネルギーを目指すハイブリッド装置です。

3.技術の効果

グラブ浚渫船の必要な動力は、グラブ巻上げ(土砂重量とグラブ自重)時の、最大能力より発電機関(電力)が決定されるが、巻上げ時に蓄電池より電力を補充する事により、必要な発電機関の体格を従来型より1/2〜2/3に下げる事が可能となる。初期搭載の発電機関が縮小される事により、従来型のグラブ浚渫船と比較して化石燃料の消費および二酸化炭素の排出量を削減する事が可能となる。

ハイブリッド装置および全自動運転システムを装備する事にしても、従来型グラブ浚渫船と浚渫能力・サイクルタイム等は変わらない。

4.技術の適用範囲

  • 港湾等での航路・泊地・床堀等の浚渫工事
  • 海岸等での浚渫工事

5.技術の適用実績

堺泉北港助松地区航路(-14m)浚渫工事(第二工区)
平成24年9月〜平成25年1月   他4件

写真・図・表

写真―1 浚渫用ハイブリッド装置

図-1グラブ巻上げによる電力の状況・図―2 グラブ巻下げによる電力の状況