JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第12回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

マジックボールシステム (第12回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称マジックボールシステム
副題堆砂除去システム
応募者名東京電力(株)/東亜建設工業(株)
技術開発者〔東亜建設工業(株)〕泉信也・宮下広樹
〔東京電力(株)〕小林敏晴
〔東京電設サービス(株)〕志村厚

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 水力発電用ダムの調整池や貯水池では、年々土砂が流入、堆積しており、堆砂の進行が、貯水容量の低下を促し、結果として発電電力量の減少を引き起こすことになる。このため、堆砂の除去を行い、適正な維持管理を行うことが必要となる。

 そこで、東京電力株式会社と東亜建設工業株式会社は、平成18 年度にヘリコプターで運搬でき、クレーンを使用せずに組立、配置が可能な、浚渫能力が900m3 /月の堆砂除去装置の共同開発に着手し、平成19 年度末に完成させた。

2.技術の内容

 マジックボールシステムは、それぞれがヘリコプターで運搬、設置可能なマジックボール(球形の堆砂除去装置)、マジックプレーサ(球形の堆砂除去装置搭載の浮体)、マジックコントローラ(遠隔操作盤)、マジックビューア(施工管理システム)から構成されている。これらを組み合わせることにより、アクセス道路が無い山間部の貯水池や調整池の堆砂除去が可能となると共に、「@マジックボール本体の球体下部と堆砂の接触面では薄い流水層が形成され、早い流速で堆積土砂を崩しながら吸引すること。Aマジックボール本体内部の上方に配置した浮体と下方に配置したウエイトのバランスにより、マジックボールは常に直立姿勢を保ち、安定した施工ができること。Bマジックプレーサに搭載された昇降ウインチの張力を検知してマジックボールの水底への接地圧を最適化すること。」により、効率的に土砂を吸引することが可能となる。

3.技術の効果

 調整池の水を抜かずに施工が行えるので、発電所を停止する必要がないため、1ヶ月間の溢水電力約3,600MWhを防止できた。
約5kmの重機搬入用仮設道路が不要となったため、これを整備する工期が1ヶ月削減できた。
堆砂の除去を行なうのにダムの管理用電力を使用しているため、堆砂除去作業によるCO2の発生がゼロとなり、地球温暖化防止に寄与することができた。
各装置を遠隔で操作するので、堆砂の除去作業時に人身事故が生じる原因がゼロとなり、安全性が向上した。

4.技術の適用範囲

 水力発電用ダムの調整池や貯水池の浚渫

5.技術の適用実績

平成20 年度高瀬川第五発電所土砂排除工事、平成20 年10 月〜平成20 年12 月  他2件

写真・図・表