JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第14回国土技術開発賞

地域貢献技術賞(国土交通大臣表彰)

全天候フォレストベンチ工法 (第14回国土技術開発賞 地域貢献技術賞)

応募技術名称全天候フォレストベンチ工法
副題樹木を活かした法面保護工法
応募者名(株)国土再生研究所/中林建設(株)
技術開発者〔(株)国土再生研究所〕栗原 光二

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 我国で初めて開通して約30年が過ぎていた名神高速道路は、沿線に住宅化が進み渋滞は恒常化していた。その改築事業に携わったとき、渋滞問題が解決したとしても、沿線の方々は良好な環境と景観が不可欠と痛感した。高速道路斜面を森で覆うことができれば、遠い将来に亘って緑豊かな高速道路が地域の誇りとなり、沿線の方々の名神高速道路への親しみも高もあると確信した。

2.技術の内容

斜面の崩壊を防ぐために多く用いられているコンクリートに代わり、軽量な透水性土留柵とアンカーの引張力で構成される階段状の土砂擁壁工法である。アンカーとパイプフレームで構成される透水性受圧板はワイヤーで接続され、地震や大きな力に対して追従性を有し、破壊しにくい構造となっている。透水性受圧板と有孔管の働きで、斜面内部の水位は常に一定で、豪雨時の水圧上昇による斜面崩壊を受けない。土留柵の表面には間伐材を取付け、造成される水平面には植樹をすることで、斜面の景観が向上すると共に、樹木の成長により森が再生し、時間と共に斜面が強化されていく工法である。

3.技術の効果

近年多発する局地的豪雨や大きな地震において、当工法の透水性や軽量性、そして地震力に追従する力により、約80件にも達した施工事例の全てが、被害を受けずに斜面を守り、そして景観豊かな森へと戻りつつある。本技術を構成する透水性受圧板は、従来使用されてきたコンクリートを必要とせず、自然豊かな景観を造り出した。また、コンクリートを使用する吹付法枠工に比べ壁面を約75%軽量化させたことで、崩落に対する安全性の向上と施工性をも向上させた。間伐材と現地発生土による埋戻し土砂の活用は、余剰資源の再利用を促進させ、環境負担を減らすことが出来るようになった。

4.技術の適用範囲

法面の下側から施工する場合、5分勾配では重機稼働範囲が施工可能範囲となり、法高15m程度までが対応範囲となる。人力で施工する場合、コストは多少割高となるが、法高に制限なく施工が可能。1割以下の緩い勾配で、小型重機の施工幅が各段にできる場合は、法高に制限なく施工できる。法面の上部から逆巻き工法で施工する場合は、法高に制限なく施工が可能となり、現在最大で30mの高さまで施工実績がある。地山土質は、土留壁をアンカーで固定することから、鉄筋挿入工で定着が可能の土質であれば対応できるが、超軟弱土や硬質岩などでは、アンカーの定着不足に注意を要する。

5.技術の適用実績

圏央道八王子ジャンクション城跡トンネル工事、平成19年2月〜平成19年6月 他79件

6.地域への貢献

環境保護地区や歴史的産物がある山地などでコンクリートでの斜面防護を行うと、地球環境や景観が悪くなるだけでなく、森の再生で健全な地球を後世に残そうと望む地元関係者や自然保護団体の声に応えられない。当工法は斜面防護と森の再生が可能なため、これらのような場所で数多く採用されてきた。その代表例となる東京の高雄山では切取った斜面を森に回復させ、大阪能勢町では歴史ある民家と神社の土砂崩れを景観豊かに復元した。

写真・図・表

仙台市の市道拡張工事で採用された本技術の施工事例。東北地方に位置するこの地では、完成後に幾つもの大きな地震に見舞われたが、斜面は破壊や損傷を受けなかった。

  • 2008年6月14日 岩手・宮城内陸地震 M7.2 震度5弱
  • 2008年7月24日 岩手県沿岸北部地震 M6.8 震度5強
  • 2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震 M9.0 震度6弱