JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第14回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

土研式水位観測ブイ(投下型) (第14回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称土研式水位観測ブイ(投下型)
副題ヘリコプターからの投入による天然ダム湛水位の自動観測システム
応募者名(独)土木研究所/(株)拓和
技術開発者〔(一財)砂防・地すべり技術センター〕田村圭司/〔(独)土木研究所〕山越隆雄/〔(株)拓和〕伊藤洋輔

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 平成23年の台風12号災害等で多数形成された天然ダムにおいては、越流や決壊による土石流等の甚大な二次災害を引き起こす可能性があるため、リアルタイムでの湛水位の監視を早期に開始することが非常に重要である。従来技術では人力で機器等を運搬・設置しなければならないため、観測を開始するまでに多くの日数を要し、作業員の危険も伴っていた。

本技術は、当初、平成20年の岩手・宮城内陸地震で形成された天然ダムの湛水位を監視するために開発・適用され、災害対応業務等に一定の役割を果たしたが、早期の完成が最大の目標であったことから多くの課題が残った。その後、土砂災害防止法の改正とも連動し、装置の構造や機能を中心に鋭意改良を重ねてきており、台風12号災害では4箇所の天然ダムでその高い効果が実証され、行政や地域住民等のニーズに応えられる技術として完成させることができた。

2.技術の内容

 

ヘリコプターで運搬し投下するだけで天然ダムの湛水位を継続して観測・監視できる装置であり、通信機器等を搭載したブイ部と水位計を収容したケージ部、水位計と通信機器とを結ぶケーブルから構成される。装置は、一体となった形で安全に空輸でき、本装置が着水しヘリコプターから切り離されると、ブイ部が分離して浮力によって水面に浮き、ケージ部がケーブルを繰り出しながら自重によって着底し設置が完了する仕組みになっている。

 計測した水位データは、低軌道周回衛星を経由しEメールで取得するシステムとしており、受信側パソコンの監視用ソフトで運用する。狭隘な山間地であっても通信が可能、作業員による現場でのアンテナ調整が不要、消費電力が少ない等の特徴がある。また、行政機関等のホームページに専用のサイトを開設し、一般向けに水位の状況等を提供できるシステムとしている。

3.技術の効果

地域住民等の安全や安心を確保するために、最も基本的な情報としてリアルタイムで水位の状態を監視し提供することができる。さらに、その情報を基にして、地域の防災担当機関が土石流等の発生を予測し、適時適切な避難・誘導や事前の防災対策等の必要な措置を講ずることが可能となるものであり、もって地域社会の安全と安心の確保に大きく貢献するものである。

4.技術の適用範囲

地震・豪雨等によって形成され、以下の条件を満たす天然ダムに適用される。

  • 設置位置の水深が40m以内、監視期間が3か月以内であること。
  • 適用用途は、ヘリコプターが有視界飛行でき、上空の広さが100m×100m以上確保できること。
  • 電磁フックを有する荷吊り可能重量70s以上のヘリコプターを手配できること。

5.技術の適用実績

  • 平成20年岩手・宮城内陸地震で発生した湯浜地区の天然ダム、平成20年7月〜現在に至る
  • 平成23年台風12号で発生した紀伊半島の4件の天然ダム、平成23年9月〜平成24年2月

写真・図・表