JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第15回国土技術開発賞

地域貢献技術賞(国土交通大臣表彰)

急傾斜地超大型モノレール運搬システム (第15回国土技術開発賞 地域貢献技術賞)

ミッション急傾斜地超大型モノレール運搬システム
応募技術名称急傾斜地超大型モノレール運搬システム
応募者名内田産業(株)
技術開発者〔内田産業(株)〕内田 昭治・内田 晴久

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 地すべり防止対策などの法面防災工事において、急傾斜地での資機材と人員の運搬手段としてモノレールが活用されだした。年々、発注者及び施工者より積載物の大型化の要望が大きくなり、また急傾斜地での資機材の積み降ろし作業が発生するため、その作業にかかる労力と安全性に課題があった。これらの課題に対応し、自重3〜4tのバックホウやボーリングマシン、土砂・生コンなどの資機材をより安全に効率よく運搬する超大型モノレール運搬システムを開発した。近年では、自然環境への影響が大きく、コスト・工期を要する工事用仮設道路の代替として、山岳地帯の橋梁下部工事やトンネル抗口近辺の法面防災工事での資機材運搬にも活用され始めた。

2.技術の内容

 急傾斜地(35〜50°)法面工事等において重量物の資機材を運搬する超大型モノレールで、最大積載4t/最大斜度45度/分速40mの能力を有する動力車と多種多機能の以下4つの特別仕様台車(写真1〜4)で構成されている。

  • フラットデッキダンプ台車は、重機等(4トン)を運搬でき急傾斜にある作業構台に合わせ荷台を水平調整が可能でバックホウ等が自走で荷降しできる。
  • 三転ダンプ台車(積載2トン)は、油圧ショベル等にて土砂の搬入ができ、ダンプによる一括排出ができる。
  • ミキサー台車(1m3)は、生コンを攪拌しながら、また傾斜補正をかけながら漏洩させず走行できる。
  • クレーン台車(2.5トン吊り)は、クレーンアーム回転ベース台座から急傾斜に合わせ0°〜45°まで傾斜補正可能で傾斜地でも安全なクレーン作業ができる。

3.技術の効果

 2段タイ材地下施工法は、従来の岸壁補強工法(例えば、前面新設矢板前出し工法や背面薬液注入固化工法)に比べ、以下の効果がある。

【運搬の安全性向上と合理化】運搬する資機材に応じて、フラットデッキダンプ台車、三転ダンプ台車、ミキサー台車、クレーン台車の使用が可能で、重量物等を安全に効率良く運搬できる。

【工期短縮とコスト削減】規模の大きい工事用仮設道路やケーブルクレーンに比べ、架設・撤去に要する工期を短縮でき、かつコストを削減できる。また簡易的な架設手法のため、緊急性の高い工事にも対応できる。

【周辺環境への配慮】設置に伴う大規模伐採や地形改変が必要無く、二次災害リスクを回避でき、自然環境を維持できる。占有(借地)面積も最小限に抑えられ、走行に伴う振動も抑制できる。

4.技術の適用範囲

  • 急傾斜地対策の自然法面又は人工法面(傾斜50°まで)
  • 設置距離は1,000m程度以内
  • 振動が少ないので民家の密集した地域での施工にも対応

5.技術の適用実績

第二阪和国道深日高架橋他下部工事、 平成24年11月 〜 平成25年3月  他20件

6.地域への貢献

 近年の記録的な大雨や大地震による土砂災害対策、山間部における未整備自動車道路新設に伴う橋梁下部工事などに、当社超大型モノレール運搬システムを活用することにより、工事用仮設道路などに比べ山間部での大規模な伐採や地形改変が無くなる。そのため二次災害リスクが回避でき、自然環境を維持したまま資機材の運搬が可能になり、また安全で効率的な工事施工を実現している。防災・社会インフラ整備事業の円滑な遂行に貢献し、特に京都府・奈良県・和歌山県での災害復旧工事、自動車道路新設工事で活用されている。

写真・図・表