JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第16回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

アクティブ・ノイズ・コントロールを用いた建設機械騒音の低減技術 (第16回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称アクティブ・ノイズ・コントロールを用いた建設機械騒音の低減技術
副題戸田式アクティブノイズコントロール
応募者名戸田建設(株)
技術開発者〔戸田建設(株)〕松岡 明彦・小林 正明

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

環境省の報告によれば、近年の騒音に関わる苦情件数は15,000件/年を上回り、そのうちの約1/3が建設作業に起因する。このように、快適な住環境を確保するために、建設工事における騒音低減対策は重要な課題である。

従来の建設工事騒音対策としては、防音壁や防音シートの設置が挙げられる。しかし、透過損失や回折に伴う減衰効果は高周波数帯域の音圧レベル低減には大きな効果がみられるものの、低周波数帯域においては明らかな効果がみられないのが実状であり、その低周波数帯域での低減が課題とされていた。

2.技術の内容

アクティブノイズコントロール(ANC)とは、マイクやスピーカ等の電気音響機器を利用し、対象とする騒音(波)と逆位相の音(波)を重ね合わせることで音を低減する理論である。波を重ね合わせる原理上、低周波数の騒音低減に有効であるが、従来、ANCの適用はヘッドフォンや設備ダクト内部等の局所空間に対してのみ報告されており、空間的・時間的変動が複雑な建設工事騒音への適用事例はみられなかった。

本技術は建設工事騒音の中でも、特に低周波数帯域にピークを有する建設機械のエンジンマフラー音にANCを適用したものであり、脱着可能な電気音響機器(マイクやスピーカ等)をエンジンマフラー近傍に設置することで多種多様な建設機械のエンジンマフラーから発生する低周波数帯域の騒音低減を実現した。騒音の発生源に対策を施すものであり、受音側での大がかりな設備や防音工事が不要であることも利点である。

3.技術の効果

@ 従来の対策では低減することが困難であった低周波数帯域の騒音低減が可能である。
A 高周波数帯域の騒音低減に有効な従来の騒音対策(防音壁や遮音シート等)と組み合わせることで広帯域の騒音低減が可能である。
B 建設工事現場周辺の音環境の改善に加え、掘削・揚重騒音に対する苦情や授業・会議への配慮等の騒音に起因する工事の遅延を短縮することが可能となった。

4.技術の適用範囲

・建設機械(掘削機、揚重機、ディーゼル発電機等)のエンジンマフラー騒音

5.技術の適用実績

・東京工業大学エネルギー環境イノベーション棟新営工事(平成22年10月〜平成22年11月 )他36件

写真・図・表

図ー1 戸田式アクティブノイズコントロールによる騒音低減のイメージ

  • 写真ー1 掘削機への設置状況(全体)
    図ー2 騒音低減効果の一例(掘削重機に適用した場合)
  • 写真ー2 掘削機への設置状況(詳細)