JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第6回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

GPS津波計測システム (第6回国土技術開発賞 最優秀賞)

応募技術名称GPS津波計測システム
副題GPSによる波浪・高潮・潮汐モニタリング機能を備えた大水深沖海域における津波早期検出システムの開発
応募者名 日立造船(株)
東京大学地震研究所
技術開発者日立造船(株)         寺田幸博
                伊藤恵二
                阿部武徳
                永田修一
                藤田孝
                吉田晴彦
                服部隆二
                三宅寿英
                松岡幸文
東京大学地震研究所       加藤照之
(独)港湾空港技術研究所    永井紀彦
(財)阪神・淡路大震災記念協会 越村俊一
共同開発者(独)港湾空港技術研究所
(財)阪神・淡路大震災記念協会人と防災未来センター

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

近年、東海地震、東南海地震及び南海地震などの発生確率が示され、これらの海溝型地震に伴う津波に対する防災システムの充実が喫緊の課題となっている。有効な津波防災システムが構築でき、津波の監視・検知からデータの伝達・避難勧告、さらには防潮堤開口部の門扉の開閉制御に活用できる観測システムが実用化されれば、それは地域に住む住民に計り知れない安心感を与え、地域の発展基盤として大きな貢献が期待できる。また、日本列島だけでなく世界の沿岸に多数設置してネットワークで結び、これらのデータを活用することによって、世界的な災害軽減にも貢献することが可能になる。

2.技術の内容

従来の加速度計測ブイ方式や、海底水圧センサー設置方式とは全く原理を異にした海面変位計測装置である。すなわち、gpsで沖合洋上ブイの変位を計測して、津波を観測するシステム(gps津波計)を考案した。沖合展開可能なgps津波計として必要不可欠な海面変位への追随性の良いブイと係留系を設計施工し、新方式gps計測法、洋上・陸上のデータ伝送法、津波検出法、波浪データ解析法、津波伝播シミュレーション法を確立するとともに、リアルタイム常時データ公開方法及び自治体防災への活用方法などを明らかにして実用した。

GPS津波計

3.技術の効果

GPS津波計による情報は、海面の変位を数cmの精度で検出し、その観測情報をインターネットでリアルタイムに発信していることから、誰でもどこからでも観ることができる。その基本機能として長周期成分(津波)の検出が可能であることはもとより、直接水面変動を計測するので、波浪から、高潮、潮汐にいたる広い周期の海面変動の計測が高精度で可能である。このため、多機能化の点で従来の大水深海底設置式津波計に無い長所を有する。また、温度や塩分濃度の補正などの付加的計測値を必要としないことに加えて、海上に浮かぶ機器材への維持管理が必要なだけであり、経費の大幅削減が可能となった。

GPS津波計

4.技術の適用範囲等

GPS津波計による観測性能は、極めて広い周波数範囲でフラットな周波数特性を有していることが特徴である。このため、津波防災のみならず、波浪情報を必要とする船舶航行、漁業、港湾海岸施工などに対する適切な海象情報の提供が可能である。また、これまでは観測手段がなかった、沖合での潮汐計測データに地球科学分野や水産関係者の期待が高まっている。沖合に展開するGPS津波計は、気温、気圧、風向風速、水温、流向流速など多くの気象・海象情報を計測し、波浪・津波・高潮・潮汐の基本データとともに、海上の観測ステーションとしての役割を果たすことができる。さらに、リアルタイム津波情報とリアルタイム数値シミュレーションとの融合についての検討は、新たな津波情報研究のフロントランナーとしての貢献が期待されている。

5.技術の適用実績

室戸岬沖における津波監視および海象モニタリング他1件