受賞技術概要
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第20回国土技術開発賞
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- 第20回国土技術開発賞
創意開発技術賞(国土交通大臣表彰)
小型貝殻ブロックによる生物生息空間の創出(第20回国土技術開発賞 創意開発技術賞)
応募技術名称 | 小型貝殻ブロックによる生物生息空間の創出 |
副題 | 貝殻を活用した生き物の棲める環境回復技術 |
応募者名 | 海洋建設(株) |
技術開発者 | 海洋建設(株)片山真基・伊禮宙未 |
技術の概要
1.技術開発の背景及び契機
沿岸域の環境は、開発に伴う埋め立てや廃水等によって水質や底質の汚濁、藻場や干潟などの水生生物にとって重要な生息場が減少し、生物の生息が脅かされ、種の多様性や本来の生態系が危機に陥っている。開発前は豊富にあった藻場や岩礁に生息する生物が生息できる環境を整備することが急務となっている。そこで、貝殻の隙間には多くの生物が生息すること、貝類養殖業では貝殻の処理に困窮し、社会問題となっていることから、貝殻を再利用した小型貝殻ブロックを開発した(図-1)。
2.技術の内容
貝類養殖業で発生する貝殻を再利用した小型貝殻ブロックを用いて、沿岸海域の環境悪化に伴い減少した生物の生息空間を創出する技術である。増加した多種多様な小型生物による水質・底質改善効果が期待でき、水産資源の増加、漁獲増大にも貢献できる(図-2)。また、従来技術はコンクリート製の構造物(2m 角型コンクリートブロック)で海域に設置する際に重機を必要とするが、小型貝殻ブロックは人力で扱えるよう小型軽量化したため、コスト縮減や工期短縮、諸作業が軽減できる。
3.技術の適用範囲
- 生物が生息できる海域環境で構造物の安定が確保できる海域
- 港湾または漁港構造物や防波堤背後、桟橋下部の空間など(図-3)
4.技術の効果
- 貝殻が生み出すランダムな空間は、平面的な構造である従来技術に比べ、多くの生息空間を創り出す。内部に生息する生物量を比較すると、種数は約2倍、湿重量は約20 倍増加する。
- 従来技術と比較すると、製作工期は44%削減、人力設置を可能としたことにより設置費用は約80% 削減できた。また貝殻処理費用は20,000 円/t であり、再利用により処理費用が削減できる。
- 製作の一部は、年間約100 人の漁業者が行っているため、休漁期の雇用創出の場となり、漁業者自身が参加し環境改善に貢献できる。
5.技術の社会的意義及び発展性
本技術により、多種多様な小型生物が増加し、これら生物の活動による水質・底質改善効果が期待できる。環境改善効果により、小型生物や魚介類等の生息場が増加し、沿岸域の生物生産性・生物多様性が向上することで、海が再生し、水産資源も増大する。また、地元漁業との協調、循環資源の有効利用が求められる中で、貝殻を有効利用する技術は社会的意義が大きい。また、漁業資源の減少、貝殻の処理が課題となっている海外においても本技術を活用することが可能である(写真-2)。
6.技術の適用実績
平成27 年度境港外港地区防波堤(2)築造工事 平成27 年4月〜平成28 年3月 他29 件