JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第20回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

アーク矢板土留めとジャケットを一体化した横桟橋工法(第20回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称アーク矢板土留めとジャケットを一体化した横桟橋工法
副題プレファブ部材による急速施工、土留構造の経済性向上
応募者名JFEエンジニアリング(株)
技術開発者JFEエンジニアリング(株) 田中祐人
(国研)海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所 菅野高弘
JFEスチール(株) 塩崎禎郎

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 大量の物資輸送が可能な船舶の大型化に伴い、岸壁の大水深化が進んでいる。最近では水深16m 以上の桟橋が全国で増加しており、大水深に適したジャケット横桟橋が多数採用されている。 

 横桟橋の背後は荷捌き用のエプロンであるが、通常は埋立による土地造成が行われ、埋立土の土留が必要となる。本技術は、埋立による土地造成を伴う横桟橋を建設する際に、横桟橋と土留を合理的に一体構造にすることで、経済性や施工性を高める工法である。

2.技術の内容

 本技術は図1に示すように、鋼矢板セルの「アーク矢板土留」と前方支えの「ジャケット桟橋」を、一体化した桟橋工法である。「アーク矢板土留」は図2に示すように、ジャケットの陸側レグ間に幅500mmの直線形鋼矢板を、円弧(アーク)状に打設したものである。この土留の左右は図2のサドル部(鋼板)で連続しており、土圧はサドル部の充填グラウトを介して、支圧力でジャケットに伝達される。ジャケットは鋼管杭で支持された鋼管トラス構造で、水平剛性が高いので大水深桟橋であっても土圧に抵抗することができる。

 土留の面内周方向には引張力(フープテンション)が作用するので、鋼材強度を低減することなく引張強度を有効に利用することができ、土留の鋼重削減が可能となる。

3.技術の適用範囲

  • 鋼管杭やアーク矢板(直線形鋼矢板)が打設できる海底地盤
  • 背面の埋立てが伴う桟橋、護岸

4.技術の効果

 経済性や現地工期の比較を行うと、本技術は従来技術や類似技術に比べて一般的に10 〜 30% の工費縮減、工期短縮の直接的効果があることが分かる。また、図3の仙台塩釜港での工事実績を基に従来技術と比較すると、本技術は経済性で工費を10% 縮減することができた。さらに、現地工期を正に15% も短縮することができ、著しい直接的効果を実証した。この実証評価結果よりNETIS の活用効果調査において、B 評価(従来技術より優れる)を取得した。

5.技術の社会的意義及び発展性

 「港湾における生産性向上」や「21 世紀型インフラ整備計画」において、大型クルーズ船の受け入れ環境の改善や国際コンテナ戦略港湾などの機能強化が進められている。これらの計画において桟橋背後の荷捌きエプロンを埋立てる場合、本技術は経済的、かつ短工期で桟橋を構築できるので、整備事業の生産性向上に貢献する。

6.技術の適用実績

 平成26 年度 仙台塩釜港仙台港区中野地区岸壁(-14m)築造工事、平成26 年4月〜平成27 年5月他0件

写真・図・表