JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第20回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

ケーソン自動制御据付システム(第20回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称ケーソン自動制御据付システム
副題函ナビ−Auto
応募者名東洋建設(株)
技術開発者東洋建設(株) 加藤直幸

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 2017 年から国内の港湾工事において港湾i-Construction が導入され、3次元データを活用した施工の省力化・機械化が進められている。しかし、海上施工では気象・海象の自然条件が複雑であるため作業員の経験や熟練度に依存した施工法が主流である。そこでケーソン据付において、計測、注水、ウインチ操作を自動化したケーソン自動制御据付システム(函ナビ-Auto)を開発した。

2.技術の内容

 ケーソンの注水状況と位置情報を常時計測し、PC 画面上に表示する「ケーソンリアルタイム計測システム」と、それらの情報を元にケーソンを水平に沈降させるための注水作業と所定の場所へ移動するウインチ操作を自動化する、「注水自動化、ウインチ操作自動化システム」から構成される。

注水状況は、全てのケーソン隔室に設置した水位計により計測し、隔室毎の水位とケーソン隔室間の水位差のデータに演算処理される。また、ケーソン位置計測は自動追尾型トータルステーション2台と二軸傾斜計により行われ、計測値からPC により3次元位置情報に演算処理される。

これら隔室の水位情報とケーソンの姿勢・位置情報を元に、注水自動化、ウインチ操作自動化システムによって、ポンプの運転とウインチ操作を自動制御することにより、ケーソン据付作業を自動化したシステムである。

3.技術の適用範囲

ケーソン据付工事において浮遊曳航方式でケーソン天端に注水ポンプとウインチを全て搭載して据付作業を行う工事において適用する。

4.技術の効果

  • 経験豊富な熟練作業員が行っていた注水ポンプやウインチの操作を自動制御するので、作業員の経験や熟練度を補完し確実なケーソン据付が可能となる。(熟練技術者の補完)
  • 従来工法では動揺するケーソン上に複数人が乗って、測量、水位計測、注水ポンプ・ウインチ操作等の作業を行っていたが、本システムの採用により動揺するケーソン上での作業が無人化されるので安全性が飛躍的に向上する。(安全性の向上)
  • 据付ケーソンの三次元位置と姿勢及び注水状況を一元管理できるので、短時間で精度良くケーソンを設置でき、作業員を半減させ、据付時間が約半分となった。これらは、国交省が推進するi-Construction 技術の推進にも寄与する。(生産性向上)

5.技術の社会的意義及び発展性

 建設産業におけるこれからの品質確保・生産性向上において、高齢化に伴う熟練技術の伝承や労働者不足による省力化施工が問題視されており、本件はこれらの問題に寄与する技術である。またケーソン上の無人化により労働災害が多い建設業の安全性が確実に向上する。

 今後は、吊り曳航方式や他の工種において自動制御システムを構築することにより、さらなる生産性向上や省力化施工を発展させていく。

6.技術の適用実績

 細島港(外港地区)防波堤(南沖)築造工事、平成28 年9月 〜 平成29 年9 月

写真・図・表