JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第19回国土技術開発賞

創意開発技術賞(国土交通大臣表彰)

コーティングと化学処理を融合した防滑技術(第19回国土技術開発賞 創意開発技術賞)

応募技術名称コーティングと化学処理を融合した防滑技術
副題スキッドレスミラクルコーティング工法
応募者名(株)ニーズインターナショナル
技術開発者(株)ニーズインターナショナル 矢澤 洋一

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 私たちの生活の場では様々な床材が使用されている。しかし、状況によっては不幸な転倒事故の原因と なる危険な床も少なくない。特に水に濡れた場合はその危険性が更に高くなる。近年、公共施設や介護施 設等の床に広く普及している化学系床材(P タイル、塩ビ系シート等)は濡れると非常に滑り易くなり常 に転倒事故の危険を伴っているが、有効な対策がなく危険と認識していながらも放置している例も少なく ない。この問題に苦慮していた施設管理者の要望に応えるため、試行錯誤する中で生まれたコーティング 表面に防滑処理(化学的処理)を行うという斬新な発想が本工法の実証研究開発の契機となった。

2.技術の内容

 本工法は塗布したコーティング表面を防滑処理(化学処理)することにより、濡れると滑り易くなるあ らゆる床を滑り難くして転倒事故を未然に防止する技術である。写真−1はコーティング剤を塗布する前 と塗布後の表面の走査型原子間力顕微鏡(AFM)写真である。コーティング表面に微細な珪素の突起が 形成され、乾燥状態ではこの突起により防滑効果が発揮される。このコーティング表面を専用の防滑処理 剤(ミラクル処理剤)で化学処理することで、コーティング表面に微細な凹凸が形成され湿潤状態でも滑 りにくい床面となる。写真−2は防滑処理剤スキッドレス(ミラクル処理剤の主成分)による防滑処理前・ 後の磁器タイルの表面顕微鏡写真である。

3.技術の適用範囲

化学系床材(P タイル、塩ビ系シート等)・木床・金属床等あらゆる床で水に濡れると滑り易くなる場所。 ただし、施工にあたり床表面を完全に乾燥状態にすることができない場所及び気温5℃以下での施工は できない。

4.技術の効果

 濡れると滑り易く危険な床が美観・景観を損ねることなく滑り難い安全な床に変わり、転倒事故を未然 に防止できる。一般の方はもちろん高齢者や体の不自由な方も安心して歩けるため活動が積極的となり国 民生活の活性化につながる。また、汚れが付きにくいため日常のメンテナンスも容易で定期的なワックス 処理も不要となりランニングコストの大幅な低減が図れる。

5.技術の社会的意義及び発展性

 公共施設等で広く普及している化学系床材(P タイル、塩ビ系シート等)は一般にワックス塗布によりメ ンテナンスされているが、水に濡れると非常に滑り易くなり降雨・降雪時には持ち込まれた水分により常に 転倒事故の危険を伴っている。特に高齢者や体の不自由な方にとっては床が危険な凶器となる恐れがあり、 過度の心労から外出意欲喪失の原因ともなっている。
  また、表−1に示すように近年は転倒・転落事故による死亡者が交通事故による死亡者を上回り、毎年5,000 人を超える方がスリップやつまずきなど同一平面上での転倒事故により死亡している。このような現状を踏 まえると、国民が安心して歩ける床環境の整備は国民生活の安全性向上の観点からその社会的意義は非常 に大きいといえる。

6.技術の適用実績

新潟県新発田地域振興局 庁舎1F 室内床防滑処理 平成28 年3月 他4件 (写真−3 施工事例 参照)

写真・図・表