JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第19回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

供用中の桟橋を効率的に耐震補強する工法(第19回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称供用中の桟橋を効率的に耐震補強する工法
副題部材長可変式の部材で耐震補強するRe-Pier工法
応募者名あおみ建設(株)
技術開発者あおみ建設(株) 吉原 到

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 国土交通省は平成18 年に「耐震強化岸壁緊急整備プログラム」を策定し、整備を進めているが、限ら れた社会資本整備予算の中で、既設構造物の延命化や耐震補強へ対応しなければならない状況である。民 間企業所有の専用岸壁は、更新時期を迎えても代替施設がないことが多く、供用しながらかつ低コストで 延命したいというニーズがある。そこで、低コストで、さらに現在の物流機能を低下させることなく、す なわち岸壁の供用への影響を極力抑えつつ耐震補強できる工法が求められていた。

2.技術の内容

 本技術は、既設桟橋の耐震補強や延命化、増深化を目的に開発したもので、鋼管杭を補剛部材で連結し て桟橋全体を補強する工法である(図-1)。補剛部材は径の異なる2本の鋼管を組合せて入れ子状にす ることで、部材長が調整できる構造となっており(写真-1、図-2)、部材長が最短となる格納状態で 現場に搬入し、部材を伸長して既設杭間への部材追設を行う。既設杭と接続する鞘管は、鋼管を縦に2分 割し、部材設置箇所においてフランジ接合で一体化する。既設杭と鞘管の間および径の異なる鋼管と鋼管 の間にグラウトを充填し(図-3)、補剛部材と既設構造物を剛結する。従来技術では、上部工を撤去し て杭頭から補剛部材を挿入していたが、本技術では上部工を撤去することなく部材の追設が可能である。 以下に特徴をまとめる。

  • 径の異なる2本の鋼管を組み合わせて入れ子状にすることで、部材長を大きく変化させることができ る。格納時は既設杭間の寸法より短くし、杭間へ容易にはめ込むことができる。その後、部材を伸長 することで、既設杭と補剛部材を一体化させる。
  • 補剛部材の追設のために上部工を撤去する必要がない。このことにより、桟橋の供用への影響を大幅 に削減できるとともに(写真-2)、施工コストや工程を大幅に削減することができる。
  • 既設桟橋の杭間に施工誤差によるばらつきがあっても、部材長を調整できることから、補剛部材は同 一寸法で工場製作(部材のユニット化)できる。 (図-4)
  • 専用鋼製フローター(写真-3)を活用して補剛部材を水中で中性浮力状態にすることで、施工は潜 水士による人力で行うことができる。作業用船舶が不要で、施工時に桟橋前面水域を占有しない。

3.技術の適用範囲

桟橋構造全般(直杭式桟橋、斜杭・組杭式桟橋、ドルフィンなど)

4.技術の効果

本技術は従来技術(格点式ストラット工法)と比較し、コストは43%、工期は61%と大幅な削減を実 現できる。(工程は現場の施工日数でのみ比較し、工場製作期間は別途必要)

5.技術の社会的意義及び発展性

 今後、供用50 年以上の岸壁の割合は、平成26 年で約10%であるが、10 年後は約35%、20 年後は約 60%を占める。本技術により、社会資本ストックの維持管理費用を抑えることができ、インフラの長寿命 化や既設構造物の耐震性能向上により、国土強靭化に寄与することができる。

6.技術の適用実績

 西ふ頭桟橋外災害復旧(その1)工事、平成26 年3月〜平成28 年3月 他4件

写真・図・表