JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第6回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

パッシブリズミング空調 (第6回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称 パッシブリズミング空調
副題温熱快適性の向上と省エネルギーの両立を目指した空調制御システム
応募者名(独)建築研究所
三機工業(株)
(株)奥村組
技術開発者(独)建築研究所 坊垣和明
三機工業(株)  福森幹太
(株)奥村組   茂木正史
共同開発者国土交通省国土技術政策総合研究所 桑沢保夫

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 COP3対応に向けて、二酸化炭素排出抑制は喫緊の課題である。とりわけ、建築・住宅等の民生部門はわが国全体の排出の36%を占め、さらに、暖冷房・空調用は民生用の1/3に達するため、排出抑制への取り組みが強く求められている。これへの対応を模索する中で、空調は運転されていないにも拘わらず、吹き出し口のリボンが動いたり空調ファンの音がするだけで在室者が運転中であると錯覚することを発見し、空調停止による省エネルギーの可能性を発想した。言うまでもなく、省エネルギーの最も効果的な方法は、エネルギー消費機器を使用しないことである。一方で、人体は定常環境よりも変動する環境に快適性を感じると言う特性を有しており、一時的な空調の停止による室温変動は十分に許容されると予測し、本技術の開発に着手した。

2.技術の内容

 快適性と省エネルギーを両立させる空調運転システムである。空調停止による室温変動がもたらす快適性への影響を被験者実験で確かめた上で、快適性を損なわない空調の停止・運転パターンを設定し、それを具体のシステムとして完成した。本技術は、室内温度と炭酸ガス濃度を監視しながら、ある一定の周期で空調設備の運転と停止を繰り返すロジックを仕組んだ制御装置が主要な機器であり、これを空調制御盤等に設置することで利用可能である。中央監視装置からの空調機の運転に連動し、立ち上がりの一定時間経過後からパッシブリズミング空調を開始する。設置時の初期設定と暖房・冷房時の設定変更を行えば、あとは全て自動で運転されメンテナンスフリーである。

▲図1 快適性を損なわない停止の条件を被験者実験で確かめた 

3.技術の効果

 本技術を空調設備に導入することによって、搬送動力用エネルギーを年間20%から30%削減できる。本技術の適用に際しては、専用制御装置を用いることによって、比較的容易にかつ簡便に導入が可能であるためコストを抑えて設置できる。廉価かつ小型な専用制御装置は、自動制御の配線改造のみで採用でき、また、自動制御のオープン化に対応してLONWORKS(米国ECHELON社)標準としており、新築および既設の空調機器等との通信・適応が可能である。また、運転・停止の条件によっては、冷房病の予防の効果も期待できる可能性がある。

 

4.技術の適用範囲等

  中央式空調方式における、空調機(AHU:エアハンドリングユニット)、2次冷温水ポンプ、等への導入は問題なく、効果が高いことが実証されている。したがって業務用ビルの多くに適用が可能である。さらに、ヒートポンプパッケージエアコンなど、業務用の個別運転機器にも適用が可能である。また、家庭用のエアコンについても、制御方式に本技術のノウハウを導入することが可能である。したがって、空調機器のほとんどが適用範囲となる。適用可能な具体の機器として、空調機(AHU:エアハンドリングユニット)、2次冷温水ポンプ、外気調和機、全熱交換機、ガスヒートポンプパッケージエアコン、空冷ヒートポンプパッケージエアコン、家庭用エアコンなどがある。

5.技術の適用実績

(株)大丸神戸店パッシブリズミング空調導入工事(平成12年10月〜平成17年2月)
(株)三越新宿店ESCO事業(平成15年4月〜平成25年3月)        他5件

       ▲写真1 導入事例:大丸神戸店       ▲写真2 コントローラー(上)と

                               制御盤内への設置状況例(大丸神戸店