JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第16回国土技術開発賞

最優秀賞(国土交通大臣表彰)

浮体式仮締切工法 (第16回国土技術開発賞 最優秀賞)

応募技術名称浮体式仮締切工法
副題ダム再開発工事における仮締切工の大幅効率化
応募者名鹿島建設(株)/日立造船(株)
技術開発者〔鹿島建設(株)〕高田 悦久・滝口 紀夫/〔日立造船(株)〕 神藤 拓也
共同開発者国土交通省九州地方整備局/(一財)ダム技術センター

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

近年既存するダムの治水・利水機能を強化するダム再開発事業が増えており、全国的に計画・実施されている。施工はダムを運用しながら行うことが多いため、鋼製の仮締切設備を設置し、その内部の水を抜きドライな空間を確保して各種の作業を実施している。従来の仮締切は、支持架構形式と台座コンクリート形式が主流であるが、両形式とも大深度での水中施工が多く安全性や工程・コストなど多くの課題があった。平成23年2月に鶴田ダム施設改造工事を入手したことを契機に新しい形式の仮締切の開発について提案がなされ、開発に着手した。

2.技術の内容

浮体式締切工法は、扉体の内・外側に鋼板(スキンプレート)を貼り、底蓋と一体化した仮締切扉体を浮体化し、扉体上方のダム堤体に設置した浮上り防止金物で浮力を支持する(4頁:図−3・図−4参照)。施工は、現地工場で製作した扉体ブロックを貯水池湖面上で組み立て、設置場所まで曳航しウインチで引き寄せ固定する(4頁:図−1、写真−1参照)。また、止水性は仮締切内部の水を抜いた時に、扉体に装着した水密ゴムがあらかじめダム堤体に設置した戸当りに水圧で押えつけられることで確保される(4頁:図−2参照)。仮締切の形状はコの字になっているため、扉体に単純に浮力を与えると一方だけが浮上して回転してしまい姿勢を保持できないことから、扉体内の区画に適正な順序で充水/排水を行い、浮力と自重のバランスを保つことが重要である。浮体式仮締切のように貯水池の水を注排水しながら、バラストを調整して組立・据付を行う工法は世界初の事例である。

3.技術の効果

台座コンクリートや支持架構という大規模な仮設備が不要となるとともに、大深度での潜水作業を軽減できることから、安全性向上・工程短縮・コスト縮減等、施工の効率化が実現できる工法である。また、同一ダムにおいて複数の孔を施工する場合、従来工法では扉体を解体し再度組み立てる必要があるが、浮体式仮締切は扉体を解体することなく、次の施工場所へ曳航・設置することが可能である。

4.技術の適用範囲

ダム堤体に新たに孔を空けて放流管やゲートを設置する再開発事業の仮締切として、ダムの規模や孔の数および施工水深にとらわれることなく適用できる。

5.技術の適用実績

事業名(工事名):鶴田ダム再開発事業(鶴田ダム上流仮締切設備工事)

写真・図・表

表−1 従来式との比較

図−1 鶴田ダムにおける従来式と浮体式の比較断面図

  • 図−2 鶴田ダムでの台座コンクリート構築状況
  • 図−3 鶴田ダムでの扉体設置状況
  • 写真−1 浮体式仮締切設置状況
  • 図−4 従来式と浮体式の扉体比較図