JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞者の声

建設分野の新技術への挑戦

第7回国土技術開発賞

最優秀賞 伝統構法による大規模木造天守の復元技術 技術開発者 外舘 寛 受賞コメント

第7回国土技術開発賞 最優秀賞伝統構法による大規模木造天守の復元技術 (大洲城天守の復元)
技術開発者 外舘 寛

受賞にあたって

大洲市民の夢 〜 大洲城天守の復元

大洲市の皆さんの夢と熱意が大洲城天守復元を実現させました。実に総工費の40%が大洲市民の寄付でまかなわれたのです。私たちは大洲市民の夢を実現するためのお手伝いをさせていただいき、感謝の気持ちでいっぱいです。

よみがえれ! 伝統構法

柱を貫通する通し貫(ぬき)を設けた基本構造、これが伝統構法です。この構法では、貫構造の柱と梁、その接合部である仕口、土壁など多くの部材が組み合わさっており、地震などの外力に対してはそれらが一体となって抵抗します。

しかしながら、熟練の職人の技が要求されるこの伝統構法は、筋違を入れた壁でしか耐震性を認めない現行の建築基準法の下では排除されてしまいました。伝統構法による大洲天守の復元に際しては、建築基準法をクリアすることが大きな課題でした。

伝統の構法を次の世代へ

伝統構法のすばらしさは、なんといっても「木」本来が持つ「美しさ」にあります。さらに、釘や金物を使わずに木を組み合わせる「木組み」は伝統構法の命といえるでしょう。

伝統構法が安全性に優れ、十分な耐震性が発揮できるということを、最新の数値解析や構造実験を通して再評価すること、これが私たちの役割でした。

さらに、職人の大工さん達が持っている最高の技を如何に気持ちよく発揮してもらうかということも施工サイドに課せられた大きなテーマでした。木のやさしさや温かさが伝わるお城が完成し、「本物」を次の世代に伝えことができた喜びをかみしめています。

受賞後の動き

受賞後も引き続き伝統構法の性能評価や解析手法の確立・高度化に取り組んでいます。受賞年の11月には、復元された大洲城の天守閣で人力加振による振動測定を行いました。伝統構法は仕口等でのエネルギー吸収が優れ、大きな減衰効果が発揮できることが確認されました。このような点が解析的に精度良く評価できるようになれば、伝統の技を最新の建築技術へ活かすことができ、全く新しい構法へと発展するかも知れません。夢はますます拡がるばかりです。楽しみですね。