JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第7回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

ワイヤネット工法 (第7回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称ワイヤネット工法
副題柔構造・透過型の堰堤
応募者名(財)砂防フロンティア整備推進機構
東亜グラウト工業(株)
技術開発者(財)砂防フロンティア整備推進機構 田畑茂清
東亜グラウト工業(株)       大岡侑三
共同開発者国土交通省北陸地方整備局松本砂防事務所
同 立山砂防事務所
(株)神戸製鋼所

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 対象流域に砂防ダム等を無限に設置できる訳ではなく、数年で失われるとされる貯砂容量を有効活用するため、透過型の砂防ダムが設置されてきた。コンクリート等の剛構造スリットの場合、土石等が詰まると除去することが困難なため、機能の回復も困難な一方で、砂防ダム工事中の作業員安全確保あるいは緊急時の応急対策技術も求められていた。対象渓流には、土石流の頻発する高山地等の蝕渓は勿論のこと、将来に亘って無限に土砂を供給し続けると考えられる火山蝕渓もあり、一方で海岸線の後退に始まって、河川の健全な環境管理を行うに当たり、下流河川に土砂を安全に供給する必要のある場合も多い。透過性能に優れ、容易に機能回復が可能で、現地での作業が少なく、自然環境にも配慮した新技術が求められていた。

2.技術の内容

 本工法は、土石流を主索(アンカー固定)・吊索・リングネットからなるワイヤロープ面構造により捕捉するもので、リングネットは1リングに同様な4リングを自由内接させ、組み上げることによりネットとなす。面荷重を受けて各リングはそれぞれ自在に荷重を分散させリングネット全体が変形し、すべての吊索に張力が発生したのち、前方・下流に大変形を起こして、主索の最大緊張に至り土石流が停止し、後続する泥水が越流する。

 リングの直径は、現地調査により土石流の最大礫直径を推定して、ほぼ同じ値を採用することにより透過型となし、応力発生の主断面である縦断図上の力のつり合いにもとづき、リングの巻き数と吊索・主索の強度・直径を照査してそれらを決定する。

   

写真1:松本砂防事務所での設置例 写真2:同左、土石流捕捉後

図1:松本砂防事務所でのワイヤネット工法の構造図

3.技術の効果

  1. 透過型砂防ダムとしての本来機能
  2. 緊急時の応急対策・防災
  3. 他の透過型砂防ダムの補完
  4. 減災の最新技術

4.技術の適用範囲等

(1)対象現象の規模

 土石流の規模を流体力(堆砂圧を含む)で表せば、設計対象値は61〜80kN/mである。また、松本砂防事務所管内のサイトで計測・分析された張力は設計荷重の6〜8割であったことから、現段階の知見から単純には上記の約3割増しの規模まで対応可能であると考えられる。

(2)施工条件

  • 主索の固定に耐えうる堅固な基礎(アンカー等)があること
  • サイト近くまでの搬入に4t積みトラックが使用できること
  • 主索等の懸吊に要する機械(クレーン類)または設備等(索道・ウインチ・ヤード)が設置可能なこと

5.技術の適用実績

焼岳上々堀沢土石流捕捉工試験工事、平成13年10月〜平成14年9月 他3件