JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第10回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

三重管基礎杭工法の開発・施工 (第10回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称三重管基礎杭工法の開発・施工
副題廃棄物処分場の遮水層を貫通する橋梁基礎杭工法の開発・施工
応募者名東京都港湾局長
技術開発者〔東京都港湾局〕前田 宏
〔国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所〕宮崎 祥一
〔国土交通省関東地方整備局横浜港湾空港技術調査事務所〕諸星 一信
〔若築建設(株)〕長廻 幹彦
〔(株)大林組〕馬場 英之
共同開発者国土交通省関東地方整備局
若築建設(株)
(株)大林組

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 東京港臨海道路第(II)期事業の第4工区は、廃棄物処分場に位置する橋梁工区である(図1)。当該工区では、厚さ10m程度の埋立廃棄物層の下に厚さ20〜40mの軟弱な沖積粘土層(荒川沖積層)が堆積しており、橋梁構造を支える基礎杭はこれらの層を貫くことになる(図2)。この厚く堆積する軟弱な荒川沖積層は、処分場の重要な機能である遮水層の役割を果たしており、これにより処分場内の浸出水が区域外に拡散することを防いでいる。基礎杭がこの層を貫くことで「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で定められている遮水層としての機能を損なうおそれがあったが、開発した三重管基礎杭工法によれば、遮水層を貫いても浸出水の拡散防止が可能である。廃棄物層下の遮水層を貫く基礎杭の施工は過去に例がなく、我が国初となる施工方法の開発・施工が課題となった。

2.技術の内容

 三重管基礎杭工法(図3、表1)は、オールケーシング工法により廃棄物層を掘削・除去し、その中に外周管および本杭の2本の杭を打設し一体化する工法で、杭打設時の廃棄物の巻き込みを防止することができる。将来、長期にわたって杭周面からの浸出水がないことは、解析・実験により確かめている。施工に当たっては、有毒ガス対策、ケーシングと外周管との空隙の充填など課題をクリアーしながらの施工となった。また、長尺杭の支持力管理は、橋台・橋脚ごとの試験杭の「衝撃載荷試験」結果から設定した施工管理式を用いるなど、三重管基礎杭工法の開発と長尺杭の有効な管理手法を確立した。

3.技術の効果

 本工法の採用により、東京港臨海道路の中央防波堤外側埋め立て地への立地が実現し、臨海道路が供用されることで、周辺道路混雑の緩和および交通利便性の向上が期待できる。また、処分場としての使命を終えた埋立地を、浸出水が拡散することがないように管理しながら他の用途に有効活用することは国土が狭い我が国にとって非常に重要である。本工法の開発により、供用中の廃棄物処分場の機能を損なうことなく上部の有効活用が可能となり、引いては国民生活の利便性の向上と豊かな生活基盤の確保が実現できる。

4.技術の適用範囲等

供用中の廃棄物処分場に杭基礎を設置する全ての場合に適用できる。
処分場だけでなく、汚染土壌などを封じ込めた地盤上においても適用が可能である。

5.技術の適用実績

平成17年度東京港臨海道路(II期)中防側アプローチ橋りょう基礎建設工事、他3件

写真・図・表