JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第11回国土技術開発賞

入賞(選考委員会委員長表彰)

沿岸域における高精度波浪変形計算モデル“NOWT-PARI” (第11回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称沿岸域における高精度波浪変形計算モデル“NOWT-PARI”
副題沿岸域の海底地形・構造物により生じる波浪変形現象の高精度数値計算技術
応募者名(独)港湾空港技術研究所
技術開発者〔(独)港湾空港技術研究所〕平山 克也・平石 哲也

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 港湾計画の策定や事業効果の評価などを行う際には,現実の港湾や海岸,及びその周辺で現れる波の状況を正しく知ることが非常に重要である.大規模な平面水槽で実際の地形と波を再現する水理模型実験は非常に有用な方法であるが,この実施には多くの費用と時間を要する.一方,ある限られた波の変形現象を対象とした数値計算手法は個別に提案され,その一部は港湾設計の実務に広く供されている.しかし,様々な波浪変形が複合的に生じる実際の港湾において,これらの算定結果を正しく評価するためには,豊富な知識と経験が必要であった.

2.技術の内容

 防波堤や離岸堤による波の回折・反射と同時に,港内外の海底地形による波の屈折・浅水変形を考慮できる,従来にない包括的な高精度波浪変形計算技術である(図-1).波動の方程式をもとに,現実の港湾や海岸を形成している地形や構造物と海との境界で起こる現象をそれぞれモデル化することにより,基本プログラム“NOWT-PARI Ver4.6”を開発した(図-2)。

 これに並行して開発した“NOWT-PARI Ver5.x”シリーズでは,水理模型実験等による精度検証を通じて,波消しブロックによる消波メカニズムをモデル化した透水層モデル(図-3),河川の跳水理論と1方程式乱流モデルを応用した砕波モデル(図-4),及びダムの越流公式を応用した遡上・越波モデル(図-5),等の様々な計算法を開発・導入し,実務計算への適用性を飛躍的に高めた。

3.技術の効果

 港湾・海岸事業では,港内を静穏に保つために防波堤が,砂浜を安定に保つために離岸堤がそれぞれ設置される.このとき,その周辺海域や構造物自体で実際に生じる様々な波浪変形現象をできるだけ正確に算定することにより,波消しブロックや人工リーフの設置など,より効果的な計画の策定や効率的な設計,及びより妥当な事業効果の検証が可能になる.本技術を用いた高精度波浪変形計算では,概ね±10%の誤差範囲でこれらの波高を算定できることを確認している(図-6)。

 さらに,ウォーターフロントの有効利用や波浪災害の低減を目的とした堤防や護岸の性能設計法(一部損壊しても大規模な浸水は阻止する等の性能を規定する),あるいは波浪災害時の迅速な被災波の推定,等にも対応できる,現地地形に対する高い計算精度と適用上の汎用性を有している.

4.技術の適用範囲等

● 港湾や海岸の消波構造物による波の部分反射や透過変形を含む波浪変形計算.
● 砂浜や珊瑚礁,岩礁帯による波の砕波や遡上変形を含む波浪変形計算.
● 防波堤や護岸上の越波,及び防波堤背後の越波伝達波を含む波浪変形計算.
● これらの波浪変形計算を必要とする港内静穏度解析,設計波の算定,被災波の推定,等.

5.技術の適用実績

那覇港港内擾乱対策検討業務、平成19年9月〜平成20年3月   他7件

写真・図・表