JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第15回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

2段タイ材地下施工法(第15回国土技術開発賞 優秀賞)

ミッション2段タイ材地下施工法
応募技術名称2段タイ材地下施工法
副題既設岸壁を供用しながらの耐震補強・増深技術
応募者名(株)大林組
技術開発者〔(株)大林組〕中村 泰/〔(独)港湾空港技術研究所〕森川 嘉之/〔(株)日本港湾コンサルタント〕星野 正美
共同開発者(株)港湾空港技術研究所/(株)日本港湾コンサルタント/(株)関電工

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 近年、海上物流の輸送力強化策に伴う船舶の大型化による、岸壁の大水深化、機能増強、リニューアルや地震被災後の緊急物資の輸送機能確保の観点から岸壁の耐震強化が要請されている。しかしながら、既設の岸壁は日々の生産・物流活動と密接に結びついており、改良や補強のために長期に亘って荷役稼働を休止できない場合が多く、岸壁を供用しながら改良や補強ができる工法が望まれていた。

2.技術の内容

 2段タイ材地下施工法とは、図−1に示すように既設岸壁のエプロン背後に新たに控え工を増設した後、高性能小口径推進機を用いて陸上から斜め下方に削孔して、既設岸壁の水中部にタイ材を増設し固定点を設けることにより、新旧2段のタイ材で外力に抵抗できる構造とする工法である。

 このため、本工法は増深や地震動によって生ずる既設矢板の増加断面力や既設タイ材の増加張力を抑制することができ、既設岸壁の構造部材(矢板、タイ材、控え工)を有効に利用して耐震・増深等の機能を向上し、岸壁を再生することが可能な補強工法である。

3.技術の効果

 2段タイ材地下施工法は、従来の岸壁補強工法(例えば、前面新設矢板前出し工法や背面薬液注入固化工法)に比べ、以下の効果がある。

【機能性向上】既設岸壁の耐震強化や増深時などの構造安定性の向上が図れる。

【コスト縮減】新たに設置するものは、控え杭・タイ材・腹起しで、従来工法の岸壁補強技術に比べ、経済性に優れている(約4割低減)。

【省スペース施工】工事中は岸壁前面やエプロン上を殆ど占有しないため、岸壁を供用しながら増深・耐震補強が可能。

【外部不経済の軽減】岸壁荷役作業の影響が少ないため、工期短縮が図れる。

【環境影響低減】増設の控え杭打設以外は大型の重機を使用しないため、工事中の騒音・振動が少ない。

4.技術の適用範囲

対象構造物 :既設控え矢板式岸壁(鋼矢板、鋼管矢板)

適用用途 :岸壁の耐震補強、岸壁の増深、上載荷重増などの機能強化

適用地盤 :砂質土、粘性土、砂礫など小口径推進が可能である地盤

5.技術の適用実績

平成21年度 仙台塩釜港仙台港区中野地区岸壁(-9m)改良外工事 他3件

写真・図・表