JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第20回国土技術開発賞

創意開発技術賞(国土交通大臣表彰)

既設落石防護擁壁のソイルセメント等による補強工法(第20回国土技術開発賞 創意開発技術賞)

応募技術名称既設落石防護擁壁のソイルセメント等による補強工法
副題ソイルバンパー
応募者名(株)構研エンジニアリング)
技術開発者(株)構研エンジニアリング 牛渡裕二/鈴木健太郎
共同開発者室蘭工業大学 特任教授 岸徳光/准教授 小室雅人/講師 栗橋祐介

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 我が国の道路網には落石防護擁壁工が数多く建設されているが、落石によって損傷している擁壁も認められている。更に、近年の異常気象や斜面の経年変化、調査手法の高度化によって、新たな落石要因が確認される等、早期に安全性を向上させるための方策が望まれている。しかし、これらの対応には多大な費用が必要となるため、建設コストの縮減が叫ばれる中で大きな負担となっている。一方、近年、高エネルギー吸収型落石防護柵をはじめとした種々の新工法が開発されているが、既設落石防護擁壁工を補強する工法は殆ど開発されていない。

2.技術の内容

 表層に現地発生土を用いたソイルセメントを設置して衝撃力の一次緩和、芯材となるジオグリッドで衝撃力の分散、裏層に発泡スチロール(EPS)材を設置して衝撃強度の大幅な低減を実現する安価なソイルバンパーを考案した。本工法を既設落石防護擁壁背面に設置することで、落石衝撃力を大幅に緩和・低減させることが可能になり、既存落石防護擁壁の耐衝撃安全性の大幅な向上を実現した。

3.技術の適用範囲

落石要因に対し、衝撃耐力が不足している既設の落石防護擁壁に適用。
1,000kJ までの落石エネルギーに対応可能(実規模実験にて、1,200kJ まで効果を確認)。

4.技術の効果

  • 落石エネルギーが200kJ程度として設計された既設落石防護擁壁を、最大1,000kJ程度の落石エネルギーまで対応可能とし、安全性を大幅に向上可能。
  • 既設落石防護擁壁は存地するため、施工時の仮設対策工が不要。建設廃材発生抑制。
  • 材料入手が容易な発泡スチロール・ジオグリッドを用いるため、施工性に優れ、型枠工・鉄筋工等の技能者は不要。
  • 落石衝突を受けて損傷したソイルセメントは、再固化することにより再利用が可能。

5.技術の社会的意義及び発展性

  • 落石要因の再評価によって落石衝撃力が大きくなった場合においても対策工を新設する必要がなく、既設防護擁壁背面に調達が容易な提案のソイルバンパーを設置することで、最大1,000 kJ 程度の落石エネルギーに対応可能。
  • 現地発生土をソイルセメントに活用することができ、ゼロエミッションを実現可能。
  • 特殊技能や特殊施工機材が不要であり、ほぼ全ての建設業者による施工が可能。
  • 今後、使用部材のプレキャスト化等施工方法の改善を進め、省力化を図ることで少子高齢化による労働力不足に対応可能。

6.技術の適用実績

 一般国道228 号福島町松浦災害防除外一連工事、平成29 年7月〜平成29 年12 月 他1件

写真・図・表