JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第20回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

大型風車組立リフトアップ工法(第20回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称大型風車組立リフトアップ工法
副題ウインドリフト
応募者名(株)大林組
技術開発者(株)大林組 江副誉典・三輪敏明
共同開発者(株)巴技研

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 1200t 級油圧クレーンで風車を設置する従来工法では、ローターを地上で地組した後、ナセルに設置していたため、広大な施工ヤードが必要になっていた。さらには、クレーンによる部材の揚重時には、風の影響を受けやすい。特にローターをナセルに設置する際は、風の影響で吊り荷が不安定になり、作業を中止しなければならないため、工程遅延の原因になっていた。これらの問題を解決するために大型風車組立リフトアップ工法「ウインドリフト」を新たに開発した。

2.技術の内容

 本工法は、塔体に沿って上下する昇降ステージを利用した組み立て技術であり、ハブとブレード部分を昇降ステージ上で接合し、上昇させながら建て起こす今までにない工法である(図-1、図-2)。これにより、超大型クレーンが不要となり、地組時、建て起こし時は相番クレーンのみで良いことから、施工ヤード面積を大幅に縮小できる(図-3、図-4)。また、風の影響については、ローターを保安林上空で水平に組み立てて、建て起こし、上昇させることで、安定してタワー上端まで移動できる。さらには、トラス構造の塔体は剛性が高く、部材上昇時に風の影響を受け難いため、工程遅延のリスクを軽減できる(図-5、図-6)。

3.技術の適用範囲

  • 風車全般建設工事
  • 風車メンテナンス工事及び解体工事
  • 洋上風力における港内ヤードでの組み立て工事

4.技術の効果

  • 超大型クレーンを使用せず、ローターを地上で地組しないため、従来工法よりも施工ヤードを30%程度縮小でき、かつ造成工事量を減らすことで、労働力の削減、建設コスト縮減、環境負荷低減につながる。
  • 風車部材上昇時に風の影響を受け難く、荷振れ対策を行えるため、従来工法と比較して風の影響を低減し、工程を遵守することができる。

5.技術の社会的意義及び発展性

 本工法は、施工ヤードを大幅に縮小でき、かつ造成工事量を減らすことで、労働力の削減、建設コスト縮減、環境負荷低減へ貢献できる。また、風力発電は、大型化、ハイタワー化に向かっており、超大型クレーンの調達が困難になることが予想されている。本工法により、調達の課題を解消し、風力発電事業の加速化に貢献できる。また、洋上風力発電は本工法により、港内ヤードでの組み立てが長期に及ぶため、超大型クレーンの賃貸費や地盤改良費が大幅に縮減でき、事業の進展に貢献できる。

6.技術の適用実績

 三種浜田風力発電所建設工事、平成29 年4月〜平成29 年6月

写真・図・表