JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第19回国土技術開発賞

創意開発技術賞(国土交通大臣表彰)

水路の敷段差を不要とした無動力自動開閉ゲート(第19回国土技術開発賞 創意開発技術賞)

応募技術名称水路の敷段差を不要とした無動力自動開閉ゲート
副題オートゲートステップレス
応募者名旭イノベックス(株)
技術開発者旭イノベックス(株) 笹山 耕司

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 当社が開発した、無動力で自動開閉する樋門ゲート「オートゲート」は、洪水や津波時に、人によるゲー ト操作を不要とすることで操作員の安全を確保し、高齢化による将来の操作員不足にも対応できる低コス トなゲートとして、全国に数多く採用されてきた。
 このような中、さらなるコスト削減のため、既設の引上げ式ゲートの水路をできるだけ利用してオート ゲートを設置したいという要望が多く聞かれるようになった。しかし、オートゲートは、水路の底部に敷 段差と呼ばれる段差が必要であるため(図−1)、既設のフラットな水路に敷段差を設けるための改修工 事が必要となり、この改修工事にかかる費用と工期が課題となっていた。
 当社は、敷段差のない、既設の引上げ式ゲートの水路を流用して設置が可能な、「水路の敷段差を不要 とした無動力自動開閉ゲート(オートゲートステップレス)」(図−4)の開発を行い、限られた予算のな かで洪水や津波時、人によるゲート操作を不要とした安全・安心な、無動力で自動開閉する樋門ゲートの 普及を加速させたいと考えた。

2.技術の内容

 オートゲートステップレスは、扉体の中央に設けたヒンジリンク機構と、水路の翼壁に固定された外部 フロート機構を有する構造である(図-2)。ヒンジリンク機構により、全閉時に扉体の下方押付けを可 能とし、敷段差がなくても扉体下部の水密の確保を実現した(図-3)。また、外部フロート機構により、 扉体の初期開度の確保と水位差に応じた的確なタイミングでのゲートの無動力自動開閉を実現した。

3.技術の適用範囲

適用範囲:河川用樋門ゲート。特に既設改修工事の場合に大きな効果がある
適用限界:扉体面積 1u〜 10u程度

4.技術の効果

 既設の水路を流用した改修工事において、従来型オートゲートとオートゲートステップレスを設置した 場合の試算では、改修工事に伴う土木工事(水路翼壁、床版、護岸等の撤去・新設)を含めたトータルコ ストでは41%縮減、工期は65%短縮できる。また、実機によるフィールド実験を実施し、従来型オートゲー トと同等の無動力自動開閉機能を有していることを確認した。

5.技術の社会的意義及び発展性

 先の東日本大震災の時、ゲートを操作するために向かった多くの消防団員の方々が殉職された。この不 幸な出来事を二度と繰り返させないためにも、無動力で自動開閉する樋門ゲートの普及が急務である。オー トゲートステップレスは既設の引上げ式ゲートの水路をそのまま流用することで、既設の樋門ゲートを低コ ストで無動力自動開閉化することを可能とした技術である。自然災害が多発する我が国日本において、「安 全・安心」と「低コスト」を両立させた本技術の社会的意義は極めて高い。
 また、この技術は樋門ゲートに止まらず沿岸部の陸閘ゲートなど、様々な治水分野に応用できる。

6.技術の適用実績

石狩川上流・天塩川上流 樋門機械設備更新外工事、平成26 年10 月〜平成27 年3月 (他0件)

写真・図・表