受賞技術概要
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第19回国土技術開発賞
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- 第19回国土技術開発賞
入賞(選考委員会委員長表彰)
橋梁の耐震性能を向上させる皿バネ式摩擦型ダンパー(第19回国土技術開発賞 入賞)
応募技術名称 | 橋梁の耐震性能を向上させる皿バネ式摩擦型ダンパー |
副題 | 橋梁用ブレーキダンパー |
応募者名 | (株)大林組 |
技術開発者 | (株)大林組 中村泰介、早川智浩 |
技術の概要
1.技術開発の背景及び契機
わが国は、阪神大震災以降、東日本大震災や熊本地震などの大きな地震災害に見舞われてきた。国が推 進する「国土強靭化計画」においても示されているように、これらの震災に対する教訓として、橋梁等の 構造物は強いだけでなく、迅速に回復に向かうための早期復旧性までが必要とされている。一方で、財政 制約の厳しさから、コストについても十分に配慮されなければならない。このことから、早期復旧性を含 む高い耐震性能とコスト縮減を両立できる技術が求められている。
2.技術の内容
本技術は、橋梁の適切な部分に組込むことで、地震に対する橋梁の揺れを抑制することを目的とする摩 擦型ダンパーである。橋梁構造に応じて、上部構造と下部構造を接続する形式と、トラス橋等の斜材に組 込む形式があり、橋梁新設時および耐震補強時に適用できる。ダンパーの設計モデルは確立されており、 技術審査証明を取得している(図@)。
本技術が橋梁の揺れを抑制するのは、振動により摩擦摺動が発生することで振動エネルギーが摩擦熱エ ネルギーに変換されるためである。摩擦は、摩擦材(自動車のブレーキパッドと同様の素材)とステンレ ス板の間で発生させるが、皿バネを介したボルトで締め付けることにより安定した摩擦力を生じさせる(図 A、B)。既往のオイルダンパーに比して、点検の容易性、高い信頼性、低コストなどの利点があり、既 往の鋼材ダンパーに比して、地震後の早期供用性、エネルギー吸収効率、設計自由度などの面で優れている。
3.技術の適用範囲
- 新設橋梁の建設 (桁橋やトラス橋)
- 既存橋梁の耐震補強 (桁橋やトラス橋)
4.技術の効果
- 地震に対する橋梁の揺れや損傷を20 〜 60% 低減することができる(図C)。
- 大規模地震後においてもダンパーが損傷しないため、連続する大地震への対応や早期供用が可能。
- 耐震補強時は、仮設道路や仮締切り等の仮設備を低減できるため、約30% のコスト縮減が可能。
- 河川内橋梁の耐震補強時は、河積阻害を増加させず、通期施工が可能。水質汚染等の環境負荷リスク も最小化。
- 新設時に適用した場合、橋脚断面スリム化による7% 程度のコスト縮減と、耐震性能の向上が両立で きる(図D)。
5.技術の社会的意義及び発展性
本技術により、コスト、耐震性、生産性、環境性に優れた新設橋梁の構築や既設橋梁の耐震補強が可能 であり、連続する大地震が発生した場合や、迅速な救護・救援活動が必要な場合には特に大きな効果を発 揮する。そのため、安全・安心な国土の構築に資することができる。
本技術は国際的にも新しい技術であり、海外工事への適用が期待できる。また、鉄道高架橋など幅広い インフラストラクチャの耐震対策として活用が見込まれる。
6.技術の適用実績
関越自動車道 片品川橋補強工事、平成24 年3月〜平成28 年12 月 他3件
写真・図・表
