JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第19回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

ネットワーク対応型無人化施工システム(第19回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称ネットワーク対応型無人化施工システム
副題大規模無人化施工への緊急対応ICTシステム
応募者名(株)熊谷組
技術開発者(株)熊谷組 北原 成郎、飛鳥馬 翼

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 遠隔操作式建設機械群での施工を行う無人化施工は、雲仙普賢岳災害復旧工事以来、大規模災害毎に災 害地早期復旧への導入の重要性が認識された。その課題は、臨場感の乏しい環境でオペレータに正確かつ 有益な情報を提供するシステム構築とその迅速な立上げがある。東日本大震災を契機に、対応現場が拡大 し、厳しい現場条件の中、多量の建設機械を集中導入するための技術開発が求められるようになった。こ れらを解決する技術を開発し、阿蘇大橋地区斜面防災工事へ適用した。

2.技術の内容

  • ネットワーク対応型無人化施工システムは建設機械の操作、画像、ICT 施工データを一括してIP(イン ターネット プロトコル)化し、光ファイバケーブルや無線LAN を使用して伝送するシステムで、現場状 況に適応させて開発した(図−1)。またネットワーク対応型無人化施工システムに対応した新技術の開 発を行い、CAN-LAN 変換器を適用したICT 建設機械の導入、操作映像の向上に高精細画像伝送システ ムを導入、遠隔操作システムを使用した自律運転システムの開発、IoT を活用した建設機械のリアルタイ ム管理システムの開発をした。これらのシステムは現場状況に合わせて組合せることができる(図−2)。
  • 無人化施工システムの迅速な立上げを実現するために、予め遠隔操作室のシステム機器設置と設定が完 了している高機能遠隔操作室を開発し、無人化施工の早期立上げを実現した(図−3)。 
  • 施工条件の厳しい緊急の災害対応において、工事全体をi-Construction を活用した無人化施工システム により完成したことは、我が国初めてとなる。

3.技術の適用範囲

 危険区域での災害復旧工事全体および悪環境下での工事(トンネル、処分場、原発廃炉作業等)。 そのネットワーク技術はi-Construction 適用現場に広く適用可能。

4.技術の効果

  • 車両、操作室双方のデータのIP 化により、施工場所から遠隔操作室までの距離制限が無くなり、遠 隔操作室は現場から数10km の超長距離に設置が可能になった。また従来と比較して無線機台数が減 り従来方式と比較して無線設備コストを40%削減できた。(阿蘇大橋地区斜面防災工事実績)
  • 高機能遠隔操作室により施工開始が2日で可能になり、12 日程度の短縮になった。(阿蘇実績)
  • システムを付加し、遠隔操作室のオペレータへ有益な情報提供が可能になり、作業負担軽減と精度向 上を実現し、当初予定から工事全体で2 か月(25%)工期短縮した。(阿蘇実績)
  • ネットワークにより遠隔操作室へ情報を集中させることができ、搭載機器の状態がリアルタイムに監 視可能になり、i-Construction を総合的に実施することができた。(阿蘇実績)

5.技術の社会的意義及び発展性

 本開発により、ネットワーク技術に適用した最新の技術の導入が容易となり、災害適用能力が向上する ことで、複雑化する災害対応へ迅速に無人化施工を適用する可能性を広げることができた。またその結果 としてi-Cconstruction を実践する環境が整い、その目標となる土木分野の生産性向上に大いに寄与する 未来技術を示すことができた。

6.技術の適用実績

阿蘇大橋地区斜面防災対策工事、平成28 年5 月〜平成29 年3 月 他4 件

写真・図・表