JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第19回国土技術開発賞

優秀賞(国土交通大臣表彰)

平成の国宝姫路城大天守保存修理(第19回国土技術開発賞 優秀賞)

応募技術名称平成の国宝姫路城大天守保存修理
副題伝統技術と現代技術の融合による姫路城の再生
応募者名鹿島建設(株)
技術開発者鹿島建設(株) 野崎 信雄、河原 茂生

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 国宝であり世界文化遺産である姫路城の保存修理を、制約の多い条件下、保存修理に適した技術で、対 象建物の「的確で適切な保存修理」と「より永続的な耐久性・耐震性の向上」という課題を解決し、伝統 技術と現代技術を融合させ修理工事を行った。保存修理作業の着手前に、修理時の風雨から守る素屋根の 組立と、その資材を運搬・揚重するための巨大な構台を建設した。保存修理完了後の素屋根の解体工事は 白亜の城としてよみがえった姫路城大天守を傷つけることなく慎重に行い、無事故無災害で工期内に完成 させた。

2.技術の内容

 素屋根鉄骨の合掌梁鉄骨をユニット化することにより、工事の危険作業排除と簡素化した(2-1)。
 通常のメッシュシート(有効開口30%)結束用のハトメを倍(@300 から@150)にし、強風時を見据 えたメッシュシート施工を実施した。メッシュシートの張替をなくすことによりの危険作業を排除した (2-2)。
 古来工法では、平瓦葺き土と葺き土ズレ留め桟木に要所の釘打ちと銅線固定にて屋根瓦を葺いていたが、葺 き土を筋置きとして瓦下地に木桟木組を行い、全瓦を釘と銅線により固定し瓦の落下防止対策とした(2-3)。
 屋根瓦葺き形状を変更して漏水を止める事が出来ない為、設置許可を得て銅板を瓦の下葺き材として使 用した(2-4)。
 屋外暴露試験により効果が確認された無機質系吸水防止剤を吹付する事により、瓦の炭素被膜の劣化と 冬季凍結によるひび割れ防止、漆喰のカビの発生を抑え黒色劣化の遅延を図った(2-5)。
柱の耐震補強をフラットバー枠木くさび止めとすることにより将来的な緩みに対応できるようにした (2-6)。

3.技術の適用範囲

 「素屋根鉄骨の合掌トラス梁ユニット化+吊足場の一体化」は、複雑な地形での素屋根の組立解体に有 効である。ユニット化をすることにより作業の危険排除ができる。また、素屋根鉄骨外装「防炎メッシュ シートの強風時に耐えうる補強」は、風が強い地域あるいはメッシュシートを外すことにより内部に損傷 をきたす工事にて有効である。

4.技術の効果

 素屋根の覆いが外されるに従い保存修理を終えた姫路城の「姿」が現れることは、安全に作業が進捗し ている証である。報道関係者からその解体状況の取材依頼が多数あり、テレビでも放映された。それに伴 い姫路城への関心が高まり、更には文化財保存工事への関心が高まった。

5.技術の社会的意義及び発展性

 文化財保存工事には素屋根が必須である。姫路城は敵から攻めにくい要塞造りであるがため、周りに広 大な敷地がない。このような複雑な構造になっているものについてはこの工法が最適である。また、文化 財保存の観点から適切な検討を加えた耐久性・耐震性向上に関わる技術は、歴史的建造物を永く維持し、 美観を保ち人々に感銘を与える。さらに、伝統技術と現代技術の融合により、伝統技術を未来に継承し、 古来の文化・建物を後世に引き継ぐことが可能となる。

6.技術の適用実績

 国宝姫路城大天守保存修理工事、平成21 年11月〜平成27 年3月1件

写真・図・表