JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第18回国土技術開発賞

入賞

7MW浮体式洋上風車用浮体の実証技術開発(第18回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称7MW浮体式洋上風車用浮体の実証技術開発
副題福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業
応募者名東京大学大学院 教授  石原 孟
三菱重工業株式会社
技術開発者東京大学大学院 教授  石原 孟
三菱重工業(株)  小松 正夫
清水建設(株)  白枝 哲次
共同開発者清水建設(株)、新日鉄住金エンジニアリング(株)

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 国外では着床式洋上風力発電の事業展開が進んでいる。我が国では2012年から新エネルギー・産業技術総合開発機構による着床式洋上風力発電の実証研究が始まっているが、我が国には当該技術に適した海域に限りがあり、より深い海域に適用できる浮体式洋上風力発電の開発ニーズがあった。

 2011年の東日本大震災を契機に、2011年度から資源エネルギー庁による浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業(図−1)が始動した。その一環として、世界最大の7MW浮体式洋上風車用浮体の実証技術開発が実施されるに至った。

2.技術の内容

 7MW浮体式洋上風車は、世界最大級の出力7MW(7,000kW)の風車を半没水式(セミサブ式)大型浮体が支える構造形式(図−2)であり、8本の係留チェーンで懸垂係留(カテナリー係留)するシステムである。本技術は、7MW浮体式洋上風車用浮体の設計・製作・施工に関わる下記の特徴を有する総合的な技術である。

 ・ 大型風車の運転による傾斜や動揺を抑えて風車の運転に最適な姿勢を保持でき、製作コスト低減、工事の施工性向上の側面も満足する浮体を実現した。製作コストの低減においては、波浪の方向別特性を考慮して浮体の各部材に作用する設計波荷重を適切に評価する新しい設計手法を確立し、構造部材の少ない浮体の開発に成功した。
 ・  外洋域に大型浮体式洋上風車を曳航し、沖合に設置する作業計画手法及び沖合における浮体係留作業を短縮する作業要領を構築するとともに、沖合では作業船の動揺により著しく施工性が低減するクレーン作業に頼らない効率的かつ安全な係留方法(図−3、図−4)を確立した。

3.技術の適用範囲

 水深50m以深の海域で適用可能である。

4.技術の効果

 離岸距離20km、水深130mの大水深外洋域に、出力7MWの大型風車を搭載した高さ200mに及ぶ大型浮体構造物を曳航し、設置する建設技術は従来には存在せず、世界で初めて実現した技術である。従来の出力2MW以下の小型浮体式洋上風車用浮体に比べ、係留作業の工程を約40%に短縮して工事稼働率が向上し、危険度の高い洋上クレーン作業が不要となり施工の安全性が向上した。建設コストは約58%に低減し、浮体の使用材料に起因する出力1kW当たりのCO2排出量は同等であった。

5.技術の社会的意義及び発展性

 浮体式洋上風車という新たな産業集積の可能性を社会に示すとともに、新分野の環境技術を世界に提示し、地球環境改善の可能性を高めた。本技術には、同様な技術開発に取り組んでいる諸国への技術輸出や共同事業化展開などが期待され、その設計・施工における要素技術は他の海洋分野、特に海底資源開発において応用し得るものであり、発展が期待される。

6.技術の適用実績

 浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業(2012年4月〜2016年3月)の中で事業の一環として2012年4月〜2015年11月に適用

写真・図・表