受賞技術概要
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第2回建設技術開発賞
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- 第2回建設技術開発賞
優秀賞(建設大臣表彰)
層別地下水処理工法 (第2回建設技術開発賞 優秀賞)
ミッション | 工事中または供用後の施設が発生する騒音、振動、水質汚濁などの周辺環境に与える外部不経済を軽減する |
応募技術名称 | 層別地下水処理工法 |
副題 | 地下工事における合理的な地下水処理工法 |
応募者名 | 清水建設株式会社 |
技術の概要
1.開発の背景と目的
都市部においては地下工事の大深度化が進む一方、地盤沈下対策として施行された揚水規制の影響により地下水位が急激に上昇してきている。このような背景から、地下工事において地下水をいかに処理するかが重要な課題となっている。
“層別地下水処理工法”は、止水壁と特殊な構造の井戸を有機的に組み合わせて、地下工事における地下水揚水量を必要最小限に抑えることを目的としたものである。この結果として、周辺の地盤・地下水環境への影響を低減することが可能となり、さらに地下水処理に要するトータルコストの縮減も可能になる。
2.技術の内容
複数のスクリーン(地下水の流入口)とこれらのスクリーン間に設置するパッカー(写真-1参照)を有した特殊構造の井戸(図-1参照)を要素技術とした以下の3つの技術を利用して、地下工事における地下水処理の調査〜設計〜施工を合理的に進める技術である。
- 別揚水試験(図-2):透水性の高い層(礫層、砂層など)と低い層(粘土層やシルト層など)が互層状となった複層地盤において、各層ごとの透水性を把握するための試験。試験結果より、止水壁の長さと必要揚水量、周辺水頭低下量の関係が評価でき、最適な地下水処理計画が可能になる。
- 層別揚水工法(図-3):必要な深さの地下水を必要な期間、必要な量だけ揚水する工法。施工期間中の累積揚水量を大幅に減らすことが可能となる。
- 鉛直リチャージ工法(図-4):揚水した地下水をより深い帯水層に還元する工法。敷地の狭い都市部の現場においては特に有効である。
3.技術の効果
- 揚水量および外部排水量の低減により、周辺地盤・地下水環境への影響が大幅に減る。現場規模や地盤条件にもよるが、従来工法に比べて必要揚水量を4割程度削減できる。
- 下水道使用料金、電力料金などランニングコストも減らせる。
- 工場での鉄骨部材製作工程が簡素化され、品質確保・製作期間短縮につながる(図−5)。
- 水位、流量の自動計測システムの採用により確実な水位低下が実現でき、工事の安全性が確保できる。
4.技術の適用範囲等
- 地下水位以深のすべての地下工事に適用可能。十数現場で適用済み。
- コスト的なメリットは大規模現場ほど大きい。
- 鉛直リチャージ工法の採用にあたっては水質面での適用性を検討する必要あり。
- 適用実績 山王パークタワー建設工事 他11件