JICE 一般財団法人国土技術研究センター

受賞技術概要

建設分野の新技術への挑戦

    • 第17回国土技術開発賞

入賞

高効率化・低コスト化・高精度化を実現する流量算出法(第17回国土技術開発賞 入賞)

応募技術名称高効率化・低コスト化・高精度化を実現する流量算出法
副題河川流量算出法(DIEX法)
応募者名東京理科大学教授 二瓶泰雄
パシフィックコンサルタンツ(株)
技術開発者東京理科大学教授 二瓶泰雄
パシフィックコンサルタンツ(株) 柏田 仁

技術の概要

1.技術開発の背景及び契機

 安全・安心な社会で、かつ、快適な美しい国土を創成する上では、防災・環境保全を重視した総合的な流域圏管理が必要となる。流域〜河川〜湖沼・海域を結ぶ重要な媒質である「水」を管理するには、雨量や各水域の水位、河川流量のモニタリングは欠かせない。雨量に関しては、X バンドMP レーダーなど新技術が開発され、水位はセンサーの小型・低廉化が進められている。一方、横断面全体の流速データが必要となる「河川流量」に関しては、洪水時にて棒状の浮きを使って目視で流速を測る「浮子測法」が戦後直後に標準化され、現在でも採用されている。浮子測法には、流速計測精度や流量算定上の課題が数多くあるため、新しい流速計測技術が多く提案されている。しかしながら、これらの流速計の多くは、横断面内の限られた範囲の流速データしか計測できないため、断面全体の流速推定用の「流速内外挿技術(流量算出法)」の検討が重要である。このように流量観測には「流速計測技術」と「流量算出技術」の両輪が必要になるにも関わらず、これまでは「流速計測技術」の開発のみに重点が置かれ、「流量算出技術」には各区分の断面積と水深平
均流速(=計測流速×更正係数)の積を単に足し合わせるという区分求積法(図−1)が長年使われている。

2.技術の内容

 応募者らは河川流量算出技術として近年の発展が著しい数値解析法に着目し、流体力学の運動方程式を満足した形で「点」・「線」流速データを「面」データに内外挿できる河川流量算出法(力学的内外挿法、Dynamic Interpolation and Extrapolation method、DIEX 法)の開発・実用化に成功した。DIEX 法の特徴として、@様々な流速計データに適用可能(図−2)、A従来法と比べ少ない観測データでも高精度に流量算定が可能(図−3、4)、B市販のPC で流量算出時間が30 秒以内と短く、低計算負荷でリアルタイム流量モニタリングの実現可能、C河川流計算ではほぼ例がない独自のデータ同化技術により流速データを数値計算に合理的に取り込める、などが挙げられる。本技術については、2007 年から基礎モデル(H-ADCP用)の開発を開始し、2011 年には汎用モデル(全流速計用)を開発し、現在まで多くの適用実績を有する。最近、一般ユーザーでも使用可能なソフトウェア「DIEX-Flow」の販売を開始した(H27 年4月)。

3.技術の効果

・ 流速観測データが少ないと従来法では流量算定精度は著しく低下するが、DIEX法では高い精度を維持し流量算定できる。そのため、DIEX法導入により、多くの労力を要する流量観測の大幅な低コスト化や効率化が可能となる。
・ 河川流量を短時間で算出でき、リアルタイムで流量データを得ることが可能であるため、現場観測にも適用できる。
・ 現場に応じて流速計は使い分けられるが、DIEX法はあらゆる流速計に適用可能である。そのため、流速計測の新技術(画像解析法やH-ADCP等)とDIEX法を融合させた初の本格的な河川流量リアルタイムモニタリングシステムが具現化でき、流量観測で最も大事なH.W.L.を越えてデータ欠測が多い大洪水時も含めて流量データを確実に取得できる。

4.技術の適用範囲

DIEX 法は、流量観測として、全ての河川の低水時から洪水時まで適用可能であり、かつ、あらゆる流速計もしく流速計測システム(浮子・H-ADCP・ADCP・電波流速計・電磁流速計・STIV・PTV など)にも適用可能である。

5.技術の適用実績

 帝石橋流量観測精度向上業務、平成26 年5月〜平成27 年2月   他19 件

写真・図・表